第106回B問題52-54

問題

次の文を読み、52〜54 の問いに答えよ。

72歳の女性。発熱と皮疹とを主訴に娘に伴われて来院した。

現病歴:1か月前から上半身の皮疹と発熱とがみられるようになった。発熱とともに皮疹が出現し、解熱とともに皮疹が消失するということが連日繰り返された。2週前から起床時に膝の痛みがあった。一昨日から発熱のピークが39℃を超えるようになったため受診した。

既往歴:18歳時に虫垂炎で手術。45歳時に子宮筋腫を指摘された。

生活歴:夫と娘との3人暮らし。

家族歴:母親が心筋梗塞のため75歳で死亡。

現症:意識は清明。身長155cm、体重58kg。体温39.1℃。脈拍60/分、整。血圧162/70mmHg。呼吸数18/分。SpO2 96%(room air)。皮膚は湿潤である。咽頭に発赤を認めない。眼瞼結膜は貧血様である。眼球結膜に黄染を認めない。前頸部から前胸部にかけて淡い紅斑を認める。右後頸部で無痛性のリンパ節腫脹を認める。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、右肋骨弓下に肝を3cm触知する。両側の膝関節に腫脹を認めない。 検査所見:赤沈120mm/1時間。血液所見:赤血球368万、Hb 10.1g/dl、Ht 38%、白血球14,260、血小板41万。血液生化学所見:総蛋白6.5g/dl、アルブミン2.9g/dl、尿素窒素7.0mg/dl、クレアチニン0.6mg/dl、尿酸7.2mg/dl、総コレステロール226mg/dl、トリグリセリド130mg/dl、総ビリルビン0.9mg/dl、AST 120 IU/l、ALT 74 IU/l、LD 776 IU/l (基準176〜353)、ALP 630 IU/l (基準115〜359)、γ-GTP 108 IU/l (基準8〜50)、CK 21 IU/l (基準30〜140)、Na 137mEq/l、K 4.4mEq/l、Cl 97mEq/l。フェリチン50,800ng/ml (基準20〜120)。免疫学所見:CRP 12mg/dl。HTLV-1抗体陰性、HIV抗体陰性、HA抗体陰性、HBs抗原・抗体陰性、HCV抗体陰性、EBV抗体陰性。リウマトイド因子<RF>陰性、抗核抗体20倍(基準20以下)、可溶性IL-2受容体基準範囲内。胸部エックス線写真で心胸郭比50%。骨髄血塗沫染色標本で異常所見を認めない。胸腹部造影CTで頸部、鎖骨上、縦隔、傍大動脈領域および骨盤腔内に多数のリンパ節腫脹を認める。頸部リンパ節生検で悪性所見を認めない。

52 この病態に特徴的な症候はどれか。

53 この患者の検査結果として予想されるのはどれか。

54 現時点の対応として最も適切なのはどれか。


解説と解答

問題文が長い。長いが、最初の3行で診断の見当はつく。あとは検証作業だが、フェリチン50800!でほぼ決まり。診断は成人スティル病。あとはこの病気の知識の問題で、正解は 52 e、53 a、54 dとなる。

しかし、この出題の構造はなかなか興味深い。仮想病名がいくつかあって、それに見合うように解答が準備されている。だから、問題文が長いからと52辺りの選択肢を先読みし、最初に「サルコイドーシスじゃね?」「側頭動脈炎じゃね?」等々とやっちゃうとさあ大変。「本文が長い時はとりあえず設問をチェック」という、試験テクニックの逆手をとった出題で、なかなかどうしてお見事である。

しかし、そうは言っても成人スティル病以外を選べば綻びるようにもできている。サルコイドーシスだと、52 a、53 b はいいとして、54で詰まる。もっとも、サルコイドーシスにはステロイドが効くのでdに突っ走れないこともない(3問中1問正解)。側頭動脈炎だと、52 d、54 d としても53で詰まる。もっとも、側頭動脈炎でも白血球は増えるのでaとできないこともない(3問中2問正解)。

いずれにしても、長い問題文に負けずに立ち向かえば、相当多くの疾患が除外されていることがわかる。見る人が見ると、悪性リンパ腫や伝染性単核球症あたりが除外されている点を評価されることだろう。