09-08/30 文京鍼研究会第一回公開講習会                
東洋医学を生んだもの 加藤秀郎

四千年以上前から中国大陸に受け継がれてきた医学
それを二千年前、前漢時代に「黄帝内経」としてまとめられたものが東洋医学の原典。
  黄帝内経は「素問」「霊枢」から成り後漢の終わりに「難経」が加わる。
素問は、東洋医学の基礎となる古代より受け継がれた自然観と病理観
霊枢は、経絡を中心にした鍼術
難経は、黄帝内経をさらに発展させた寸口脈の展開や人体メカニズムと治療の論理。

これらは漢王朝時代の400年間に編成され、その中心には陰陽論と五行論がある。
陰陽論と五行論は漢王朝時代に、世界把握のための方法として導入された。

実は古典というものは、特殊な事しか書かれていない。
何故ならまだ紙の無い時代、中国古典と呼ばれる全ては、木の板に書かれていた。
内容量が増えると書物自体が大きくなるため、当時の知っていて当然な事は省かれた。

つまり
二千年前当時の常識を読み解かなければ、
書かれている特殊な事の必要性が解らない
〜よって解釈が必要!!〜この
解釈こそが、鍼の研究そのもの

《もともと知らない二千年前の常識の、その上でさらに特殊な事》
これらの言葉だけを額面上で拾い集めて医学らしい形にしたものが、現代人が作ってしまったいわゆる{東洋医学}である。

だから呪術的で科学性の低い医学と思われてしまう。

えう

では《二千年前の常識》とは何か?

それが「天地人」である。

天は、
太陽の運行そのものであり地上全体に与える絶対作用
地は、
天の作用を受けた大自然全体の反応
人は、
地の大自然の反応の中で生きる有意識生命で、天の作用に対しての
「地と同じ反応」と「地と逆の反応」を〈生理として〉持つもの。
地と人は天に対しての

相対反応であるという事が、東洋医学の二千年前の常識の基礎となる。
天に対しての相対反応とは何か?

例えば太陽が空高くあり、天の作用は盛大となる。すると地は陽の反応をする。つまり気温は上昇し、草木は生い茂る。

この時に
人体は汗をかき体臭を多く放ち、皮膚は赤みを帯び放熱が増える。
〈体表〉は「地と同じ」{陽の反応}をする。
しかしその一方で代謝は低下して体温生産量は下がる。
〈体内〉は「地とは逆」の{陰の反応}をする。
}→

これを相対反応と言う。

何故逆の反応をするのか?

これは現代のホメオスタシスと同義で、仮に外気温が37度を超えれば、体温生産はほとんど止まるが放熱量は増える。
このことで外気が40度を超えたとしても、体内温度は37度に保たれる。

外気温が暑くても、内部の環境が外部の状態と適切ならば、健康は維持される。
体温生産量が減りすぎれば身体の機能は低下して重だるく風邪や下痢となる。
体温生産量が多ければ動悸や息切れや熱射病となる。

本来の東洋医学は、この人体の二重反応を

陰陽論と五行論という道具を使って、理論把握したもの

と言える。