中山道はこう歩け

適度な運動を定期的につづける … ご存知、8つの生活習慣のNo.5です。運動の効果は強さ×時間で決まりますから、適度な運動をするには、運動の「強さ」と「時間」が適度である必要があります。生協の健康チャレンジ「渋川から歩く中山道~」にも、ここら辺を意識して取り組みましょう。

運動の強さはさまざまな尺度で表現されますが、ウォーキングのような有酸素運動の場合、一番いいのは酸素摂取量を用いた表現です。運動すれば酸素を使う、強い運動ならば余計に酸素を使う、、理屈は簡単です。そして、健康成人には、最大酸素摂取量の40~60%の運動が推奨されています。以前本欄で紹介されていたメッツ(METs)も酸素摂取量に基づいた表現のひとつです。

問題は、酸素摂取量が簡単には測れないことです。ある運動、例えばウォーキングで一般的に酸素摂取量がどのくらいになるか(これがメッツ)は良くわかっています(ちなみに分速100メートルのウォーキングは4METs)。しかし、これがあなた自身の最大酸素摂取量となると、測ってみないとわかりません。特別な機械を使えば測れなくはないのですが、少なくとも北毛保健生協の設備では無理です。まして、今日のウォーキングでの実際の酸素摂取量となるともうお手上げで、測定そのものができません。

しかし、ご安心あれ。運動強度がある程度以上(最大酸素摂取量の40%以上)ならば、酸素摂取量と心拍数は比例します。それゆえ、運動強度と心拍数の関係は思いのほか単純です。このすばらしい計算式には、Karvonenの式という名前がついています。

 運動時の心拍数=(最大心拍数-安静時心拍数)×運動強度+安静時心拍数

心拍数は胸に手を当てればわかります(脈拍数でも可。これは手首でわかります)。残るは最大心拍数です。本来は最大運動負荷試験を行って決めるべき代物で、こちらも特別な機械が必要になります。しかし、再びご安心あれ。健康成人の最大心拍数は、経験的に 220-年齢 です。これまた、実にシンプル!

ようやく、中山道を攻める方便がそろいました。早速やってみましょう。

まずは、安静時の心拍数を計ってください。そして 220-年齢 で最大心拍数を求めてください。さあ、Karvonen。運動強度を40%とすれば計算式はこうです (220-年齢-安静時心拍数)×0.4+安静時心拍数。これが目標心拍数、つまり心拍数がこの数字になるように、歩く速さを加減するわけです。準備完了、いざ中山道ウォーキングへ!最低10分、できれば20~30分歩いてください(これが適度な時間の目安です)。一通り歩いたら、すぐに心拍数を計ってください。もちろん目標心拍数と比べるためです。

注意を少々。

以上述べてきたことは、基本的に健康成人が対象です。高血圧で治療中の方(薬の種類によっては心拍数が低めになります)、心臓病や呼吸器病の方(運動そのものが困難です)など、疾病のある方がそのままやるのは危険です。必ず医師にご相談ください。

心拍数の計測とそれに基づく運動強度の補正は、運動中に(つまり歩きながら)やるのが理想です。しかし、歩きながら脈を計るのは結構難しいです。スポーツ用と称する時計の中には胸にバンドを巻いて心拍数が計れるタイプのものもあるそうなので、本格的にやるなら利用するのも手かもしれません。

運動にはいろいろな種類があります。運動の強さをみるのに心拍数が有効なのは、ウォーキングのような大筋群を使う有酸素運動です。ストレッチや筋トレにはまた別の評価法が必要ですので念のため。


「くらしと医療」2009年5月号


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