07-9/16&10/21&11/18 背中のはなし 澤田 和一

[1]背中でできること
1)背部の反応を正確にとらえることにより、症状の程度を理解することができる。
また背中の反応から患者が言わない症状をうかがい知ることもできる。
2)生活習慣上の問題点を理解することができる。
3)反応の現れかたにより、東洋医学的立場からの病気の発生と経過を知ることができる。
4)反応の形により、標治法の取穴法則とその順序を決定することができる。
5)刺鍼ごとに反応の変化を確認して、ドーゼの適否や治療の効果を確認することができる。

[2]背中の基礎知識
1.四つの視点から背中を観察する。
1)衛気の反応
2) 栄血の反応
3)兪穴の反応
4)経脈の反応
これらの反応には明確な境界はなく、入り組んで存在する。
2.督脈について――督脈は諸陽経の会であり、臓腑は椎骨につく。
標治法は督脈上の経穴を用いて気血の流れを調節する。また季節の変化や症状により適宜経穴を選択する。
3.治療点とその取穴法
モデル点と治療点
取穴のポイント
正しい姿勢で、手から力を抜く。
経絡の流注に対して指を直角または平行に位置する。
指腹を広く使い、軽く皮膚上を滑らせる。
寒・熱、乾・湿など他と異なる点を見つける。
4.背中の五行分類
木 後頭部  陽の集まるところ
金 肩背部  陰に入るところ
土 背部  栄養の管理
水 腰仙骨  水分の管理
5.兪穴の部位
肺兪(3)心兪 (5) 肝兪(9)脾兪(11)腎兪(14)
胆兪(10)胃兪(12)大腸兪(16)小腸兪(18)膀胱兪(19)

[3]衛気の反応と取穴法則
○衛気は、全身を循環し体温の維持や外界刺激からの防御を行っている。
背部においては、頭部から仙骨部までの所見により、衛気の循環状態を知ることが
できる。衛気の循環異常は、色つやの変化・偏在や寒熱、背部の大小として現れる。
衛気の反応は上下の法則によって治療する。上下の法則とは、反応が上にあれば下にとり、反応が下にあれば上にとる方法を言う。

[4]栄血反応と取穴法則
栄血は生体を構成する物質であり、その病理反応は、こりや腫れとしてあらわれる。五行分類のいずれの場所から始まり、どのような広がりや深さをしているかを正確に捉える。内向き外向き・寒熱など、その性質も把握する。
栄血反応は、起点終点の法則によって治療する。起点終点の法則とは、反応の末端部の治療点(終点)に刺鍼して反応を小さくした後、起点に刺鍼する方法を言う。
[5]兪穴の反応と治療法則
兪穴は、五臓六腑の機能および精神状態を反映する。
背部兪穴を上、中、下焦に分けて観察する。
上〜呼吸、循環
中〜消化、吸収 後天の精
下〜排泄 水分代謝 先天の精
兪穴の反応は、内外・寒熱の法則により治療する。内外・寒熱の法則とは、内・寒は督脈の下部から、外・熱は上部からとる方法を言う。
[6]その他
五十肩の経脈取穴
背部所見の進行型
衛気→栄血→兪穴
兪穴→栄血・衛気
霊枢の臓腑経絡学説と難経の榮衞および三焦論
難経の生理学:呼吸から榮衞の循環
飲食から水分(入化出)と栄養(宗栄衛)の三焦論

[7]症例
1)主訴は急性腰痛の女性。でもつらいことは他にもあります。
2) 上からとる肩こりと浮かせてとる肩こり
3)銅鍼によるエヘン虫退治!
4)タクシー乗るは易し、降りるは難し
5)膠原病との付き合い方(潰瘍性大腸炎から関節炎)
6)頚肩腕痛の経脈取穴