06-06/18 五行大義に観る五臓の五行分類 加藤秀郎

五行大義の巻第三の第四、論配藏府(臓腑の配を論ずる)には
藏府者、由五行六氣而成也。
藏と府は、五行と六気に由りて成る。
藏則有五、稟自五行爲五性。
藏は則ち五つ有り、五行の自(もともとから)ら稟(リン;天よりさずかる)して五性を爲(物のあり方、その物の性質)す。
府則有六、因乎六氣、是曰六情、情性及氣、別於後解。
府は則ち六つ有り六気に因(よりて;おこった事のよりどころ)りて是れ曰く六情。情性及び気は別に於いて後に解す。
(六気は下記の陽陰風雨晦明、六情は喜怒哀楽好悪)
今、論藏府所配合義。五藏者、肝心脾肺腎也。六府者、大腸小腸膽胃三焦膀胱也。
今、論ずるは藏と府の配合する所の義。五藏は肝心脾肺腎。六府は大腸小腸膽胃三焦膀胱。
肝以配木、心以配火、脾以配土、肺以配金、腎以配水。
肝を以(もって;手段や原因・理由を示すことば)って配するは木、心は火、脾は土、肺は金、腎は水。
膀胱爲陽、小腸爲陰、膽爲風、大腸爲雨、三焦爲晦、胃爲明。
膀胱は陽と爲し、小腸は陰と爲し、膽は風と爲し、大腸は雨と爲し、三焦は晦と爲し、胃は明と爲す。
晦は(みそか。つもごり。陰暦の月末で、月のないやみ夜。<対>朔。くらい。よくわからない。<対>明)
故杜子春秋醫和云、陰淫寒疾、陽淫熱疾、風淫末疾、末四支也、雨淫腹疾、晦淫惑疾、明淫心疾。
故に杜子春秋(春秋左氏伝の昭公元年の条)の醫和に云う、
陰の淫(入りこんで悪くする)するは寒疾、陽の淫するは熱疾、風の淫するは末疾、末は四支(四肢)、雨の淫するは腹疾、晦の淫するは惑(まどう。一定の対象や先入観にとらわれる)疾、明の淫するは心疾。
藏者、以其藏於形體之内故、稱爲藏、亦能藏受五氣、故名爲藏。
藏は其の形と體(体)の内に藏することを以って於いて故に、稱(しょう;おおやけにいう名前)して藏と爲し、亦(また)五気の能(五行の働き)を受けて藏するので、故に名を藏と爲す。
府者、以其傳流受納、謂之曰府。
府は其の傳流の受納を以って、之(これ)に謂いうを府と曰う。
白虎通云、肝之爲言扞也。肺之爲言費也。情動得序也。心之爲言任也、任於思也。腎之爲言賓也、以竅寫。脾之爲言辨也、所以精稟氣也。
白虎通義(の情性篇)に云う、
肝の言うに爲すは(肝という字は)扞(盾でふせぐ。攻撃を受け止めて守る。矢をつがえて弓をひく。棒で練った物を引きのばす)なり。
肺の言うに爲すは費(力や心や物を分散させて使いへらす)なり。情が動きて序(ある基準によるきまった並べ方)を得るなり。
心の言うに爲すは任(役目や仕事を与えてまかせる)なり、任に於いては思なり。
腎の言うに爲すは賓(ひん;主人と並んでペアをなすたいせつな客。白虎通義の原文には「寫」とある。一か所にたまった物を他の所に出し、うつすの意)なり、以って竅(きゅう;引きしまった、細いあな)寫する。
脾の言うに爲すは辨(べん;わきまえる。けじめをつけてわける)なり、精の気を稟ける所以(ゆえん)なり。
元命苞云、脾者辨也。
元命苞(げんめいほう;春秋元命苞)に云う、脾は辨なり。
心得之而貴、肝得之而興、肺得之而大、腎得之以化。
心は之(これ)を得て貴く、肝は興(おこ)り、肺は大きく、腎は化す。
肝仁、肺義、心禮、腎智、脾信。
肝は仁、肺は義、心は禮(礼)、腎は智、脾は信。
肝所以仁者何。肝木之精。仁者好生。東方者陽也。萬物始生、故肝象木。色青而有柔。
肝の仁は何の所以(ゆえん)か。
肝は木の精。仁は生ずるを好む。東方は陽なり。萬物の始め生ずる、故に肝は木を象(しょう;かたどる)ずる。色は青にて柔が有る。
肺所以義者何。肺金之精。義者能斷。西方殺成萬物、故肺象金。色白而有剛。
肺の義は何の所以(ゆえん)か。
肺は金の精。義は断つを能す。西方は萬物を殺成す。故に肺は金を象ずる。色は白にて剛が有る。
心所以禮者何。心者火之精。南方尊陽在上、卑陰在下。禮有尊卑、故心象火。色赤而光。
心の礼は何の所以(ゆえん)か。
心は火の精。南方は尊ぶ陽が上に在り、卑しい陰が下に在る。礼は尊卑がある。故に心は火を象ずる。色は赤にて光が有る。
腎所以智者何。腎水之精。智者進而不正、無所疑惑。水亦進而不惑。故腎象水。色黒水陰、故腎雙。
腎の智は何の所以(ゆえん)か。
腎は水の精。智は進むこと不正(とどまらず)、疑い惑う所が無い。水も亦(また)進むことに不惑(まどわらず)。故に腎は水を象ずる。色は黒にて水陰、故に腎は双(ふたつならんだもの。ペアをなしているさま)。
脾所以信者何。脾土之精。土主信。任養萬物、爲之象。生物無所私、信之至也。故脾象土、色黄。
脾の信は何の所以(ゆえん)か。
脾は土の精。土は信を主る。萬物を任養し之(これ)を象と爲る。物が生ずる所に私(我)は無く、信は之を至るなり。故に脾は土を象ずる。色は黄。
翼奉云、肝性靜、甲己主之。心性躁、丙辛主之。睥性力、戊癸主之。肺性堅、乙庚主之。腎性敬、丁壬主之。
翼奉は云う、肝の性は靜、甲己(こうき;きのえ、つちのと)を主る。
心の性は躁、丙辛(へいしん;ひのえ、かのと)を主る。睥の性は力、戊癸(ぼき;つちのえ、みずのと)を主る。
肺の性は堅、乙庚(おつこう;きのと、かのえ)を主る。腎の性は敬、丁壬(ていじん;ひのと、みずのえ)を主る。

許愼五經異義、尚書夏侯歐陽説云、肝木、心火、脾土、肺金、腎水。此與前同。
許愼(きょしん)の「 五經異義」による「尚書(しょうしょ)」夏侯歐陽説(かこうおうようせつ)に云う、肝は木、心は火、脾は土、肺は金、腎は水。此れは前と同じに與(あた)る。
古文尚書説云、脾木、肺火、心土、肝金。此四藏不同。
古文尚書説(同じく許愼の「 五經異義」の中の)に云う、脾は木、肺は火、心は土、肝は金。此の四藏は不同。
案禮記月令云、春祭以脾、夏祭以肺、季夏祭以心、秋祭以肝、冬祭以腎。
案ずるに「礼記(らいき)」の月令篇に云う、春祭は脾に以(よ)りて、夏祭は肺に以(よ)りて、季夏祭は心に以(よ)りて、秋祭は肝に以(よ)りて、冬祭は腎に以(よ)りて。
許愼は「 五經異義」を著し、古文尚書の五臓の五行配当が正しいと主張した。に対し鄭玄(じょうげん)という人は「駁五經異義」を著し、今文尚書が正しいとした。駁(はく)とは他人のいったことに反対して論じるの意。この論議は「礼記」の月令篇に残る。同じ尚書でも今文は漢の文帝の命で晁錯(ちょうさく)という人が著し、古文は周の時代に孔子の家からみつかったとされる物。

皆、五時自相得、則古尚書是也。
皆、五時が自ら相得るは、則ち古尚書の是れなり。
鄭玄駁曰、此文異事乖、未察其本意。
鄭玄(じょうげん)の駁(はく;「駁五經異義」)曰く、此れ文を異なりて事を乖(そむ)く、其の本意を未察す(未だに察せ無い)。
月令五祭皆言先、無言後者。凡言先有後之辭。
月令の五祭は皆な先を言い、後を言うは無し。凡(およそ)先を言うは後の有るを辭(じ;そう言った意味を含み)す。
後先というのは一つの季節を区切ることで、季節のはじめを孟、中頃を仲、終り頃を季といった。つまり先を孟、後を季。
孟-もう;かしら。兄弟の序列で、最年長の人。兄弟を年齢の上の者から順に孟・仲・季という。また、伯・仲・叔・季ともいう。孟女(モウジョ)=長女
     はじめ。季節や時代のはじめ。孟春(モウシュン)
仲-ちゅう;兄弟の序列で、中にあたる人。「伯仲」春夏秋冬のそれぞれの期間を三分したとき、孟・季に対して、まん中の期間のこと。
    まん中であるさま。▽たとえば孟春・仲春・季春という
季-き;すえ。季節や時代の最後。季春(春のすえ)。兄弟の序列で、すえの人
「季夏」という言葉は
黄帝内径素問の風論篇第四十二
季夏戊己傷於邪者.爲脾風.
季夏の戊己(ぼき;つちのえ、つちのと)に邪に於いて傷れるは、脾風を爲す。
霊枢の五音五味第六十五
上宮與大宮同.穀稷.畜牛.果棗.足太陰.藏脾.色黄.味甘.時季夏.
上宮と大宮は同じ、穀は稷(しょく;こうりゃん。漢代にはあわ、唐代にはきびの意)、
畜は牛、果は棗(なつめ)、足の太陰、藏の脾、色は黄、味は甘、時は季夏。
「長夏」という言葉は
素問の金匱真言論篇第四
故春善病衄.仲夏善病胸脇.長夏善病洞泄寒中.秋善病風瘧.冬善病痺厥.故冬不按.
春不衄.春不病頚項.仲夏不病胸脇.長夏不病洞泄寒中.秋不病風瘧.冬不病痺厥泄而汗出也.
故に春に善く病むは衄(鼻づまりや鼻血)。仲夏に善く病む胸脇。長夏に善く病むは洞泄寒中(冷えた下痢)。
秋に善く病むは風瘧(ふうぎゃく;マラリアなどの熱病).冬に善く病むは痺厥(冷えのぼせに依るしびれや麻痺)。
故に冬に按(あんま)をしなければ、春に衄(鼻づまりや鼻血)がない。
春に頚項を病まねば仲夏に胸脇を病まず、長夏に洞泄寒中を病まず、秋に風瘧を病まず、冬に痺厥や泄や汗出もを病まぬなり。
藏氣法時論篇第二十二.
脾主長夏.足太陰陽明主治.其日戊己.脾苦濕.急食苦以燥之.
脾は長夏を主る。足の太陰と陽明を主治し、其れの日は戊己(ぼき;つちのえ、つちのと)にて脾は湿に苦しみ、
急いで苦いものを食し以って之(これをつまり室を)燥す(乾かす)。
五常政大論篇第七十(運気七篇)
其類土.其政安靜.其候溽蒸.其令濕.其藏脾.脾其畏風.其主口.其穀稷.其果棗.其實肉. 其應長夏.
其蟲
.其畜牛.其色黄.其養肉.其病否.其味甘.其音宮.其物膚.其數五.
其の類は土、其の政は安靜、其の候は溽蒸(じょくじょう;湿度が高くてむし暑い)。其の令(天令)は湿。其の藏は脾、脾の其の畏(い;おそれ)は風。
其の主りは口。其の穀は稷稷(しょく;こうりゃん。漢代にはあわ、唐代にはきびの意)、其の果は棗(なつめ)、其の実は肉。 其の応は長夏。
其の蟲(足のある虫や動物の総称)は、其の畜は牛、其の色は黄、其の養は肉、其の病は否。其の味は甘。其の音は宮。其の物は膚.其の数は五。
「礼記」の月令篇に‘中央は土、其の蟲は’とある。
霊枢の順氣一日分爲四時第四十四
脾爲牝藏.其色黄.其時長夏.其日戊己.其音宮.其味甘.
脾は牝(めす)の藏を爲し、其の色は黄、其の時は長夏、其の日のは戊己(ぼき;つちのえ、つちのと)、其の音は宮。其の味は甘。

春祀戸、其祭也、先脾、後腎。
春は戸を祀り、其の祭るは先に脾、後に腎。
夏祀竈、其祭也、先肺後心肝。
夏は竈(かまど)を祀り、其の祭るは先に肺、後に心肝。
季夏祀中霤、其祭也、先心、後肺。
季夏は中霤(ちゅうりゅう;部屋の中央)を祀り、其の祭るは先に心、後に肺。
秋祀門、其祭也、先肝、後心肺。
秋は門を祀り、其の祭るは先に肝、後に心肺。
冬祀行、其祭也、先腎、後脾。
冬は行(みち;屋内外の通路)を祀り、其の祭るは先に腎、後に脾。
季節 先 後

季夏

心
肺
夏 肺 心肝


春 脾 腎
秋 肝 心肺
冬 腎 脾
凡此之義、以四時之位、五藏之上下、次之耳。
凡(およそ)此れの義は、四時の位、五藏の上下を以って、之(こ)れに次する耳(のみ)。
つまり五臓の体内配置の並びとその特徴を、季節の進行と特徴に当てはめただけだと言うことを指摘している。

冬位在後、而腎在下。夏位在前、而肺在上。春位小前、故祭先脾。秋位小却、故祭先肝。
肝腎脾倶在鬲下、肺心倶在鬲上。祭者必三、故有先後焉。此義不與行氣同也。
冬の位は後に在り、而(そうして)腎は下に在る。夏の位は前に在り、そうして肺は上に在る。春の位は小(やや)前にて、故に先に脾を祭る。秋の位は小(やや)却(きゃく;後ろにしりぞく)にて、故に先に肝を祭る。肝腎脾は倶(とも)に鬲(横隔膜)下に在り、肺心は倶に鬲上に在る。必ず三度(孟、仲、季)祭るにて(つまり毎月祭りをしている)、故に焉(ここ)に先と後が有る。此の義は行(各五行)の氣(働き)と(與=与=&)同じではない。
八十一問云、五藏倶等、心肺獨在鬲上何。對曰、心主氣、肺主血。血行脈中、氣行脉外。相隨上下、故曰榮衞、故令心肺在鬲上也。
八十一問に云う(難経三十二難曰、
五藏倶等.而心肺獨在膈上者.何也.然.心者血.肺者氣.血爲榮.氣爲衞.相隨上下.謂之榮衞.通行經絡.營周於外.故令心肺在膈上也.)、
五臓は倶(とも)に等しく、心肺は獨(それだけが)鬲上に在るは何か。對(むかい)て曰く、心は気を主り、肺は血を主る。血は脈中を行き、気は脉外を行く。相隨(したが)いて上下し、故に曰く榮衞、故に心肺は鬲上に在ると令するなり。
甲乙經云、黄帝、問岐伯曰、人有五藏、藏有五變。
甲乙經(鍼灸甲乙経)に云(霊枢の順氣一日分爲四時第四十四と同じ)う、黄帝の問に岐伯曰く人に五藏が有り藏に五変が有る。
肝爲牡藏、其色青、其時春、其日甲乙。心爲牡藏、其色赤、其時夏、其日丙丁。脾爲牝藏、其色黄、其時季夏、其日戊己。
肺爲牝藏、其色白、其時秋、其日庚辛。腎爲牝藏、其色黒、其時冬、其日壬癸。
肝は牡(ぼう=雄)藏を爲し、其の色は青、其の時の春、其の日は甲乙(こうおつ;きのえ、きのと)。
心は牡(ぼう=雄)藏を爲し、其の色は赤、其の時は夏、其の日は丙丁(へいてい;ひのえ、ひのと)。
脾は牝(ひん=雌)藏を爲し、其の色は黄、其の時は季夏、其の日は戊己(ぼき;つちのえ、つちのと)。
肺は牝(ひん=雌)藏を爲し、其の色は白、其の時は秋、其の日は庚辛(こうしん;かのえ、かのと)。
腎は牝(ひん=雌)藏を爲し、其の色は黒、其の時は冬、其の日は壬癸(じんき;みずのえ、みずのと)。

素問曰、肝者魂之所居、陰中之小陽。故通春氣。心者生之本、神之所處、爲陽中之大陽。故通夏氣。脾者倉廩之本、名曰興化、能化糟粕、轉味出入、至陰之類。故通土氣。肺者氣之本、魄之所處、陽中之少陰。故通秋氣。腎者主蟄、封藏之本、精之所處、陰中之太陰。故通冬氣。
素問に曰う、(明治書院の五行大義(上)のこの項目の語訳に六節藏象論篇第九とある)
肝は魂の居る所にて、陰中の小陽。故に春気に通ずる。
心は生の本、神の處(お)る所にて、陽中の大陽を爲す。故に夏気に通ずる。
脾は倉廩(食糧倉庫)の本、名を曰く興化(使用にかなう様に変える)、能は糟粕に化し、味を轉(てん;転)じて出入させ、陰の類に至る。故に土気に通ずる。
肺は気の本、魄の處る所にて、陽中の少陰。故に秋気に通ずる。
腎は蟄(ちつ;かくれる。こもる)を主り、封藏(蔵から蓄えを出さない)の本、精の處る所にて、陰中の太陰。故に冬気に通ずる。
素問に「陰中之小陽」という言葉がみられるのは陰陽離合論篇第六の‘少陽根起於竅陰.名曰陰中之少陽’
少陽の根は竅陰に於いて起き、名を曰く「陰中の少陽」
あと似た様な物が六節藏象論篇第九の‘肝者.罷極之本.魂之居也.其華在爪.其充在筋.
以生血氣.其味酸.其色蒼.此爲陽中之少陽.通於春氣’
肝は罷(ひ;疲れ)極(いきわたるの意)の本.魂の居なり。其の華は爪に在り、其の充(栄養の充填)は筋に在る。
以って血や気を生じ、其の味は酸、其の色は蒼。此れ陽中の少陽を爲す。春気に於いて通ずる。

又云、春無食肝、夏無食心、季夏無食脾、秋無食肺、冬無食腎。
又云う(素問にはなく似た様なのでは霊枢九鍼論第七十八)
春は肝を食さず、夏は心を食さず、季夏は脾を食さず、秋は肺を食さず、冬は腎を食さず。
霊枢九鍼論第七十八は
五裁.病在筋.無食酸.病在氣.無食辛.病在骨.無食鹹.病在血.無食苦.病在肉.無食甘.
口嗜而欲食之.不可多也.必自裁也.命曰五裁.
五裁(適当なところできる。適切にあんばいする)は、病が筋に在れば、酸を食さず。病が気に在れば、辛を食さず。
病が骨に在れば、鹹(かん;しおからい)を食さず。病が血に在れば、苦を食さず。病が肉に在れば、甘を食さず。
口が嗜なみて食すこと欲しても多くは不可なり。必ず自ら裁(制限)するなり。命すること曰く五裁。


周禮疾醫、掌養萬人之疾病者、以肝爲木、心爲火、脾爲土、肺爲金、腎爲水、則疾多、反其術、則死。
周禮(しゅうらい;「周礼」(作法や制度を記した「三礼(周礼、儀礼、礼記)」の一つ)という書物)の
疾醫(天官冢宰(ちょうさい;大宰の意で長官のこと)の‘下’に記載。民の疾病の治療を司る官)とは、
万人の疾病の養い(この場合、病人に対する保護)を掌(しょう;たなごころ。手のひらにおさめて処置する)するは、
以って肝は木を爲し、心は火を爲し、脾は土を爲し、肺は金を爲し、腎は水を爲せば
則ち疾は(ゆ;=癒)すること多く、其の術を反すれば、則ち死す。
月令中霤之禮、以陰陽進退爲次。白虎通及素問醫治之書、用行實爲驗。故其所配是也。
(上記の)「礼記(らいき)」の月令篇の「冬の位は後に在り腎は下に在る〜」は‘中霤(りょう)の礼’という部分にあるのだが、陰陽の進退を以って次(物事の順序をあらわすことば、順序決め)と爲す。白虎通や及び素問や(周礼の)醫治の書は、実の行ないを用いて験と爲す。故に其の所にて是れを配するなり。(つまり医学書などにある、木-肝、火-心、土-脾、金-肺、水-腎は実体験による結論なので正しい)

白虎通又云、木所以浮、金所以沈者何。子生於母義。肝以沈、肺以浮何。有知者、尊其母也。
白虎通義に又(五行篇)云う、
木が浮く所以(ゆえん)、金が沈む所以(ゆえん)は何か。
子が母に於いて生れるの義。
子が親から生まれるという現象は、外的現象として観察できる。
親 �モ 子
金
�モ
水
�モ
木
親 �モ 子

○
木   金

○
�ユ   �ヨ
  水  
肝は以って沈み、肺は以って浮くは何か。
知の有る者は、其の母を尊するなり。
子が親を尊ぶ心は内的様相としてその本人が知るのみで、推察によって認識する。
親 �ヤ 子
金
�ヤ
水
�ヤ
木
親 �ヤ 子

○
肝   肺

○
�ヨ   �ユ
  水  
一説云、甲木畏金、以乙妻庚、受庚之化。木法其本、直甲故浮。肝法其化、直乙故沈。庚金畏火、以辛妻丙、受丙之化。金法其本、直庚故沈。肺法其化、直辛故浮。
一説に云う、
甲(きのえ)の木は金を畏(おそ)れる、以って乙(きのと)が庚(かのえ)を妻(め;相剋関係なので夫婦)し、庚(かのえ)の化を受る。
木は其の本に法(のっと)り、直ちに甲(きのえ)故に浮く。肝は其の化に法(のっと)り、直ちに乙(きのと)故に沈む。
庚(かのえ)の金は火を畏(おそ)れ、以って辛(かのと)は丙(ひのえ)を妻(め)すれば、丙(ひのえ)の化を受ける。
金は其の本に法(のっと)り、直ちに庚(かのえ)故に沈む。肺は其の化に法(のっと)り、直ちに辛(かのと)故に浮く。
これは難経三十三難にあります。
肝青象木.肺白象金.肝得水而沈.木得水而浮.肺得水而浮.金得水而沈.其意何也.
然.肝者.非爲純木也.乙角也.庚之柔.大言陰與陽.小言夫與婦.釋其微陽.而吸其微陰之氣.其意樂金.又行陰道多.故令得水而沈也.
肺者.非爲純金也.辛商也.丙之柔.大言陰與陽.小言夫與婦.釋其微陰.婚而就火.其意樂火.又行陽道多.故令肺得水而浮也.
肺熟而復沈.肝熟而復浮者.何也.故知辛當歸庚.乙當歸甲也.
肝は青く木を象(かたど)り、肺は白く金を象(かたど)る。肝は水を得て沈み、木は水を得て浮く。
肺は水を得て浮き、金は水を得て沈む。其の意は何か。
然るに、肝は純木を爲すに非(あら)ずなり。乙(きのと)で角(五音の木)なりて庚(かのえ)の柔(相剋である金を軟らかく受け止める木の陰)。
大きく言うと陰と陽。小さく言えば夫と婦。釋(しゃく;分析解体)すれば其れ微陽、そして吸(きゅう;とりこむ)すれば其れ微陰の気。其の意は金を楽(演奏)してまた陰の道を行くが多し。故に水を得れば沈むことを令するなり。
肺は純金を爲すに非(あら)ずなり。辛(かのと)で商(五音の金)なりて丙(ひのえ)の柔(相剋である火を軟らかく受け止める金の陰)。
大きく言うと陰と陽。小さく言えば夫と婦。釋(しゃく;分析解体)すれば其れ微陰、婚して火に就ぐ。其の意は火を楽(演奏)してまた陽の道を行くが多し。故に肺はを得れば浮くことを令するなり。
肺は熟して復び沈み、肝は熟して復び浮くは何か。
故に辛(かのと)は庚(かのえ)に、乙(きのと)甲(きのえ)に帰するが当(あたりまえ)と知るなり。

五行に配当されることやその性質などの仕組みの説明は、基本的に十干に原理することになる。
本質的な五行論の理解は、十干やさらに十二支の理解となる。
淮南子に母子関係の説明の箇所があるが、この場合は十干と十二支をまたいだ五行の展開になっている。
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「ン」,促音(ッ),長音(ー),読点(、),句点(。)
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  ン     ッ     ー     、   肝