高血圧について

 高血圧とは、文字通り「血圧が高い」ということです。大雑把に言って、130/85未満であれば正常、140/90以上であれば高血圧です。

 高血圧といわれてまずやるべきことは、生活習慣の見直しです。もちろん、血圧値によっては直ちに医者にかかるべきです。しかし、そういう方でも、あるいはそういう方であればこそ、生活習慣の見直しが治療上重要なのはいうまでもありません。

 高血圧の方が見直すべき生活習慣としては、大体次の7つが上げられます。

  1. 食塩制限:減塩です。一日の食塩摂取を6~8gにするの目標です。ちなみに、人間の体は食品中の食塩で十分に維持できる(一日1g程度)そうですから、さらに減らしても理屈の上では問題ありません。なお、塩分をナトリウム量で表示している食品もあるので注意が必要です。食塩に換算するには2.5倍しなければなりません。
  2. 体重コントロール:肥満を伴う高血圧の方の場合、減量は治療の基本です。問題は減量の方法です。多くの方が体重が減らない理由として運動不足を挙げますが、そもそも、体重を減らすほどの運動はまず無理です。体重を減らすには、食事療法(ないし食事制限)を中心に据えねばなりません。
  3. 運動療法:体重を減らす効果は期待できなくとも、運動そのものは高血圧治療に有用です。目安としては、軽く息が上がるくらいの運動を一日30分以上かつ一週5日以上といったところでしょうか?いずれにしても、すぐには効果は出ないので根気よく続けることが大切です。ただ、運動は、特に運動が好きな人の場合、次第にエスカレートしがちなので注意が必要です。
  4. アルコールの制限:適度のアルコールは高血圧治療にむしろ有効、とか何とか言われて久しいですが、もちろん飲みすぎはダメです。「適度」の目安はエタノール換算で男性20-30g、女性10-20g。これ以上飲むと、飲んだ分だけ血圧が上がります。ちなみに、エタノール換算30gとは、大雑把にってウィスキー60ml、ワイン240ml、ビール720ml、日本酒180ml程度です。焼酎ならば大丈夫というのは手前勝手な思い込みですので念のため。
  5. カリウム、マグネシウムの摂取:カリウムやマグネシウムを補給することで、血圧が下がるそうです。実際の食事療法としては、後述のDASHということになりそうです。
  6. DASH:Dietary Approaches to Stop Hypertensionの略で、もともとアメリカ人の高血圧治療のために考案された食事法です。日本人にそのまま適応するにはいささか無理がありますが、エッセンスは日々の食事療法に生かせるはずです。ごく大雑把に言うと、以下に示す増やす食品と減らす食品をもとに食事を変えていくというものです。

    増やす食品

    果物、野菜、木の実、魚、鶏肉(皮を除く、揚げずにゆでるかあぶり焼きにする)、全粒の小麦、低脂肪の牛乳・ヨーグルト・チーズ

    減らす食品

    牛肉、豚肉、甘いお菓子(脂肪分にも注意)、砂糖を含むソフト・ドリンク

    並行して減塩をすれば、さらに効果が期待できます。
  7. 禁煙:実は、喫煙は血圧値そのものにはあまり関係ないようです。ですが、そもそもの高血圧治療の目的が心臓病や脳卒中の予防にある以上、禁煙はきわめて重要です。ちなみに、禁煙というと「今は禁止されているけど、いつかきっと……」というニュアンスがあるというので、最近一部では代わりに「卒煙」という言葉を使うそうです。

 最後に一言。ここに挙げた事柄は、必ずしもすべての方に通用する方便ではありません(もっとも、禁煙はみなさんの共通課題です)。例えば、病状によっては運動や食事に特別な制限が加わる場合もあります。不明な点は当生協の医療スタッフにお気軽にご相談ください。


「くらしと医療」2004年8月号


Indexにもどる
トップページにもどる