70歳の女性。しばしば転ぶようになったことを主訴に来院した。1年前から、椅子から立ち上がったり車の後部座席から降りたりする際に尻もちをつくようになり、次第にその頻度が増加した。1か月前からしばしばむせるようになった。意識は清明。眼球運動は上下方向が制限されており、特に下方視で制限が著しい。入院後の患者の写真を示す。
この疾患で認められるのはどれか。
体幹機能障害と上下方向の眼球運動障害、、、わかる人にはすぐにわかる進行性核上性麻痺。診断さえ付けば、正解は明らかである(ちなみにdが正解)。また写真の意図も明らかで、おそらくは前傾姿勢ではない、頸部が後屈している、、、ところを見せたいのだろうが、哀しいかな目隠しマークのおかげで頸部後屈は今ひとつはっきりしない。この問題、進行性核上性麻痺を思いつくかどうかが全てである。
私は、たまたま先日、認知症の鑑別診断でこの疾病が上がっていたのでビビッと来たが、この疾病を自分で診断できるか?と言われたら、結構厳しい気がする。しかし、国試問題に正解できるかと、自分でその疾患の診断ができるかとは、実はあまり関係ない。言うまでもなく、実診療で難しいのは必要な所見を揃えることであり、国試なら、必要な所見は全て問題文中にあるからね。