第106回F問題26 27

問題

次の文を読み、26、27の問いに答えよ。

78歳の男性。意識障害のため搬入された。

現病歴:7日前から上腹部の鈍痛と38.3℃の発熱とがみられていた。6日前にかかりつけの診療所を受診し、解熱薬を処方された。5日前、症状が軽快したため、薬の内服を中止した。2日前から再び右上腹部痛を自覚し、37.6℃の発熱と全身倦怠感とがみられた。昨日から食欲低下と悪寒とを伴うようになったため、中断していた解熱薬の内服を再開した。昨日の時点で、尿の色が濃いことに気付いていた。本日、起床後に悪寒と悪心とが出現し、意識がもうろうとした状態となった。家族の問いかけに対してつじつまの合わない返答がみられたため、家族が救急車を要請した。

既往歴:7年前から高血圧症に対しアンジオテンシン変換酵素阻害薬を内服中。3年前に腹部超音波検査で3、4個の胆石を指摘された。

生活歴:喫煙は15本/日を58年間。飲酒は日本酒2合/日を58年間。

家族歴:父親が脳出血で死亡。

現症:意識レベルはJCS U-10。身長164cm、体重59kg。体温39.0℃。心拍数112/分、整。血圧82/58mmHg。呼吸数24/分。SpO2 97%(3L/分酸素投与下)。眼球結膜に黄染を認める。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部はやや膨隆し、軟で、肝・脾を触知しない。右季肋部を中心に圧痛を認める。

26 まず行うべき治療として適切なのはどれか。

27 この患者の循環状態の重症度を評価するための検査で適切なのはどれか。


解説と解答

いまいちピンとこなかった、したがって正解できなかった問題。

まず、胆道系炎症の経過中に意識障害をきたしたケースであること、病態に脱水の関与がありそうなこと、くらいまではいいとして、それ以外の情報が少ない。血液生化学検査くらいは瞬時にわかっちゃうんじゃないかと思われる医師国家試験では珍しい。

情報の少なさ故に、26はあっさり片がつく。頻脈にアトロピン静注はない、新鮮凍結血漿の輸血はすぐには行えない、アルブミン製剤の点滴も血清アルブミン値なしでは(建前上?)行えない、分子鎖アミノ酸製剤も血清アンモニア値なしでまず行うとは思えない。手っ取り早く脱水症状を改善するには、c 生理食塩液の急速静注がベスト。ただ、近医である私の感覚では、急速静注ではなく点滴静注となるのだが、ここら辺からして既に微妙に正解からずれているらしい。

問題は27。依然情報が少ないので、27にリストアップされている検査よりも私としては優先したい検査がいくつかある。まずは、何と言っても、血液ガス分析と血算および血液生化学検査であろう。この中には aの血糖測定も当然含まれる。意識障害があるから、多分アンモニアもチェックする。それから、胸部レントゲンと腹部エコーなど。無論、これは診断及び病状の把握のために行う検査であって、循環状態の重症度を評価するために検査とは思えない。さて、何と解答しようか。

これ、正解はc。正直いって、一近医である私には動脈血乳酸値を循環状態の重症度を評価する指標にするという発想はない。そもそも、私の施設では乳酸値の測定は外注検査扱いとなる。でも、世の多くの医療機関も事情は似たようなもんじゃないかなぁ?

ちなみに、26の選択肢に乳酸リンゲルがないのがおそらく出題側からのヒントで、病態として乳酸アシドーシスを考えよというメッセージ。これに気づけば27でcを選べるかもしれない。逆に、26の選択肢に乳酸リンゲルがあったとしたらもうお手上げ。いや、既にお手上げだけど、まあその何と言うか、ワタクシ的にはこれはできなくてもいいかな。