一難から九難(五難,八難除く)の陰陽解説
  

〜各難の陰陽が示す理由を解釈し,明確化することで,今後の応用的発展の補助とする〜

◆一難曰.十二經皆有動脉.獨取寸口.以決五藏六府死生吉凶之法.何謂也.
然.寸口者.脉之大會.手太陰之脉動也.
人一呼脉行三寸.一吸脉行三寸.呼吸定息.脉行六寸.人一日一夜.
凡一萬三千五百息.脉行五十度.周於身.漏水下百刻.榮衞行陽二十五度.
行陰亦二十五度.爲一周也.故五十度.復會於手太陰.寸口者.五藏六府之所終始.
故法取於寸口也.

漏水下ること百刻.榮衞,陽を行くこと二十五度.陰を行くことこれも二十五度.
の部分の陰陽ですが,この陰陽は,陽=昼 陰=夜 としました。これは
人一日一夜とあるためです。
榮衛が行くこととありますが,これはその作用が発せられる回数と解釈しました。
そして夏と冬では昼夜の時間が変わるのに,度数が同じという矛盾についてですが,
例えば夏の昼間は長く,さらに身体の昼的状態の方が長くなります(素問:四気調神大論篇)。この時は夏で陽が強いため昼の榮衛の作用が発せられる一回の濃度が濃いというイメージによる解釈です。そのため発せられるピッチが拡がって夏の昼が伸びたときでも同じ回数で対応できます。25という数字の数としての解釈です。数字その物の持つ意味についての解釈はしませんでした。

◆二難曰.脉有尺寸.何謂也.
然.尺寸者.脉之大要會也.從關至尺.是尺内陰之所治也.從關至魚際.
是寸口内陽之所治也.故分寸爲尺.分尺爲寸.故陰得尺内一寸.得陽寸内九分.
尺寸終始一寸九分.故曰尺寸也.

關から尺まで至る.是尺の内,陰之治める所也.  陰=関上から尺中もしくは尺沢
關から魚際まで至る.是寸口の内陽之治める所也. 陽=関上から魚際もしくは指先
関上を境にして指先までは陽の治める所,肘窩までは陰の治める所 としました。
陰得尺内一寸のT一UはT一白水星Uつまり人の中の陰的な生理作用
得陽寸内九分のT九UはT九紫火星Uつまり人の中の陽的な生理作用
を解釈の幅として数字その物の持つ意味を考慮しました。

◆三難曰.脉有太過.有不及.有陰陽相乘.有覆.有溢.有關.有格.何謂也.
關之前者.陽之動.脉當見九分而浮.過者.法曰太過.減者.法曰不及.
遂上魚爲溢.爲外關内格.此陰乘之脉也.
關以後者.陰之動也.脉當見一寸而沈.過者.法曰太過.減者.法曰不及.
遂入尺爲覆.爲内關外格.此陽乘之脉也.故曰覆溢.是其眞藏之脉.人不病而死也.

關之前は陽之動なり。脉は九分に当るところ浮が見られる。
決まりとして過ぎれば太過,減っていれば不及。.
魚へと遂上することが溢。この事を外關内格(外が閉じる,内が拒む).これ陰乘之脉。
關之後は陽之動なり。脉は一寸に当るところ沈が見られる。
決まりとして過ぎれば太過,減っていれば不及。.
尺へと遂入することが覆。このことを内關外格.これ陽乘之脉。
陽=上(浮),前(關之前者.陽之動),外 陰=下(沈),後(關以後者.陰之動),内
陽の場合は,浮が更に浮くと太過で陽。しかし陰は沈が更に沈むと太過で陰。
つまり陰陽各々の度合が進む事を太過,後退する事を不及。
外關内格は
関上の部を軸点として,内格つまり陰が強く陽を拒み外関つまり陽が弱くその作用を閉じている時には,陽の反応が魚際のほうへと押し上げられてしまう。=溢(あふれる)
内關外格は
関上の部を軸点として,外格つまり陽が強く陰を拒み内関つまり陰が弱くその作用を閉じている時には,陰の反応が尺沢のほうへと進み入ってしまう。=覆(ひっくりかえる)

◆四難曰.脉有陰陽之法.何謂也.
然.呼出心與肺.吸入腎與肝.呼吸之間.脾受穀味也.其脉在中.
浮者陽也.沈者陰也.故曰陰陽也.
心肺倶浮.何以別之.
然.浮而大散者心也.浮而短渋者肺也.
腎肝倶沈.何以別之.
然.牢而長者肝也.按之濡.擧指來實者腎也.脾者中州.故其脉在中.是陰陽之法也.
脉有一陰一陽.一陰二陽.一陰三陽.有一陽一陰.一陽二陰.一陽三陰.如此之言.
寸口有六脉倶動耶.
然.此言者.非有六脉倶動也.謂浮沈長短滑渋也.浮者陽也.滑者陽也.長者陽也.
沈者陰也.短者陰也.渋者陰也.所謂一陰一陽者.謂脉來沈而滑也.
一陰二陽者.謂脉來沈滑而長也.一陰三陽者.謂脉來浮滑而長.時一沈也.
所言一陽一陰者.謂脉來浮而渋也.一陽二陰者.謂脉來長而沈渋也.一陽三陰者.
謂脉來沈渋而短.時一浮也.各以其經所在.名病逆順也.

陽=浮,呼出心与肺.陰=沈,吸入腎与肝
一難の人一呼脉行三寸.一吸脉行三寸.呼吸定息.脉行六寸.に基づいて呼吸から脈の陰陽を考え現象のバリエーションをさらに3つづつに別けている。

◆六難曰.脉有陰盛陽虚.陽盛陰虚.何謂也.
然.浮之損小.沈之實大.故曰陰盛陽虚.
沈之損小.浮之實大.故曰陽盛陰虚.是陰陽虚實之意也

この難は陰陽に対して各々の盛虚という状態を表わしているため生理と解釈しました。
浮:軽く脈を診て損(勢力を小さくする)小,沈:重く脈を診て実大は陰盛陽虚 例:老人
浮:軽く脈を診て実大,沈:重く脈を診て損小は陽盛陰虚 例:子供

◆七難曰.經言.少陽之至.乍小乍大.乍短乍長.陽明之至.浮大而短.太陽之至.
洪大而長.太陰之至.緊大而長.少陰之至.緊細而微.厥陰之至.沈短而敦.此六者.是平脉邪.將病脉耶.
然.皆王脉也.
其氣以何月各王幾日.
然.冬至之後.得甲子少陽王.復得甲子陽明王.復得甲子太陽王.復得甲子太陰王.
復得甲子少陰王.復得甲子厥陰王.王各六十日.六六三百六十日.以成一歳.
此三陽三陰之王時日大要也.

四難で陰陽各々を3つに別けたものを一年の運行に配分し三陰三陽とした。

◆九難曰.何以別知藏府之病耶.
然.數者府也.遲者藏也.數則爲熱.遲則爲寒.諸陽爲熱.諸陰爲寒.
故以別知藏府之病也.

陽=数(外邪の侵入に対応する反応),腑,熱 陰=遅(正気の盛衰),臓,寒
諸陽とは浅層,陽の経絡,陽側,腑など。反応は数である。
諸陰とは深層,陰の経絡,陰側,臓など。反応は遅である。