鍼灸師1年生の急性股関節治療

カルテ:61歳男性 印刷広告印鑑会社経営

<既往歴>
〕直期に黄疸
⇒直期に扁桃腺をよく腫らし、高熱が頻繁にあり。強い薬をよく服用していたとの事。虚弱体質
57歳 脳梗塞(左)後遺症・右のみしか発汗しない。上肢両側のしびれ(手掌側)。記憶力の低下。一時うつ症状(幼少期のトラウマあり。悪夢見るが精神科医に相手にされず、 抗うつ剤を服用していたが副作用が強く中止。家庭内トラブルがあり、仕事も多忙。酒、タバコもないのでストレスが原因と語る)
不眠で導入剤・睡眠薬服用中。脳梗塞の薬を飲み始めてから、その副作用か、逆流性食道炎になり
胃腸薬服用中。常に胸焼け、胸部の発赤症状ありも。皮膚科に通院。前立腺症状も発症。尿道炎、尿路結石などもあり。左の耳鳴りがあり。聞こえない時もある。
ぃ横虻个里箸に事故で頚椎、腰椎損傷。腸骨から移植し頚椎C7固定術オペ。(C7、C8レベルの手指のしびれあり右屈曲でしびれあり)腰椎L4L5固定術オペ(左下肢しびれ、坐骨神経痛あり)療養中に後頚部を打ったことにより脳膜外出血あり。自然治癒。それ以来後頚部が痛むことが多い。
ダ里ら性格的に不安定。人に対して攻撃性がある。その他まだまだ事故、怪我多数。

<薬> 
プレタール(血液凝固阻止剤)、サーミヨン(脳血液促進剤)、耳鳴り(パキシル)、逆流性食道炎の薬
排尿促進剤(尿道炎が時々あり)、皮膚炎の薬(ステロイド)、胃腸薬、気管支拡張剤、筋弛緩剤、整腸剤などなど、その他多数・・・血圧は毎日計測 本日149/86 67

<現病歴>
2週間前から右腰痛。痛いなと思っていたが剣道練習後さらに悪化(趣味:剣道バカ)だんだん痛くなってきた。先週整形外科でブロック注射(腎喩あたり)したがきかない。以前左坐骨神経痛時にはブロック注射で一年間くらい効果があったが今回は効かない。今日も痛くて歩行が辛く、もう一度注射をしてもらおうと思っている。常に両足しびれ、痛みがあるので、どこが痛いかよくわからない。(お辞儀の動作が痛くてできない)常時手足は毎朝パンパンに腫れ、足は常に冷えてむくむ。 便通はどちらかというと下痢気味。トイレは近い。腎結石、前立腺があるのでたまに下腹部が痛む。 後頚部痛があり、手がしびれることが多々ある。 肩こりがひどくなると頭痛がある。右の肩関節が痛い。(剣道で無理をしたせいかもしれない) 睡眠薬がないと眠れない。 たまに動悸あり。ストレス強。
<所見>本人は右の腰が痛いと訴えていたが、実際は臀部から股関節、大腿内外側後面の痛み。表面は湿熱。炊飯器を開けたときの熱い湿気があがっている。(風邪?)股関節内面も表面の熱あり。広範囲で浅く、拍動はしていない。熱の下には冷たい硬結がたくさん下腿まであり。押すと痛い。下腿は冷えてむくみ押すとあとがのこる。腰部(L4L5手術跡)は冷えている。熱点(ひねったり、捻挫時のような)はない。左臀部には熱点。(こちらは坐骨神経らしい)背部は張って肩甲骨からもりあがって冷えている。大椎が冷たい。硬結らしき凝りがたくさんある。足が冷たく下腿からつま先にかけて氷のよう。全身水がたまっているみたいに皮膚が閉じぱんぱんの水風船。 頭頂部に熱はなく、後頚部あたりから熱が吹いている。脈は軟らかいが緊気味、やわらかい弾力あり。数気味
腹部は冷えて水(ちゃぽちゃぽっぽいけど、硬さあり)     

<診断&治療>
内因 寒邪 虚 土 金 (7月22日 大暑)
冷えによる筋性の急性股関節痛。冷えて硬くなった筋肉を剣道で動かし、筋肉が損傷。局所の気血のながれが悪くなった。その後そのまま、患部が冷え、停滞(寒湿)、痛みが強くなって痛みが増強したと考えられる。既往歴、ストレスなど慢性の痛みや疾患が多く、急性なので実証で治療しようと思ったが、局所の流れも悪いが、全体的に停滞気味で冷えていると判断し(夏らしい体にしたかった)、まず体を温める治療を優先した。

<本治法(抑臥位)>
証:脾虚証 使用穴の金 商丘(左:一応良いと思われる方を選択)
    →肌が柔らかくなり尺膚がやや発汗してきた。足先まで温まった。脈は落ちてやわらかくなったので修了。

<標治法(腹臥位)>
証が脾の虚証だったので、うつぶせの患者さんの右側に立ち(督脈の流れにそって)脊中穴に刺鍼。変化の早い人なので変化を見ながらちょっとずつ浅い鍼。背部から汗をかき始めお腹の冷え?がでてきたので、大椎(冷えていた)にかえてみる。大椎も冷えていたので浅鍼。背中から汗をかきはじめたので、いいかも、と思い金の留鍼を置いておいた。(温めたかったのと時間短縮)全身に汗をかき始めたので、右側を上に寝てもらう。問題の患部を触診。股関節からも熱気があがっていた。とりあえず下腿筋肉にそっての冷え、冷たい硬結が膀胱系?胆経?あたりに沢山あったので、大腿前後、下腿後、側面をていしんでゆるめる。患部の汗が浮き出てとまり、臀部につめたい硬結(押すと一番痛いと訴える)がでてきたので、ていしんと透熱灸で硬結をゆるめる。大椎と背部の冷え(陥下している)に温灸。さらに発汗。全身汗びっしょりになった。仕上げに脈を一応診て、商丘にちょっと鍼。修了。

<患者さんの感想>
腰がまがる、痛みが軽減とのことで、めでたしめでたし。足を冷やさないようにアドバイスして、2〜3日様子をみてもらうようにした。一週間後来院。痛みはだいぶない。治療後下腹部が少し痛んだ。腎結石がでそうと言う。
治療後から夜ぐっすり眠れるとのこと。朝のこわばりが引いたとのこと。股関節患部に熱はなく、冷えの硬結のみのこっていた。また同じように体をあたためる治療をして、患部はていしんで緩めるのみ。また大汗をかいた。その後も痛くなりそうになると来院。熱はもうなく、冷たい硬結がぽこぽこあるので、体を温めた後にていしん、透熱灸でゆるめるとよくなる。結果、次は他の箇所を治療要望。のんびり続けたいとのこと。一応、2週間ほど剣道はがまんするようお願いした。

臨床参考文献

<治療の方針>
標本病伝論(素問)→経脈(霊枢)是動病→所生病
病本   (霊枢) 本治法・標治法の話

<痛み>
挙痛論(素問) Q:急性の痛みはなぜ起きるか?そしてどうしてすぐ治るか?
        A:体が冷えると経脈や絡脈が縮みあがるから痛む。温めてやると楽になる。
        Q:痛くて按圧もできないものは?
        A:寒気が経脈中の陽気とぶつかり合い、経脈がいっぱいになるからだ。
         →実痛は局所で熱を持ち、脈動し、冷やすと気持ちがいい
風論(素問)  風邪による病症の話
痺論(素問)  痺病=風・寒・湿の3つの邪気が交じり合って人体に襲撃し、
周痺扁(霊枢) それによって営衛の気の循環が悪くなり(ものがつまる)発病する病。痺病の主な症状は痛みと腫れ。病因となる3つの邪気の強弱により分類される。
風痺(行痺)=風邪の強いもの・・・痛みが遊走する
寒痺(痛痺)=寒邪の強いもの・・・激しい痛み
着痺(湿痺)=湿邪の強いもの・・・痛む箇所が一定し、長引く。
経筋(霊枢)  経にそった筋のひきつり
雑病(霊枢)  腰痛のとき、局所が冷える場合は膀胱系と胃系を治療する。局所に熱感がある場合は肝系を治療する。前後に屈伸できない時は胆経を治療する。身熱があって呼吸困難が伴う腰痛のときは、ゆう泉、大鐘、委中を使うと良い。
寿天剛柔(霊枢)陰陽、外因内因の治療の話
刺腰痛扁(素問)治療経脈や経穴
難経22    是動病・所生病
難経28    奇経 陽?脈
難経29    奇経病症 陰?脈・・・股関節?
*だいたい腰下肢痛は経の病気のところに記載され、栄衛の気が風・寒・湿などの外邪に侵されてしまうとのこと。治療は太陽膀胱系や少陽胆経を治療すると良いとある。

<その他初心者治療の参考に・・・>
本蔵(霊枢)   基本の生理学
衛気(霊枢)   病気になるのは栄衛の気が陰陽どちらかの部位に片寄るから。その片寄りは12経脈の異常としてあらわれるが、あらわれる病症に虚と実、標と本がある。
百病始生(霊枢) 内因と外因の話し
営衛生会(霊枢) 営衛の気の生理
行鍼  (霊枢) ドーゼの話し
難経30・31・32・33  栄衛の気・三焦の話など
難経48  症の虚実