05-12/18質問会
質問1
二十七難の奇経八脈について
奇経とは、つまり洪水時にあふれた水を流し込む緊急用の水路ではないかと思います。そこで、
1.慢性の病では常に洪水または大水の状態ではないかと思いますので、該当する奇経に反応が現れそうですが、どうでしょうか?
2.またその場合、標治として奇経を治療することで症状の緩和が望めそうです。
それならば糖尿病などの治療にも使えるのでは、と思いますが、実際にそういった形で利用している例などありましたらお願いします。
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- 奇經八脉について
- ◆二十七難曰.
- 脉有奇經八脉者.不拘於十二經.何謂也.
- 脉に奇經八脉が有り、十二経に於いて拘(とら)えざるとは、何を謂うか。
- 然.有陽維.有陰維.有陽
.有陰
.有衝.有督.有任.有帶之脉.
- 然るに、陽維、陰維、陽
、陰
、衝、督、任、帶の脉が有る。
- 凡此八脉者.皆不拘於經.故曰奇經八脉也.
- 凡に此の八脉は皆が経に於いて拘えざる。故に曰く奇經八脉也。
- 經有十二.絡有十五.凡二十七氣.相隨上下.何獨不拘於經也.
- 経に十二有り、絡に十五有る。凡に二十七の氣、上下に相隨う。何が獨(ひとり)経に於いて拘えざるか。
- 然.聖人圖設溝渠.通利水道.以備不然.
- 然るに、聖人が溝渠を圖(ず;図。地図や設計図など大きなものを狭い紙に書いたもの。計画)設(図にしたものを造ること)するは.水道を通利し以って不然に備える。
- 天雨降下.溝渠溢滿.當此之時.
霈(滂沛)妄行.聖人不能復圖也.此絡脉滿溢諸經.不能復拘也.
- 天雨が降下し、溝渠が満ち溢れれば、当に此れの時は、
霈(ほうまい;滂沛。大雨が降ること)妄行(闇雲に乱れ行う)。聖人も復(ふたたび)図ること不能也。此の絡脉が満ちて溢れ諸經もまた拘えること不能也。
◆二十八難曰.
- 其奇經八脉者.既不拘於十二經.皆何起何繼也.
- 其の奇經八脉は、既に十二経に於いて拘(とら)えざる、皆は何に起き何に継ぐか。
然.督脉者.起於下極之兪.並於脊裏.上至風府.入屬於腦.
然るに、督脉は下極の兪に於いて起り、脊の裏に於いて並び、上にて風府に至りて.於いては脳に入りて属す。
任脉者.起於中極之下.以上毛際.循腹裏.上關元.至咽喉.
任脉は、中極の下に於いて起り、以って毛際を上りて、腹裏を循(したが)い関元を上がって咽喉に至る。
衝脉者.起於氣衝.並足陽明之經.夾齊上行.至胸中而散也.
衝脉は、氣衝に於いて起り、足の陽明の経に並びて、臍を挟み上行し、胸中に至って散ずる也。
帶脉者.起於季脇.廻身一周.
帶脉は、季脇に於いて起り、身を一周廻る。
陽
脉者.起於跟中.循外踝.上行入風池.
陽
脉は、跟(くびす。足の、地面・床につく部分。)中に於いて起り、外踝を循(したが)い上行して風池に入る。
- 陰
脉者.亦起於跟中.循内踝上行至咽喉.交貫衝脉.
- 陰
脉は、また跟中に於いて起り、内踝を循(したが)い上行して咽喉に至り衝脉と交貫する。
陽維陰維者.維絡于身.溢畜不能環流灌漑諸經者也.
陽維と陰維は、絡を維(な;隈無く繋げる)して身に于(ゆ;往)く。溢畜し環流は不能にて諸経は灌漑(かんがい;水がまるくうずをなして流れこむ)する也。
- 故陽維起於諸陽會也.
- 故に陽維は諸陽の會(=会;あつまる)に於いて起る也。
- 陰維起於諸陰交也.
- 陰維は起於諸陰の交に於いて起る也。
- 比于聖人圖設溝渠.滿溢流于深湖.故聖人不能拘通也.而人脉隆盛.入於八脉.而不環周.
- 比れ聖人が溝渠を圖(ず;図。地図や設計図など大きなものを狭い紙に書いたもの。計画)設(図にしたものを造ること)するも.満ち溢れ深湖に流れゆく。故に聖人とて拘(とら)え通ずるは不能也。人の脉も隆盛するは八脉に於いて入り環周せず。
- 故十二經.亦不能拘之.其受邪氣.畜則腫熱.砥射之也.
- 故に十二経も拘(とら)えるは不能にて其の邪気を受け畜えるは則ち腫熱。砥(砥石)にて射す也。
◆二十九難曰.
- 奇經之爲病.何如.
- 奇經の為(な)す病は何か。
- 然.陽維維於陽.陰維維於陰.
- 然るに、陽維は陽に於いて維(な;隈無く繋げる)し、陰維は陰に於いて維す。
- 陰陽不能自相維.則悵然失志.溶溶不能自收持.
- 陰陽が自ら相維(な;隈無く繋げる)すこと不能。則ち悵然として志を失う(茫然自失)。溶溶(無力、脱力)して自らの收持が不能。
- 陽維爲病.苦寒熱.陰維爲病.苦心痛.
- 陽維の為(な)す病は寒熱に苦しみ、陰維の為す病は心痛に苦しむ。
陰
爲病.陽緩而陰急.陽
爲病.陰緩而陽急.
陰
の為(な)す病は陽が緩みて陰が急し、陽
の為す病は陰が緩みて陽が急す。
衝之爲病.逆氣而裏急.督之爲病.脊強而厥.
衝の為(な)す病は逆気して裏急し、督の為す病は脊(背骨)が強(こわ)ばって厥す。
- 任之爲病.其内苦結.男子爲七疝.女子爲
聚.
- 任の為(な)す病は其の内が結して苦。男子は七疝(せん;腰や腹のいたむ病気。腸がさがりふぐりがはれる病気。衝疝、狐疝、
たい頽は形が欠けて窪む疝、厥疝、
たい疝、
りゅう疝)を為(な)し、女子は
聚(かしゅう;堅くなった物の集まり)を為す。
- 帶之爲病.腹滿腰溶溶.若坐水中.
- 帶の為(な)す病は腹は満し腰は溶溶とし水中に座るが若(如)し。
- 此奇經八脉之爲病也.
此れ奇経八脉の為(な)す病也。
このほか素問では骨空論、挙痛論、痿論。霊枢では逆順肥痩論、動兪論、海論などに奇経は地脈が出てきます。
質問2
四十五難の八会穴について
熱病内にある者はその会の気穴を取る、とあります。
1.この熱病は外因・内因に関わらず、内に熱が篭ってしまった状態を指すものでしょうか?
2.その場合、筋ならまだわかりますが、脈や髄に内熱があるとはどんな状態でしょうか。またそれはどうやって観察するのでしょうか。
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八会穴について
- ◆四十五難曰.
- 經言.八會者.何也.
経に言う、八会は何か。
- 然.府會大倉.藏會季脇.筋會陽陵泉.髓會絶骨.血會鬲兪.骨會大杼.脉會大淵.氣會三焦外一筋直兩乳内也.
- 然るに府会は大倉(中
)、藏会は季脇(章門)、筋会は陽陵泉、髓会は絶骨、血会は鬲兪、骨会は大杼、脉会は大淵、氣会は三焦外一筋にて両乳の内(
中)に直るなり。
- 熱病在内者.取其會之氣穴也.
- 熱病が内に在るは、其の會の氣穴を取る也。
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質問3
過去の文鍼研の初級者講習の内容を見直しましたところ「血の治療には三陰三陽論で行う」とあったのですが、これは教科書で言うところの三陰三陽病(傷寒論)や六経病(素問)とは全く関係のないものですか?
両者とも外因が表から裏へ波及していく、「どの階層まで侵入されたか」を論じているものなので違うものかな、とは思うのですが。
それとも三陰三陽論での治療とは五行それぞれの性質(方向性)を用いた治療法と考えていいのですか?
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三陰三陽の並ぶ順のバリエーション
- 季節の進行は : 少陽モ陽明モ太陽モ太陰モ少陰モ厥陰
傷寒論の病気の進行は : 太陽モ少陽モ陽明モ太陰モ少陰モ厥陰
- 素問の熱論篇は:太陽経病モ陽明経病モ少陽経病モ太陰経病モ少陰経病モ厥陰経病
手の経絡は : 前から陽明モ少陽モ太陽 と,太陰モ厥陰モ少陰
三陰三陽論とは陰陽という有る現象に対して二つに分けた物を、さらにそれぞれの陰と陽を、3つづつに分けてその状態がどのようの物かを把握する理論です。
質問4
- 外因・内因と外感・内傷の診察法についての質問(要望?)です。
- 内因・外感について、
2004年4月のレジュメ(パート1)では、風邪、寒邪、飲食、労倦、湿邪、に分類されていますが
2005年6月のレジュメ(パート2)では、気逆、気滞、血実(中焦)血虚、血実(下焦)水腫、精虚に分類されています。
新しいものと、以前のものを、比較してみて、非常にわかりづらいので、
パート1、パート2が、まとまったパート3(新しいレジュメ)を作成して下さい。
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質問5
古典コース(学理)
「鍼灸師なら黄帝内経素問・霊枢・難軽などの古典勉強が大切」と云われます。
何から始めたらよいのか分からず、本でも読もうと思っても、色んな本が出回っており、目移りしてしまいます。
そこで、鍼灸師の卵である初級者が入りやすい古典がありましたら、ご紹介ください。
1.貴会の研究ベースは難経ですか? 医道の日本第712号(平成15年3月号)
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2.難軽をベースにするのは、なぜですか?
- ○
3.難経と難経本義は、どう違うのですか?
難病本義は元の時代の滑寿という人が書いた難経の注釈(注つまり本文の補足や,本文中の語句・文章などを詳しく説明するために書き入れた文句を加えて,本文の意味をわかりやすく説明すること)したものです。
4.医学史中、黄帝内経と黄帝内経太素・明堂はどう違うのですか?
太素は素問と霊枢の似通った記載を一つにして本にしたものです。テキストとして、王冰や全元起が書き換えてしまっている基の文が残っていたりします。最古は京都の仁和寺にあります。
明堂経や甲乙経は経穴の記載が中心でそれに対応した病状などが記載されているようです。
5.素問識・霊枢識は、原文に作者の見識や解釈を加えた書物ですか?
『素問識(そもんし)』『霊枢識』は1808年で江戸時代の日本人の多紀元簡。
6.現在、購入できる本の中でお勧めは、ありますか?
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7.これから読みたいと考えている本・研究したい古典はありますか?
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8.今後、何を目的として、どういう研究を進めていく予定ですか?
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臨床コース(技術)
1.脈・おなか・尺膚・背中の切診は、初級者の頃、何をベースにされましたか?
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2.貴会の脈診で優先されるのは脈状診ですか?それとも六部定位脈診ですか?
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3.それぞれ、からだの何を診ているのですか?
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4.脈診の時の施術者のポジションは、患者の右側・左側を意識されますか?
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5.証をたてて選穴・取穴・刺入までは出来ます。抜鍼のタイミングがわかりません。経験則的な目安を教えてください。