07-07/29 「初心者のための鍼灸古典概説」 文京鍼研究会 加藤弘之

 ここに取り上げる「古医書」は、数千年にわたって名医達によって書かれた古典鍼灸治療=経絡治療の基礎となるものである。それは東洋的自然観によって観察し、実験され、考察されてできあがったものである。その成立過程は膨大な時間を経て、異なった地域の特性による考え方や治療法を包含している。
 今回はそのエッセンスを味見して、古典への親しみと興味を持っていただけるよう話を進めようと思う。

「古医書」は、『黄帝内経』の素問と霊枢、それに『難経』がある。
素問は大自然と人体との関わりを説いた基礎医学であり、霊枢は鍼治療の概略である。そして難経によって鍼治療としての基礎、臨床、治療法が確立する。

しかし疾病に対する具体的な対処法は何一つ書かれていない。

全てが概略の形をもって、そのエッセンスを有効利用する事は読み手にゆだねられているのである。
その中で素問の四気調神大論にある各季節の養生法を紹介し解説してみる。
四氣調神大論篇第二
第一章(四時(四季)の過ごし方)
季節

春へ〜
夜は眠くなったら眠り朝は早く起きて庭などをゆっくりと歩く
夜は眠くなったら眠り朝は早くに起きて昼間の長さを充実する様に活用する 鶏と過ごす様に、夜は早く寝て朝は早く起きる 夜は早く寝て朝は必ず日の光を待って遅く起きる

養法
冬の不自由さをゆったりと解放する様に勤め、増えていく外仕事を緩やかに行う。調和の精神で暖かくなる自然を社会と共に向き合う 長い昼を、気持ちを奮い立たせることなく、本来持つ伸びやかさを外に解放する様に過ごす 収穫や冬への準備をあくせくせずに、穏やかに行う

意欲を抑えて行動には出さず、寒さを避け常に体を温める。体力を浪費して汗をかかない様にする

養生 〜奉長  養長 〜奉収  養収 〜奉蔵  養蔵 〜奉生
傷病 〜冬から 肝が傷れ夏ではあるが体温生産機能が下がり過ぎて寒く感じる寒変(かんへん)になる
心が傷れ秋にひどい咳と熱病である咳瘧(がいぎゃく)になる
肺が傷れ冬にガツガツ食べて下痢をする餮泄(てっせつ)になる 腎が傷れ春に腕脚が萎えて細くなる事もある痿厥(いけつ)になる