第106回I問題57

問題

30歳の男性。2週前から続く発熱と両眼の霧視とを主訴に来院した。意識は清明。身長170cm、体重54kg。体温37.2℃。脈拍84/分、整。血圧144/72mmHg。呼吸数16/分。咽頭に異常を認めない。両側の頸部と左腋窩とに無痛性のリンパ節腫脹を認める。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。細隙灯顕微鏡検査で両眼に虹彩炎を認める。眼底検査で両眼に真珠の首飾り状の硝子体混濁を認める。胸部エックス線写真を示す。

第106回I問題別冊No.13

診断に有用な血液検査項目はどれか。


解説と解答

言わずと知れたサルコイドーシス。眼のあれこれと胸部レントゲンが一緒に出てくる病気といえば、まずはこれ。医師国家試験は、本当にこの病気が好きですねぇ。

多くの受験生諸氏にとっても多分お馴染みの疾病で、正解はd。

ちなみに、この問題に限っては、ACE知らなくても消去法で正解できる。ALT、ALPはここまでの他の問題文中にも散々出てくる肝機能検査。これだけ頻用される一般検査が、特定の疾病の診断に有用なはずがない。AFPもド定番の腫瘍マーカー。肝臓の画像が一個も出てこない男性で、AFPを使って診断する腫瘍はちょっと思い当たらない。ACTHも高校の生物で出てくるレベルのホルモン名。血糖値やら血清Na値やらが出てこない疾病の診断に役に立つはずがない。

というわけで、正解はd、、、なのですが、少し穿った解釈としてこんなのはいかが?曰く「これだけ情報がそろっていれば、ACEの値に関係なくサルコイドーシスと診断できるはず。ならば、ACEだって診断に有用とはいえないのではないか?」

残念ながら、さにあらず。このケースはいかにもサルコイドーシスなのだが、それは国試の世界での話。娑婆の診断基準に照らせば、ACE高値でギリギリ診断できるレベルである。つまり、BHLで呼吸器病変と全身反応検査1つ、眼病変が一応あってこれで臓器病変2つ、これにACE高値で全身反応検査2つ目クリアとなり、ようやく臓器2つ以上・検査2つ以上の臨床診断群の基準を満たす。これは非常によくできた出題なのでした。