H21.9月 新・東洋医学臨床論 澤田 和一

●五十肩 
(*東洋医学臨床論より)
この名称は、一つの病態を指す病名ではなく、40〜60歳代の老化変性を基盤として、病的変化が肩関節の一部の組織に限局することなく、周囲軟部組織(筋・腱・靭帯・関節包・滑液包など)に広汎に及んでくるいくつかの病態を総称する臨床的な症候名である。
臨床的には炎症と痛みの強い急性期と拘縮が現れる慢性期に分けられる。
臨床症状
肩関節の痛みと運動制限を主訴とする。障害組織によってペインフルアークサインやヤーガソンテスト陽性などがみられるが、病態の性質上所見は一定しない。
慢性期には外旋障害などの拘縮症状が著明になる。
治療方針
急性期は、傷害組織の消炎、鎮痛が主眼となる。慢性期ではそれに加えて、拘縮の進行を防ぐために循環改善をはかる。また、この期には積極的に運動療法を処方しなければならない。
処方例
肩?、肩?、巨骨、肩貞、臂臑
頚部や上肢帯からの関連痛も鍼灸によく適応する。また、胆嚢など内臓からの関連痛による肩関節痛は、原因疾患が軽症の場合は治療の対象となる。

東洋医学的な考え方
風寒湿の外邪が虚に乗じて肩部に侵入し、経絡気血の流れが悪くなると起こる。
また経筋は経絡気血の栄養をうけることにより正常な機能を営むことができる。
肩関節周囲は手陽明経筋が走行しており、風寒湿の外邪により関連する経絡の流れが悪くなると経筋にも影響し、これが改善しないと運動制限が起こる。

A)経絡型
これは経絡の気血の流れが悪くなり、気滞血?となり起こる。
主要症状
気滞の段階での疼痛は運動時痛が主体で、一定範囲であれば、自由に動かせることが多いが、それ以上の運動になると強い疼痛を自覚する。また血?が加わったものでは夜間痛が著明になる。運動制限は内旋と外転が主であり局部に多くの圧痛点を伴う。
治療方針
経絡の通りを改善し、気血の運行を促す。主として手陽明、手太陽、手少陽経穴を取穴し、鍼にて瀉法を施す。灸を併用する。
処方例
肩?、肩貞、肩?、曲池、外関

B)経筋型
これは気滞血?のために経筋の栄養が悪くなり、運動制限を主とする。
主要症状
運動制限が主であり、結帯(主に伸展、内旋)動作や結髪(主に外転、外旋)動作がすべて制限をうける。長期化して肩部の筋肉の萎縮が起こるものもある。
治療方針
気血の流れを促し、経筋の改善をはかる。主として手陽明、手太陽、手少陽経穴を取穴し、鍼にて瀉法を施す。灸や吸角を併用し、血行の改善と?血の除去をはかる。
処方例
肩?、肩?、肩貞、条口、陽陵泉
*風寒湿は痺病を起こす(素問 痺論)

●霊枢
經脉第十
爲此諸病.盛則寫之.虚則補之.熱則疾之.寒則留之.陷下則灸之.不盛不虚.
以經取之.

このしょびょうをおさむるに、さかんなるわ すなわちこれをしゃし、きょするわ すなわちこれをおぎない、ねつするわ すなわち れをとくし、ひゆるわ すなわちこれをとどめ、かんげするわ すなわちこれにきゅうし、さかんならず きょならざるわ、けいをもってこれをとる。

經筋第十三
治在燔鍼劫刺.以知爲數.以痛爲輸.

ちわ はんしんごうしにあり、しるをもってすうとなし、いたむをもってゆとなす。 

経絡治療の考え方

本治法
外因か内因かを分ける。
邪気実正気実は邪気弁証
邪気実正気虚は気血弁証を行う。
気血弁証では左右を考える。左は陽(あるいは気)、右は陰(あるいは血)。
陽病の場合は陰を用いて治す。陰病の場合は陽を用いて治す。

標治法
急性期は患部の炎症をおさめるために経絡上の遠隔部からの取穴を中心とする。
慢性期は患部の拘縮をやわらげるために督脈上の取穴を中心とする。

H21.10月

●アトピー性皮膚炎
1)現代医学的な考え方
I型アレルギー
IgEというタイプの免疫グロブリンが肥満細胞(マスト細胞)や好塩基球という白血球に結合し、そこに抗原が結合するとこれらの細胞がヒスタミン、セロトニンなどの生理活性物質を放出する。それにより、血管の拡張・透過性亢進などが起こり、浮腫、掻痒などの症状があらわれる。この反応は抗原が体内に入るとすぐに生じ、即時型過敏と呼ばれる。アレルギー性鼻炎、気管支喘息、蕁麻疹等。反応が激しく、全身に起こる場合には急速に血圧が低下するショックを来すこともある。これを、アナフィラキシーショックという。また、この種のアレルギー症状は、10分前後で現れてくる。

代表的な疾患としては、蕁麻疹、PIE症候群、食物アレルギー、花粉症、アレルギー性鼻炎、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アナフィラキシーショックがあげられる。

2)東洋医学的な考え方
発疹
東洋医学では肺は皮毛に合しており、衛気は体表をめぐっていることから、発疹は肺や衛気と密接な関係があるとしている。

A.分類
”熱による発疹
風寒による発疹
0澆亮焦による発疹
さし賣承による発疹

B.主な病証
A)虚症例<気血両虚による発疹>
(処方例)膈兪、脾兪、気海、血海、足三里
B)実証例(胃の湿熱による発疹)
(処方例)曲池、足三里、陰陵泉、血海、列欠

3)経絡治療の考え方
アトピー性皮膚炎は、体表と体内の気の交流が悪くなり、皮膚上に熱や寒が局在することにより発症する。

内因の本治法
内因とは、正気虚による病の発生を意味する。正気虚には上下、内外、左右のバランスのくずれがある。この変化が身体面に表れたものを外感、精神面に表れたものを内傷という。

上下とは、呼吸の変化であり、吸は腎肝、呼は肺心(脾)のバランスがくずれる。
内外とは栄養状態の変化であり、体表では肝が血を肺が津液を循環させ、体内では脾腎が栄養を維持する。左右とは、陰陽の調節機能の変化であり、肝脾は陽を盛んにし、肺腎は陰を盛んにする。

標治法
督脈上の木(亜門)は表面の熱を下げ、金(大椎)は体表の気を動かし、土(脊柱)は体内の気を動かし、水(陽関)は体内を暖める。

4)古医書の考え方
素問では、天の邪が体表の気血の流れを乱す。湿邪が津液の流れを乱す。水穀の邪が体内の寒熱を乱す。と説く。

霊枢では、陽邪は陽経脈から侵入し、経絡病(是動病所生病)を起こし、陰邪は陰経から六腑や五臓に入り、臓腑病となり、緩急・大小・滑渋の病変を起こす。と説く。

難経では、脈状診によって得られた所見に基づき、宗栄衛の調節をし、病の原因を解消する。

素問・霊枢は症状の病理を述べ、難経は原因を取り除く法則を述べている。

H21.11月 

●左肩こり
漢方医学における左右(素問陰陽応象大論より)
天不足西北.故西北方陰也.而人右耳目不如左明也.
地不滿東南.故東南方陽也.而人左手足不如右強也.
帝曰.何以然.岐伯曰.東方陽也.陽者其精并於上.并於上.則上明而下虚.故使耳目聰明.
而手足不便也.
西方陰也.陰者其精并於下.并於下.則下盛而上虚.故其耳目不聰明.而手足便也.
故倶感於邪.其在上則右甚.在下則左甚.此天地陰陽所不能全也.故邪居之.

てんわ せいほくにたらず、ゆえに せいほくほうわいんなり。
しかして ひとのみぎのじもくわ ひだりのめいなるにしかざるなり。  
ちわ とうなんにみたず、ゆえに とうなんほうわようなり。
しかして ひとのひだりのてあしわ みぎのつよきにしかざるなり。
ていいわく、なにをもってしかるや。ぎはくいわく、とうほうわようなり。
ようなるものわ そのせいかみにへいす。かみにへいすれば、すなわち かみめいにしてしもきょす。ゆえに じもくをしてそうめいならしめ、てあしをしてびんならざらしむるなり。
せいほうわ いんなり。いんなるものわ そのせい しもにへいす。
しもにへいすれば、すなわち しもせいにしてかみきょす。
ゆえに そのじもくわそうめいならず、しかして てあしわびんなり。
ゆえに ともにじゃにかんずるも、そのかみにあれば すなわち みぎはなはだしく、しもにあれば すなわち ひだりはなはだし。
これてんちいんようの まったきことあたわざるゆえんなり。ゆえに じゃこれにおるなり。

背部標治法の取穴法則
衛気反応には上下の法則
衛気の反応とは、通常とは異なる色沢やむくみの状態をいう。反応が下にあれば督脈の上方から、反応が上にあれば督脈の下方から治療点を取穴する。

榮気反応には遠近の法則
栄気の反応とは、こりである。こりの遠端部から治療点を取穴し、こりを小さくする。

榮血反応には寒熱の法則
栄血の反応とは、深部の寒熱の状態をいう。木(亜門)は熱を下げ、金(大椎)は気滞を動かし、土(脊中)は気血を動かし、水(腰関)は暖める。

本治法の弁証
尺膚所見
皮膚の涸燥潤沢 厚薄 硬軟 寒熱、汗腺の開閉
肌肉の硬軟 大小 寒熱
水分の貯留減少

外因と内因は季節との対応の有無で分ける。
外因外感 痛み 五主 寒熱
外因内傷 風邪 夏ばて 營衞 涸燥潤沢・汗腺開閉、肌肉硬軟

内因外感 肩こり
内因内傷 精神状態 アレルギー 体力低下

上下 皮膚の硬軟 寒熱
内外 大小
左右 皮膚の厚薄