五蔵の生理

2005/08/21 鈴木 一馬

初めに
五蔵は神を宿しており、「天の五行」「七神」が交応することにより生理活動を行うことが出来ます。
五蔵の生理を把握するときは教科書的な(例えば、肝は将軍の官・謀慮を主る...)覚え方をすることも必要ですが一番の大元である「天の五行」・「七神」の性質をイメージしたうえで各蔵の生理機能をみていったほうが理解の幅が広がると思います。
実際の臨床でも生体に現れている諸現象を大局からとらえることが大事なように、五蔵の生理も大きなイメージからとらえていくことが大切だと考えたので以下の様にまとめてみました。

<天の五行>
 
天の五行(木・火・土・金・水)=原理・原則
 
1,「」の性質 = 唯一の生物であり、あらゆる物を生み出す。
             動きがある。千変万化。
             子供のように可能性・柔軟性があり吸収力も強い。
             生き残るために様々な策略を考え、具現化する。
             攻撃から身を守る。
             欲望のまま生き、身を滅ぼすことがある。

2,「」の性質 = 現象である。(生物・物ではない)
             命そのもの、消えると死ぬ。
             外へ向かっている。外とコミュニケーション。
             表現をする。
             感情をコントロールする。

3,「」の性質 = 全てを支える。自らは何もしない。
             物を変化させ、新しい物を生み出す。
             良い物・悪い物全てを受け入れる。
             何かが加わることにより力を発揮。自分では決められない。

4,「」の性質 = 生きるために必要な道具。何かを守るために何かを殺す。
             やるべきことをキッチリやる。統制する。(ものさし・天秤・はかりのイメージ)
             意志を持たず反射的に働く。 
             生き延びるために収縮(固く・小さく)する。

5,「水」の性質 = どんな生物にも存在し、自身あらゆる物を内包出来る。(全ての根元は水にあり)
             常に循環している。(高きから低きへ流れ方円の器に従う)
             少々のことでは動じない。
             無くなると死ぬ。

<七神>
 七神 = 遺伝子・プログラムのようなもの

1,「」の性質 = 物事を上昇・拡大させる。進めようとする。
             行動を起こすためのスタートボタン。
             具体的な現象を起こす。

2,「」の性質 = 全体を統御し、融和を図ろうとする。
             外部からの情報に即応し、他へ振り分ける。

3,「」の性質 = 物事を認知・定位する働き。意識のことであり、今起きている現象を規定づけて情報処理をする。

4,「」の性質 = 全ての情報を取得して、そのままの状態で保存・管理する。(一時的な保管)

5,「」の性質 = 物事を加工・縮小する。無駄を削ぎ落とし、整理整頓する。
             私心を持たず反射的に対応する。

6,「精」の性質 = 生命を継承させる働き。経験を通して獲得した能力を保管する。

7,「志」の性質 = 己を全うする働き。自己の存在を確保する。
 
・次に、天の五行と七神の性質を踏まえた上で各蔵の生理機能をみていきます。

五臓 五行 七神 役職 生理機能(はたらき) 精神  形質
将軍の官 ・全ての欲求に関わる。
・栄養を消費し、活動成長する。
・形ある物を動かす。
・即時的な防衛・全身の筋運動。
・血量の調節(蔵血)=目的別に振り分ける。
         (例、日中=四肢、夜=幹躯)
・深謀遠慮
・能動的
・欲求
・怒
・筋(五主)=気
・爪(五華)=精
・目(五官)=神
・血液
・肝臓
・運動器系
君主の官 ・全身の生理活動の統括
・まず最初に状況を感受し、他へ振り分ける。
・精神活動の中枢
・循環=血流・速度の調節(血脈)
・神明
・公明正大
・ありのまま
・自己貫徹
・赤裸々
・喜
・脈(五主)=気
・面(五華)=精
・舌(五官)=神
・血液
・心臓
・循環器系
意智 倉凛の官 ・栄養(後天の精)の供給、貯蔵、化生
・血の成分管理
・生理機能を維持するために前提条件を提供 している。(肉体そのもの)
・停滞
・調和
・思、憂
・肌肉(五主)=気
・ 唇(五華)=精
・ 口(五官)=神
・脾臓
・消化器系
相府の官 ・体内の秩序(生理機能)を保つ
・推動作用=気を全身に巡らせ物事を推し進める。形ないものを動かす
・余分を切り捨て、必要な物だけ残す。
・換気作用。呼吸をつかさどる。
・循環をスムーズにする。排泄とも関わる。
 (通調水道)
・正確
・緻密
・悲
・皮毛(五主)=気
・ 毛(五華)=精
・ 鼻(五官)=神
・肺臓
・呼吸器系
精志 作強の官 ・消費された後天の精を先天の精へ取り入れ
 経験を自分のものにする。
・防衛(有事の時に限る。いざという時しか動 かない。)
・津液の管理。泌尿生殖に関わる。
・成長に関わる。加齢・寿命に関わる。
・肉体そのものである。
・生き甲斐
・自己保全
・存在
・本質
・驚・恐
・骨(五主)=気
・髪(五華)=精
・耳(五官)=神
・腎臓
・泌尿生殖器系

<まとめ>
各蔵の生理機能(形質・精神も含む)は「天の五行」、「七神」の性質を反映しています。
天の五行・七神のイメージを大枠としてとらえて、その中に具体的な生理機能を入れていくと視野が広がると思います。
臨床の際は五主・五華・五官等に現れる病理現象、精神状態から五蔵の状態を把握していくので五蔵の生理のイメージをふくらませていれば、様々な角度 から現象を把握出来るので診断の際の手助けにもなるのではないでしょうか。