漢字の起源

自説:五徳論では,
土性の夏王朝は,神世の古代から人間社会への化の時代とし,
木性の殷王朝は,甲骨文字という伝達文化の芽を産んだ生の時代としました。
金性である周王朝の頃,時代の収斂作用で,似た様な形態の文字が整理統合されて現在のものになって行き,
火性の漢王朝の時代に紙の発明もあって文字としての働きが開花して,それまでの思想や記録が書物となって,現在に受け継がれていると考えました。
唐代以降の漢詩の文化は,水性作用である文字が収蔵した本質の部分と捉えています。
そのようなことから,東洋医学用語の甲骨文字を知ることで,言葉の深義が見えてくると思いました。

漢字の起源-殷の時代

殷より前の龍山文化の頃,中国各地に都市国家が成立し始めました。黄河下流域での農耕定住民らが氏族社会を形成し、城壁に囲まれた邑(ユウ:くにの意。殷代には、王の直轄のみやこの地。周代には、天子・諸侯および豪族のおさめる領地のこと。「大邑商(商、つまり殷代の都)」「采邑:サイユウ領地の意」/むら。国の中心のみやこを都というのに対して、地方の町やむらのこと。「都邑」)という都市国家を多数作っていました。後にこの邑が連合してできあがった国家が殷と言うわけです。
 殷は現在確認されている中国最古の王朝で、邑の連合の盟主として黄河地域を統一した国家とされ,BC2000の半ば頃,都を商(現在の殷墟)においたといわれています。ただ伝説上では夏王朝が最初ということですが,まだ史実として確認されていません。
 殷虚は1899年に河南省安陽県の小屯で発見され、宮殿遺跡や地下陵墓などが発掘されました。ここには青銅製の武器や祭器、白陶なども一緒に埋まっており、考古学上極めて貴重な資料でした。また、亀甲や獣骨に刻まれた甲骨文字や,青銅器に刻まれた金文は,漢字の起源とされています。

甲骨文字とは

 甲骨文字を知るためには殷の時代の様子を知る必要があります。
 殷の頃はに定住農耕が定着し、近隣の地域や遊牧民との交易が行われていたと,考えられています。青銅器を使用し、白陶と呼ばれる新しい型の陶器も出土しています。また定住化したことで、その集落を統率する仕組みが必要となりました。つまり政治ですがその内容は祭政一致の神権政治が行われ、王は軍事経済の統率者であり、最高の祭司者でした。国事については神意を亀トで占って決めていたようです。氏族制度は王侯貴族の統率から徐々に先祖や自然心の崇拝に変わり、それに伴って王位継承も兄弟相続から親子相続へと変わっていきました。初期の世襲制度です。

この祭政一致の神権政治と亀トを使った占いから,甲骨文字が産まれました。
つまり漢字は民間の生活からではなく,亀トから始まり神意の伝達を意味しました。
ちなみに,

T(ボク)Uとは,亀の甲羅や牛の肩甲骨を火であぶり,または石で打ってできた亀裂を現す形で,その時の音がそのまま読み方としてTボクUとなりました。その亀裂を見て占ったそうです。

 

漢字の成り立ち

成り立ちの仕組み白川 静著「字通」「字統」「字訓」平凡社より

T口(くち)Uと言う字の原形はでした。これは神に対って,祝詞をあげるときの供えの器を,象徴したものです。
T口Uと言う字を持った漢字の多くは,T口Uを顔の口と解釈したのでは意味が通らず,神事に関すると考えて,始めてその漢字の持つ意味が,浮かび上がります。
例えばT告Uと言う字は,牛の反芻の様が何かを告げているようだから,というのが定説でした。しかし漢字の起源は,民間の生活からではないため,そのような事が成り立ちではありません。T告Uと言う字の上の部分は,榊の枝葉を現します。下のT口Uは祝詞のときの供えの器を象徴したものですから,
となり器に榊の枝葉をかかげて神への報告や,おつげを待つときのスタイルを,現しています。漢字の起源は神事と政治でした。

この説から東洋医学用語を,考えていきたいと思います。

 

例えば鍼と灸は.....

T鍼UはT金UとT戉(えつ)UとT口(祝詞のときの供えの器を象徴)Uの会意です。戉は鉞(まさかり)の初文で聖器。鍼は祝詞の事(じ)を守るという意味があります。金は金属の総称ですが,かつては銅でした。
T鍼Uは
が象形です。

ちなみに鉞(まさかり)です。

T灸Uはが象形で,T久Uは人を後から支えている形ですが,この場合は声符です。ただ屍体を後から木で支える形でもあり,その木をT灸Uといったようです。
「後よりこれを灸す。人の兩脛(すね)の後にささえあるを象(かたど)る」として,生きている様に見せたのだと思います。
刑罰とやはり,医療に用いました。『史記』創公伝に灸法があって,脈絡の研究などもかなり進んでいた様子が見えます。
『荘子』の盗跖に「いわゆる病気無くして自ら灸するなり」とあります。

各項目をご覧ください。

陰と陽

天と地

五行

気と血

正と邪

虚と実

上と下

右と左

前と後

内と外

表と裏

感と傷

寒と熱

衛と栄

形と質

経と絡

津と液

蔵(臓)と府(腑)

補と瀉

母と子