「外因・内因と外感・内傷の診察法」

04年4月 澤田和一

用語の説明
外因 ―― 気候の変化によって起こる邪気。六淫をさす。
内因 ―― 生活習慣や飲食の乱れ、ストレスによって生ずる邪気。ここでは、五邪の名称で表す。
外感 ―― 生体の「気」が病んでいることをいう。
内傷 ―― 生体の「血」が病んでいることをいう。
五邪 ―― 風・暑・飲食労倦・寒・湿の邪をいい、各々、血・神・栄・気・精の生成や流れの異常を表す。
六淫邪気症状 ―― 風は頭痛、熱は発熱、湿は体重節痛、燥は咳嗽、寒は悪寒。
衛気・栄気 ―― 気の防衛作用において、衛気は外側の皮膚・肌肉の部の反応をいい、陽である 栄気は内側の筋・骨の反応をいい、陰である。
 ―― 尺膚の最外層部をさす。の内側に五主の所見がある。

病の発生を4種類のルートで考える。各々、外因外感・外因内傷・内因外感・内因内傷とする。

1)外因外感
キーワード ―― 衛
病理 ―― 外界の変化は寒邪・熱邪として、生体を侵す。衛気と栄気が防衛反応を現す。寒邪には熱を出し、熱邪には冷えて堅くなる。
ポイント ―― 痛みや凝りなど明瞭な自覚症状を表す。尺膚診では、五主の変化が著明である。
治療方針 ―― 邪気を瀉し、寒熱や五主を均等にする。

2)外因内傷
キーワード ―― 旺
病理 ―― 1.外界の変化が六淫として生体を侵す。
 2.四季の変化に生体が対応できず、気血の過不足を起こす。
ポイント ―― 1は六淫邪気症状の急性症状を現す。1はに反応が現れ、2は慢性症状を起こしやすく、五主全体の変化を診る、九星の体質を考慮する。
治療方針 ―― 1は六淫を写し、2は気血の虚実を整え、季節に合った脉状や尺膚にする。

3)内因外感
キーワード ―― 栄
病理 ―― 過労・睡眠不足・飲食の不摂生などは臓腑の機能を低下させ、生体内の気・血・津液の流れに虚実・大小の異常を生じる。
ポイント ―― 腹診に変化が現れる。切経において、上下・左右・内外に差が診られる。背部膀胱経に反応を現す。
治療方針 ――気血の虚実を補寫するとは上下・左右・内外の差を解消することであり、大小をととのえるとは、気血の絶対量を調節する事である。

4)内因内傷
キーワード ―― 七神
病理 ―― ストレスにより精神状態が不安定になる。七神は病んでいる臓の本質をいい七情は精神活動の状態を表す。
ポイント ―― 表情や言動によって理解する。脈では、浮沈が極端に偏る。
治療方針 ―― 極補。七情のベクトルを逆に向ける。

それぞれのルートによって、所見に対する診察法が異なり、弁証の仕方も異なる。

1)外因外感
(1) 主な診察法 ―― 尺膚診により、五主のいずれに異常があるかを診る。
皮毛・肌肉は表の衛気、筋・骨は裏の栄気に病変があることを表す。尺膚全体が寒・熱いずれであるかを決める。寒邪は脈が細く、熱邪は太い。
(2) 弁証方法―― 表熱(肝)表寒(腎)裏熱(脾)裏寒(肺)

2)外因内傷
(1) 主な診察法 ―― 脈状診により四季の旺脈を診る。
1.はが、どの季節の状態にあるかを分類し、六淫の邪気にあてはめる。
2.は五主全体を虚実・硬軟・寒熱で見分ける。
(2) 弁証方法 ――1.の所見は風は柔軟(肺)熱は発汗(腎)燥は枯燥(肝)寒は潤沢(脾)湿は浮腫(肝または腎) 脈状はそれぞれ弦・洪・渋・滑・緩となる。
2. 硬は気実(肺)充実は血実(肝)興奮は気血実(腎)軟は気血虚(脾)脈状はそれぞれ弦・渋・洪・軟となる。

3)内因外感
(1) 主な診察法 ―― 尺膚の涸燥と潤沢・寒熱・大小により五邪を分類する。
左右脈の比較。腹診の上中下の寒熱虚実の比較。切経による頭部・体幹・上肢・下肢の比較。
(2) 弁証方法 ―― 風邪は尺膚潤沢・左脉大・上腹部の熱・頭部の熱感を特徴とする。実(肺)虚(脾)に分ける。寒邪は尺膚涸燥・右脈大・下腹部の冷え・足の冷えを特徴とする。実(肝)虚(腎)に分ける。飲食の邪気は全身が張っ
て浮腫む尺膚熱感・腹部胃経の腫れ・下腿胃経の腫れ・舌黄は熱(肝)尺膚冷えて重い・腹部膨満・四肢重く・舌白は寒(腎)。労倦の邪気は尺膚や切経で内実外虚を現す 熱は肉体疲労(肝または脾)枯燥は精神疲労(肺または腎)。湿邪は尺膚や切経において内虚外実を現す 寒(腎)熱(脾)に分ける。

4)内因内傷
(1) 主な診察法 ―― 望診で表情や目の動きを診て問診で話の脈絡を追う。脈の浮沈で七情を分類する。六部定位脈診も加える。背部兪穴に硬結がある。
(2) 弁証方法 ―― 浮脈は怒・驚、沈脈は悲・憂を表す。六部定位脉診に随って証を決める。

得られた証と症状が一致すれば予後は良いが、一致しなければ治療を進めながら、証または症状の変化を待つ。