陰陽応象大論にみる生体観  2007/8/19  鈴木一馬

<はじめに>
・陰陽応象とは、陰陽という法則性の下で様々な現象が現れるということです。
 
・自然界の事物・現象全てにそれなりの徴候や表象があり、これらの徴候・表象は陰と陽の二種類の中に帰属させることが出来ます。

・陰陽は自然界の最も根本的規律であり、万物全て陰陽を用いて分類を行い、これで要点をつかみ、概括を行うことが出来ます。

 これらのことを踏まえて、陰陽應象大論の前半部分から、生体にはどの様な法則性があるのかを
 「原理原則」「空間」「時間」「反応」という各テーマごとに分類して考えてみました。

<総論>

テーマ1:「原理原則」 自然界の中にある法則性について。

原文 書き下し
 
 黄帝曰陰陽者天地之道也、万物之綱紀、

 変化之父母、生殺之本始、

 神明之府也、治病必求於本。

 故積陽為天、積陰為地、陰静陽躁、

 陽生陰長、陽殺陰蔵、陽化気、陰成形、

 寒極生熱、熱極生寒、寒気生濁、熱気生清。

 清気在下則生?泄、濁気在上則生シン脹。

 此陰陽反作病之逆従也。

 黄帝曰く陰陽なる者は天地の道なり、万物の綱紀

 変化の父母、生殺の本始、神明の府なり、治病必ず本に求む。

 故に積陽天となり、積陰為地となり、陰静にして陽躁、

 陽生じ陰長じ、陽殺し陰蔵す、陽は気を化し、陰は形を成す、

 寒極まりて熱を生じ、熱極まりて寒を生ず、

 寒気は濁を生み、熱気は清を生ず。

 清気下にあれば則ち?泄を生じ、濁気上にあれば則ちシン脹を生ず。

 此れ陰陽の反作病の逆従なり。

表1:自然観の全体像

天地之道 変化之父母 神明之府
万物之綱紀 生殺之本始 治病必求於本

・上記の表を具体的に解釈してみます。
天地之道 全ての根源、時空という場が設定されるということ。天地それぞれに決まり事(法則性)がある。
万物之綱紀 場に存在するものに対して具体的な規則・規律という性質が意味付けがされる。
変化之父母 どう変化するかという流れ。変化を生み出す力。
生殺之本始 変化・流れを構成する物質的要素。変化は無限だが実際は生死の繰り返しということ。
神明之府 生体の生理活動も自然界と同じ法則性にあるということ。
治病必求於本 病も自然界の法則性に則り治療するということ。



表2:自然観の具体像

空間 性質 時間 要素 反応
性質 物質
生殺
長蔵
注)横一列が必ずしも同属になるとは限らない。

上記の表をさらに解釈してみました。
空間 積陽為天、積陰為地  天地=場・時空のことを意味している。 天地之道
性質 陰静陽躁  場が持つ性質。静・躁に様々な現象を当てはめて考えることが出来る。 万物之綱紀
時間 陽生陰長、陽殺陰蔵  「生長殺蔵」は時間の流れを現している。
 陽→生殺=目に見えない性質、流れに変化を及ぼす。
 陰→長蔵=目に見える形の変化を及ぼす。
変化之父母
要素 陽化気、陰成形  時間の流れの中で具体的な現象を起こす物質的要素。 生殺之本始
反応 性質 寒極生熱、熱極生寒  盛衰現象を意味している。 神明之府
物質 寒気生濁、熱気生清  物質的要素が起こす具体的な現象。 治病必於本


表3:病になる原因について

物質的
要素
性質 病理(逆) コメント
清気 清気在下則生?泄 此陰陽反作
病之逆従也
今まで述べた法則性に逆らうと本来の生理活動
が行えなくなり、病になると言っている。
濁気 濁気在上則生シン脹

総論では自然界の仕組み・原理原則について述べています。そして人間も自然と同じ法則性に則っていることを説明しています。

・次に、総論の部分を踏まえてテーマを設定し解釈していきます。

<各論>
テーマ2:「空間」 空間で起きる諸現象と空間が持つ構成要素・性質について。

原文 書き下し
 
 故清陽為天、濁陰為地

 地気上為雲、天気下為雨

 雨出地気、雲出天気

 故清陽出上竅、濁陰出下竅

 清陽発?理、濁陰走五蔵

 清陽実四支、濁陰帰六府

 故に清陽は天となり、濁陰は地となる。

 地気は上りて雲となり、天気は下りて雨となる。

 雨は地気より出で、雲は天気より出ず。

 故に清陽は上竅に出で、濁陰は下竅に出づ。

 清陽は?理に発し、濁陰は五蔵に走る。

 清陽は四支に実し、濁陰は六府に帰す。

表1:自然界における「空間」

空間 要素 性質 現象
天気
(雨出地気)
地気
(雲出天気)

・空間(天・地)で起きる自然現象(雨・雲)、現象を起こした要素(天気・地気)、要素の性質(上・下)のはなし。

・自然界における「水」の循環を現象(雲・雨)を通して説明しています。

・これらの自然現象を生体に置き換えると以下のようになります。



表2:生体における「空間」

空間 要素 性質 現象
上竅(神気)
?理(精気)
四支(精神)
清陽 出・発・実 清陽出上竅
下竅(二便)
五蔵(神舎)
六府(水穀)
濁陰 出・走・帰 濁陰出下竅


注)要素の「清陽・濁陰」はどの「空間」にあるかによって意味合いが変わってきます。

・生体における「空間・要素・性質・現象」も自然界と同じ仕組みで動いていることを述べています。

・自然界の「水の循環」に対して、生体では「津液の循環」について述べています。
 そして、津液が循環した結果、「上竅・下竅」に「清陽・濁陰」という生理現象が現れます。

 テーマ2では「空間そのものが持つ要素・性質」と「空間という場で起きる諸現象」を「水(津液)の循環」を通して説明しています。

テーマ3:「時間」 時間経過の中における、盛衰現象を起こす要素について。

原文 書き下し
 
 水為陰、火為陽。陽為気、陰為味。

 味帰形、形帰気、気帰精、精帰化。

 精食気、形食味。化生精、気生形。

 味傷形、気傷精。精化為気、気傷於味。

 水を陰となし、火を陽となす。陽を気となし、陰を味となす。

 味は形に帰し、形は気に帰す、気は精に帰し、精は化に帰す。

 精は気を食なわれ、形は味に食なわれる。化は精を生じ、気は形を生ず。

 味は形を傷り、気は精を傷る。精化を気となし、気は味に傷られる。

表1:生体を損益する要素と生体を構成する要素について

根本要素 損益要素 構成要素 能力
 水  形

・次に具体的に解釈してみます。

要素 根本要素 水為陰 目に見える形体・実体。 現象を起こす形体・性質の根本要素は
「水・火」である。
火為陽 目に見えない能力。
損益要素 陽為気 無形の気(六気・七情) 生体を養い又、損なう要素は「気・味」である。
陰為味 有形の気(五味)
物性の
作用機序
構成要素 味帰形 味(五味)は形(肉体)を益する。 「気・味」が生体内に入ると、「形・精」という生体構成要素が作られる。
気帰精 気(六気・七情)は精(目に見えない能力)
を益する。
能力 形帰気 形(肉体)から気(エネルギー)の状態を反映。 取り入れたものが「気・化」に変化するということ。
精帰化 精(目に見えない能力)が次のものを生み出す(化)
滋養要素 精食気 精は気に養われる 生体を益する物。(気・味)
形食味 形は味に養われる
完成要素 化生精 今までの経験(化)が能力(精)を作る。 生体が完成され能力が発揮されるということ。
気生形 目に見えない現象(気)が肉体(形)から醸し出される。
損害要素 味傷形 有害な飲食物(味)は肉体を損ずる。 生体を損なう物。(気・味)
気傷精 悪い環境(気)は能力・性質(精)を損ずる。
総括 精化為気 経験を通して身につけた能力が発揮される。 生体の生理活動と損益要素との関わり合い。
気傷於味 飲食物をしっかり取らないと能力を発揮出来ない。
※ここでは、生体を損益する「気味」が生体を形作るまでの一連の流れ(時間)を説明しています。

原文 書き下し
 
 陰味出下竅陽気出上竅。

 味厚者為陰、薄為陰之陽、気厚者為陽、薄為陽之陰。

 味厚則泄、薄則通、気薄則発泄、厚則発熱。

 壮火之気衰、少火之気壮。

 壮火食気、気食少火、壮火散気、少火生気。

 気味辛甘発散為陽、酸苦涌泄為陰。

 陰味は下竅に出で、陽気は上竅に出づ。

 味厚き者を陰となし薄きを陰之陽となす、気厚き者を陽となし薄を陽之陰となす。

 味厚ければ則ち泄し薄ければ則通ず、気薄ければ則ち発泄し厚ければ則ち発熱す。

 壮火の気衰え、少火の気は壮んなり。

 壮火は気を食らい、気は少火に食らい、壮火は気を散じ、少火は気を生じる。

 気味の辛甘は発散して陽となり、酸苦は涌泄して陰となる。


「陰味出下竅陽気出上竅」=気味を取り入れた結果、「下竅・上竅」に生理現象が発揮されるということが前提条件にあります。

以下の表は、生理現象を発揮させる「気味の性質」/生理現象の「躁静現象」/「気味の具体的な性質」としてまとめました。


表1:気味の性質

損益要素 損益要素の性質 生体現象
発熱 性質の純度濃い(厚)。
命令を実行する能力が速い(陽)。
命令が迅速・集中的に実行されるので「熱」が発生(発熱)
陽之陰 発泄 性質の純度薄い(薄)。
命令を実行する能力が緩やか。(陽之陰)
命令が温和・分散的に実行されている状態(発泄)。
味が濃い物(厚)を飲食すると血が濁る(陰)。
腹壊し、下痢をする(泄)。
陰之陽 味薄い物(薄)は凝集・濁という作用は少ない。(陰之陽)
栄養素をスムーズに吸収し、物事がスムーズに進む。(泄)

※ここでは「気味」の性質が生体にどのような現象を起こさせるかの説明をしています。

表2:生理活動の躁静現象

躁静現象 性質
壮火
(躁)
壮火之気衰 全力で物事に対処する能力。
全力で動いた分、疲れ・衰える。
壮火食気 全力で物事に対処したので、エネルギー・能力(気)を消費してしまっている。
壮火散気 生理活動の統制が取れない、制御が効かなくなる状態。(散)
少火
(静)
少火之気壮 物事に対して必要な分だけで対処する能力。
必要以上に力を使わず大げさにしないので、他に影響を与えず壮んな状態でいられる。
気食少火 物事を大げさにしないため、貯力できる。
少火生気 適切な仕事をしているため損益のバランスがとれる。
不必要なことをしなければ気は養われ、生じる。

※ここでは生体がどのような振る舞いをするのかを説明しています。

表3:「気味の具体的な性質」

性質 コメント
気味 辛甘
(陰)
発散為陽  辛=発→辛味を食べて発汗するイメージ
 甘=散→甘味を食べて緊張がほどけるイメージ。
 陰味(辛甘)は陽の現象を起こし、陽味(酸苦)は陰の現象を起こすことを言っている。
酸苦
(陽)
涌泄為陰
 酸=涌→酸味を食べると眠った物が目覚める。
 苦=泄→苦みをたべると熱がにげる。

※ここでは気味の具体的な性質が生体に及ぼす影響を説明しています。


テーマ3では、生体を損益する要素(気味)を取り入れることにより、生体を構成する要素(水火/気精)能力(気・化)が完成していくという一連の時間の流れの中で、生体が躁静現象(壮火・少火)を起こすということを述べています。
結果として、生体に盛衰現象が起こります。

テーマ4:「反応」 刺激に対する反応形態について

原文 書き下し

 陰勝則陽病、陽勝則陰病。

 陽勝則熱、陰勝則寒。

 重寒則熱、重熱則寒。

 寒傷形、熱傷気。気傷痛、形傷腫。

 故先痛而後腫者気傷形也、先腫而後痛者形傷気也。

 陰勝れば則ち陽病み、陽勝れば則ち陰病む。

 陽勝れば則熱し、陰勝れば則寒す。

 寒重なれば則ち熱し、熱重なれば則ち寒す。

 寒は形を傷り、熱は気を傷る。気傷るれば痛み、形傷るれば腫る。

 故に先ず痛みて後に腫れる者は気形を傷るなり、
 先ず腫れて後に痛む者は形気を傷るなり。

表1:刺激に対する反応法則

反応法則 傷害因子 生体反応 侵襲経路
陰勝則陽病 陰勝則寒 重寒則熱 寒傷形 形傷腫 先腫而後痛者形傷気也
陽勝則陰病 陽勝則熱 重熱則寒 熱傷気 気傷痛 先痛而後腫者気傷形也

・次に各項目を具体的に解釈します。

反応法則 陰勝陽病 陰勝:内向現象強い。
陽病:外向現象弱まる。
陽勝陰病 陽勝:外向現象強い。
陰病:内向現象弱まる。
陽勝則熱 動・機能亢進・消費
エネルギーが消耗、減少する。
陰勝則寒 静・機能低下・貯蔵
エネルギー使わず動けなくなる。
重寒則熱 陰勝の状態に更に寒が重なること。
臨界点を越え爆発して熱の状態になる。?
(ギュウギュウに圧迫された物が爆発するイメージ)
重熱則寒 陽勝の状態に更に熱が重なること。
臨界点を越えた過度の消費・疲弊により寒(機能低下)の状態になる。
(パンパンに膨らみすぎた風船がシボむイメージ)
傷害因子 寒傷形 寒=外界からの影響(六淫・五味)は肉体(目に見える)を傷つける。
熱傷気 熱=内側からの影響(七情)は精神・機能(目に見えない)を傷つける。
   体内の熱の循環が滞っている状態。
生体反応 気傷痛 目に見えない感覚。(内側・自覚症状)
形傷腫 目に見える形体的な変化。(外側・他覚症状)
気質・形質が変化している。
侵襲経路 先痛而後腫者
気傷形
内側(痛・気)から発生したものが外側(腫・形)まで波及。
内→外
先腫而後痛者
形傷気
外側(腫・形)から発生したものが内側(痛・気)まで波及。
外→内

※ここでは、生体に加えられる刺激に対しての反応法則を述べています。

原文 書き下し
 
 風勝則動、

 熱勝則腫、

 燥勝則乾、

 寒勝則浮、

 湿勝則濡寫。
 
 風勝れば則ち動き

 熱勝れば則ち腫れ

 燥勝れば則ち乾し

 寒勝れば則ち浮し

 湿勝れば則濡寫す。


表2:具体的な反応について

病因 作用対象 現象
風勝則動
(精神)
怒り・イライラ・気分が落ち着かない

(肉体)
筋けいれん
熱勝則腫 意識朦朧・幻覚、幻想をみる・うわごとを言う。
腫脹
燥勝則乾 悲観的・無気力・覇気がなくなる
肉体の枯燥・枯化していく。
寒勝則浮 恐れやすい・驚きやすくなる。
生きる意欲が失われる。
麻痺
湿勝則濡寫 思考の堂々巡り・思い詰める
鬱傾向になる
浮腫・柔らかく頼りない。

※ここでは、生体が具体的にどのような反応を起こすのかを説明しています。

原文 書き下し
 天有四時五行以生長収蔵以生寒暑燥湿風。

 人有五蔵化五気以生喜怒悲憂恐。

 故喜怒傷気、寒暑傷形。

 暴怒傷陰、暴喜傷陽。

 厥気上行満脈去形。

 喜怒不節、寒暑過度生乃不固。

 故重陰必陽、重陽必陰。

 故曰冬傷於寒、春必温病。

 春傷於風、夏生於?泄。

 夏傷於暑、秋必於?瘧。

 秋傷於湿、冬生咳嗽。

 天に四時五行有りて以て生長収蔵し以って寒暑燥湿風を生む。

 人に五蔵有りて五気を化し以って喜怒悲憂恐を生む。

 故に喜怒は気を傷り、寒暑は形を傷る。

 暴怒は陰を傷り、暴喜は陽を傷る。

 厥気上行し脈満ちて形を去る。

 喜怒節ならずして、寒暑度を過ごせば生乃ち固からず。

 故に重陰必ず陽、重陽必ず陰。

 故に曰く冬寒に傷らるれば、春必ず温病たり。

 春風に傷らるれば、夏に?泄を生む。

 夏暑に傷らるれば、秋必ず?瘧たり。

 秋湿に傷らるれば、冬に咳嗽を生ず。


 

表3:生体(気・形)に影響を与える病因について。

空間要素 天有四時五行以生長収蔵
以生寒暑燥湿風
外界の気・外因(六気・六淫) 天と人という空間が生み出す要素。
天=寒暑躁湿風/人=喜怒悲憂恐がある。
人有五蔵化五気
以生喜怒悲憂恐
感情・内因(七情)
傷害要素 喜怒傷気 内因は精神・機能(気)を傷る 生体を傷る原因は内側(喜怒)からのものと、
外側(寒暑)からのものがあるということ。
寒暑傷形 外因は肉体(形)を傷る
病理現象 暴怒傷陰 怒は陰(血)を傷る 極度の興奮状態は正常な生理活動に影響を与える。(暴怒・暴喜)
精神興奮に正気を充当するため、正気を損耗する状態を示している。(厥気上行満脈去形)
内傷のことをいっている。
暴喜傷陽 喜は陽(血=神)を傷る
厥気上行満脈去形 正常な状態を失って生理活動が極大化し、形体を維持する正気がなくなる。
総括 喜怒不節 精神状態不安定。 内的状況が不安定であり(喜怒不節)、
外界からの影響を六淫として過剰に感受すると(寒暑過度)、正常な生理活動を維持することが難しくなる。
寒暑過度 六淫を過剰に感受している状態。
生乃不固 生理活動を正常に維持するのは難しくなる。

※ここでは、病因(外・内)が生体にどのような影響を及ぼすかを説明しています。


表4:病理現象について。

法則 重陰必陽、重陽必陰 二つの現象(喜怒不節=内因/寒暑過度=外因)が重なると反対の現象が起きるということ。
病理 冬傷於寒、春必温病 冬に不必要に動き回り汗をかいたり、体を冷やす飲食物などを摂取して、体を温めてエネルギーを温存する時に体を冷やしてしまっている(寒)
結果として、春になっても体が目覚めないままの状態になる。
その時季に合った養生(内外共に)をしないと次の季節になった時に病気になると言っている。

内・外ともに不節の状態であると「精」を損耗し充足できず、外界の変化に対応するための抵抗力が弱くなるため病を発症してしまう。
春傷於風、夏生於?泄 春の時季に無駄に動き周ってエネルギー消費している(風)
結果として夏に満足な状態に成長できず、防衛能力が弱々しいままである。食あたりなど起こしやすくなる。(?泄)
夏傷於暑、秋必於?瘧 夏に水分代謝が上手く行われていない(暑)
結果として、秋になっても夏にため込んだ水分を処理させられている状態。寒熱が錯綜している。(?瘧)
秋傷於湿、冬生咳嗽 秋に越冬準備が行われず、栄養が充分に充足されていない(湿)
結果として、栄養を蓄えなかったために体力なく免疫力が落ちて風邪などをひきやすくなる。(咳嗽)

※ここでは、二種類の病因(内外)が重なり生体を傷ると、次の季節に病理現象をおこすと説明しています。

テーマ3では、「刺激に対しての反応法則」について、「生体に影響を及ぼす原因」が
「反応法則に則り生体にどのような現象を起こさせるか」についてを述べています。


<まとめ>
今までのテーマのおさらいをしていきます。

1:「原理原則」自然界の中にある法則性について。
総論では自然界の仕組み・原理原則について述べています。そして人間も自然と同じ法則性に則っていることを説明しています。

2:「空間」
空間で起きる諸現象と空間が持つ構成要素・性質について。
「空間そのものが持つ要素・性質」と「空間という場で起きる諸現象」を「水(津液)の循環」を通して説明しています。

3:「時間」
時間経過の中における、盛衰現象を起こす要素について。
生体を損益する要素(気味)を取り入れることにより、生体を構成する要素(水火/気精)能力(気・化)が完成していくという一連の時間の流れの中で、生体が躁静現象(壮火・少火)を起こすということを述べています。
結果として、生体に盛衰現象が起こります。

4:「反応」
 刺激に対する反応形態について。
刺激に対しての反応法則について、生体に影響を及ぼす原因が反応法則に則りどのような現象を起こさせるかについてを述べています。

※最後に各テーマを「空間=上下」・「時間=左右」・「反応=内外」と言葉を置き換えてまとめてみます。

原文 書き下し

 故曰天地者万物之上下也。陰陽者血気之男女也。

 左右者陰陽之道路也。水火者陰陽之微兆也。

 陰陽者万物之能始也。

 故曰陰在内陽之守也。陽在外陰之使也

 故に曰く、天地なる者は万物之上下なり。陰陽なる者は血気之男女なり。

 左右なる者陰陽の道路なり。水火なる者は陰陽の微兆なり。

 陰陽なる者は万物の能始なり。

 故に曰く陰は内に在りて、陽の守なり。陽は外に在りて陰の使なり。

空間
(上下)
天地者万物之上下也 天地という空間で具体的な現象が起きる。 生体という空間を「上下」に分けて考えるということ。
「上下」のどちらで現象がおきているか判断しなさいということ。
陰陽者血気之男女也 生体は血気という実体要素により営まれている。
時間
(左右)
左右者陰陽之道路也 太陽の昇降による時間経過・盛衰現象を意味している。 生体で起きている現象が「左右」どちかにあるかによって、時間経過(急性・慢性)、どの要素(気血)に問題があるか、消耗しているかを判断しなさいということ。

症状に「左右差」が現れる。
水火者陰陽之微兆也 「水火」という生体根本要素が盛衰現象を起こす。
原理原則 陰陽者万物之能始也 陰陽は万物の諸現象を主る原理原則である。
反応
(内外)
陰在内陽之守也 陰は内にあり、陽が働けるように条件を整える。 今起きている反応が「内」から起こったものなのか、「外」から起こったものなのか原因(内因・外因)を判断しなさいということ。
陽在外陰之使也 陽は外にあり、陰の指示通り動く。


私達は体表観察を通して

「生体という空間でおきている現象」(上下)から、
「どの要素が」「どのような時間経過をたどり」(左右)、
「どの原因により」「どのような反応」をおこしているのか(内外)

を診察していきます。

生体を「上下」「左右」「内外」と分け、それぞれの部位が何を意味しているのかを考えて状態を分析していけば、症状に振り回されずに状態を把握できるのではないかと思います。


※引用・参考文献
・現代語訳 黄帝内経素問 上巻 (南京中医学院編 石田秀実監訳 東洋学術出版社)
・陰陽五行学説入門 (中村璋八・中村敞子共訳 たにぐち書店) COLOR="#f3ffe6"> @@ @ O@ @ e VF @@
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