09-12/20 基礎実技の体術 加藤秀郎

鍼治療を実技面で捉えた場合、その最も基礎となるものは姿勢です。

どんな分野でもそうですが、この鍼治療にも基本というものがあります。
基本を基本と決めたのには相応の理由があります。相応の理由とは目的です。
基本とは身体を効率よく動作させて、その分野の実技を的確に実行するための、誰にでも出来る手段を言います。その基本動作を支えるものが‘基礎’です。

左図が基礎となる姿勢を言います。

鍼治療の基本の目的は『患者との接触面にストレスを与えない』です。
それは切皮だけではなく、押手や取穴、切診時など、あらゆる場面での患者さんとの接触を含みます。
そのために姿勢を興し動作を整理して、施術に臨むわけです。


施術する場合

足は踵とつま先を平行にして、親指を軽く反らせて親指の付け根に重心を起きます。
この時に刺手側の足を5ほど後ろに下げた方が、施術動作が安定します。
腕は肘から軽く曲げて前腕を上前腸骨棘にかけます。手は垂れ下がり、指は軽く曲がって人差し指と親指は半円形の輪を形成しています。
この時に刺手は親指を人差し指の側面へとズラし、親指と人差し指の間に鍼の竜頭を挟みます。

図にある赤い星状のマークはいわゆる‘臍下丹田’と言われる位置ですが、校門をやや絞める様にしながらこの部分を軽く引っ込める様にすると、立位が安定します。
この「下っ腹に常に力を入れておく」というのが日本古来の身体動作の基本でした。これによって体の動きを安定させ、余計な力を使わずに、的確な作業が行えます。

かつて和服を着ていた日本人が、着衣を乱さずに武芸や伝統工芸、芸能や家事全般を行えたのは、自然な形でこの‘臍下丹田’に緊張を置いて、様々な作業に対応していたからでした。

←左図のように大きく脚を開いてバンザイをすると、今度は逆に立位が不安定になります。この姿勢は人身にとって、最もきちんと立っていられない状態です。それでも‘臍下丹田’に力を込めると、安定性が回復します。

「下っ腹に常に力を入れておく」状態を上手に作り出す要素として、骨盤内にある‘腸腰筋’という筋肉が重要です。この筋肉の動作を円滑にするための、ストレッチや鍛錬法があります。

鍛錬法とストレッチ

腰掛けた時に、尾骨の辺りに小さくたたんだタオルを敷いて座る。

腸腰筋の場所

大腿骨を引き上げながら、内転させる運動に関与しています。

腸腰筋の鍛錬

脚を大きく開いて腰を落とし、左右の膝とお尻が水平になる様にする。
そのまま上半身を垂直にして、左右に動かす。

これらのストレッチや運動法を行った後にもう一度、
最初の基礎姿勢をとると、不思議と自然に出来ます。