意釈八十一難経(小曽戸 丈夫, 浜田 善利 単行本 (1974/04) 築地書館)
五行の木火土金水というものは、互いに張り合いながら平行を保っているのです。
東方は木で西方は金です。
木が実して横暴になろうとすると、金が頭を抑えて平行を保とうとします。
火が実して横暴になろうとすると、水が頭を抑えて平行を保とうとします。
土が実して横暴になろうとすると、木が頭を抑えて平行を保とうとします。
金が実して横暴になろうとすると、火が頭を抑えて平行を保とうとします。
水が実して横暴になろうとすると、土が頭を抑えて平行を保とうとします。
東実というのは肝実のことです。西虚は肺虚のことです。つまり東実西虚は微邪による病です。これでこの微邪による病の治法は南方を瀉し北方を補すという特種な刺法を用いるのです。
南方は火で、火は木の子に当たります。
北方は水で、水は木の母に当たります。
その火を瀉しますと火の勢いが弱まります。火の勢いが弱まると金の勢いが強くなります。金の勢いが強くなると当然木の勢いが弱まってきます。今まで子である火の勢いの強いのが母である木の勢いの強さを支えていたのですから、子よく母を実しむというのです。また水を補しますと水の勢いが強くなります。水の勢いが強くなると火の勢いが弱くなってきます。火の勢いが弱まると金の勢いが強くなってきます。金の勢いが強くなると木の勢いが弱まってきます。そこで母である水を補して強くしてやると子に当たる木の勢いは弱まってくるという理になります。だから、母よく子を虚せしむというのです。
このようにして瀉火補水の刺法を用いて金を充実させて木との平行を保たせようというのがこの治法の眼目なのです。
これでまず虚を実してやることのできない内はその他のことなど考えている余地はない。と昔の医書にあるのもここでいう金の虚を補すべき方法をまず考えるということでしょう。
経絡治療要綱(福島弘道)
○七五難は、変症であり急性実症である。
○肺虚肝実証では、六部定位脈診において
○火実ー金虚ー木実証となる(子よく、母をして実せしむ)。
○水を補い火を瀉し木実を抑える(母よく、子をして虚せしむ)。
難経解説(南京中医学院)
○五行の相剋関係の意義を説明している。五臓の間には、必ず相生・相剋関係が働いて平衡を維持している。その平衡が失われると病態となる。
○五行の相生・相剋法則によって、肝実肺虚の病証と寫火補水の治法を説明し、その機序の分析を行っている。
(心肝の火の裕余と肺腎の陰の不足という二つの病証が存在する・補母瀉子や相剋理論を機械的にあてはめず、疾病の所在や伝変の情況を診て治法を決める。)