伊地知先生の治療について

1.本治法

1,選経
尺膚診が主:五主で一番良いところの経を用いる。
筋:手関節前面の腱上の皮膚がよく動けばよい→肝経
肌肉:前腕前面の筋肉上の皮膚がよく動けばよい→脾経
皮毛:主に大腸経のラインに凹凸がなく、滑らかなのがよい→肺経
筋、肌肉、皮毛のいずれも悪い→腎経
※脈診も証を決定する目安になる。
脈診を六部定位的に行った場合、証となる陰経を剋する経の脈が強い(病脈を打つ)。
例)肝の証のときには、右の寸口(肺)が強い。
2.選穴
脈や尺膚を診て確認しながら決定
適応側は、
  1. 脈状の穏やかな方、
  2. 尺膚のきれいな方、
  3. 足背動脈が大きく打つ方のいずれかで考える。

2.陽経の使い方

基本的に本治法のあとに用いる。慢性症状のときや、証はたったが、選穴穴の段階で脈や尺膚がなかなか調わないときには始めに陽経を用いる
1,選経
証となる陰経を剋する関係にある陽経
例)肝の証の場合は大腸経。
局所の痛み、圧痛に対して、その所属する経と子午の関係にある陽経を用いる。
例)脾経ラインを押さえて圧痛があれば、その反対側の三焦経。
病脈を打っている陰経と子午の関係にある陽経を用いる。
2,選穴
本治穴と母子の関係にある穴を用いる。
例)本治が兪土穴なら、陽経では経火穴
本治穴と同じ五行の穴を用いる。
例)本治が兪土穴なら、陽経では合土穴。
下合穴を用いる場合もある。

3.標治法

本治で補うために督脈上の反応点に刺鍼
肝の証→F門、天柱
脾の証→脊中
肺の証→大椎
腎の証→陽関

上下のバランスをとる。
例)肩背部の硬結に対して陰門、委陽、委中、飛陽など

志室の圧痛、硬結に対して、申脈、崑崙、委中、逆に天柱など。
頸に熱がある場合、腰兪、陽関、八B穴、委中など
腰部の硬結に対して、膏肓、心兪、膈兪、天柱など
背部の硬結に対して、申脈、崑崙

左右のバランスをとる。
例)膈兪や膏肓付近の高さが違えば、低い方の同穴に刺鍼

肩上部の硬結に対して、反対側の天柱

腕をねじって痛みがあれば、同側の三焦経に刺鍼

4.仕上げ

  1. 標治が終わった時点で、脈や尺膚が調っていれば、仕上げはしない。
  2. 微調整で、本治穴や任脈上の募穴に刺鍼。