2013-03/17 臨床座談会 "標治法"について
◆標本病傳論篇第六十五.(素問)
病の標本と刺すに逆従とは何か?と言う問いに、 内容を要約すると、病の状態(寒熱)が広がらなければ"本"で中満や煩心、小大(便)の不利などの症状が広がった場合、五臓の病み方の進行によっては"標"で治す。 |
黄帝が問いて曰く、病に標本が有り刺すに逆従が有るとは何か。
黄帝問曰.病有標本.刺有逆從.奈何.
岐伯が對(=対)して曰く、凡(一般)に刺の方は、必ず陰陽の別、相応の前後。逆從従を得て施すは標本の相移。
岐伯對曰.凡刺之方.必別陰陽.前後相應.逆從得施.標本相移.
故に曰く、
故曰.
其れ標に在れば標に於いて之れ求めるを有し、
有其在標而求之於標.
其れ本に在れば本に於いて之れ求めるを有す。
有其在本而求之於本.
其れ本に在れば標に於いて之れ求めるを有し、
有其在本而求之於標.
其れ標に在れば本に於いて之れ求めるを有す。
有其在標而求之於本.
故に治は標を取って得るが有れば、本を取って得るが有り、
故治有取標而得者.有取本而得者.
逆を取って得るが有れば、従を取って得るも有る。
有逆取而得者.有從取而得者.
故に逆與(と=&)従を知り、正行すれば無問。
故知逆與從.正行無問.
標本を知るは、萬擧萬當(=百発百中).標本を知らぬは、是れを妄行(=出鱈目)と謂う。
知標本者.萬擧萬當.不知標本.是謂妄行.
夫れ陰陽、逆従、標本の道を爲すなり。小にして大。一にして百病の害を知ると言える。少にして多。浅にして博。以って一で百を知ると言うが可なり。以って浅くして深く知り、近いもので遠くを知るを察する。標與(と=&)本と言う。易にして及ばず。
夫陰陽逆從.標本之爲道也.小而大.言一而知百病之害.少而多.淺而博.可以言一而知百也.以淺而知深.察近而知遠.言標與本.易而勿及.
治が反せば逆を爲し、治を得れば従を爲す。
治反爲逆.治得爲從.
先病にして後逆なるは其の本を治し、先逆にして後病なるは其の本を治す。
先病而後逆者.治其本.先逆而後病者.治其本.
先に寒して後に病が生ずれば其の本を治し、先に病みて後に寒が生ずれば其の本を治す。
先寒而後生病者.治其本.先病而後生寒者.治其本.
先に熱して後に病が生ずれば其の本を治し、先に熱して後に中満が生ずれば其の本を治す。
先熱而後生病者.治其本.先熱而後生中滿者.治其標.
先に病みて後に泄するは其の本を治し、先に泄して後に他病を生じれば其の本を治す。必ず之れを調し乃(=そうして)其の他病を治す。
先病而後泄者.治其本.先泄而後生他病者.治其本.必且調之.乃治其他病.
先に病みて後に先の中満は其の標を治す。先に中満して後に煩心するは其の本を治す。
先病而後先中滿者.治其標.先中滿而後煩心者.治其本.
人に客気が有り同気が有る。小大(便)の不利は其の標を治す。小大(便)の利は其の本を治す。
人有客氣.有同氣.小大不利.治其標.小大利.治其本.
病発にして有余、本にして之れ標。先に其の本を治し後に其の標を治す。
病發而有餘.本而標之.先治其本.後治其標.
病発にして不足、標にして之れ本。先に其の標を治し後に其の本を治す。謹みつつ間甚を察すれば以って之の調を意するは、間は并(へい=二つ)行、甚は独行。先に小大(便)の不利にして後に病を生むは其の本を治す。
病發而不足.標而本之.先治其標.後治其本.謹察間甚.以意調之.間者并行.甚者獨行.先小大不利而後生病者.治其本.
夫の病の伝わりは、
夫病傳者.
心病は先に心痛し、一日而(して)咳、三日は脇が支(さしさわる)痛み。五日は閉塞して不通、身(動作時)は痛く體(静止時)は重く、三日して不已(已むざれば-治らなければ)死し、冬は夜半、夏は日中。
心病.先心痛.一日而咳.三日脇支痛.五日閉塞不通.身痛體重.三日不已死.冬夜半.夏日中.
肺病は喘咳(ぜんせき)し、三日而(して)脇が支(さしさわる)満痛。一日は身が重く體が痛く、五日而(して)脹る。十日して不已(已むざれば-治らなければ)死し、冬は日の入に、夏は日の出に。
肺病.喘咳.三日而脇支滿痛.一日身重體痛.五日而脹.十日不已死.冬日入.夏日出.
肝病は頭は目眩し脇が支(さしさわる)満。三日は體が重く身が痛み、五日而(して)脹る。三日は腰脊と少腹が痛み脛が痺れる。三日して不已(已むざれば-治らなければ)死し、冬は日の入に、夏は早食(朝食?)に。
肝病.頭目眩.脇支滿.三日體重身痛.五日而脹.三日腰脊少腹痛.脛痺.三日不已死.冬日入.夏早食.
脾病は身が痛く體が重い。一日而(して)脹り、二日は少腹と腰脊が痛み脛が痺れる。三日は背(肉)筋痛して小便が閉じる。十日して不已(已むざれば-治らなければ)死し、冬は人定(人の寝静まる時刻)、夏は晏食(遅い食事-夕食)。
脾病.身痛體重.一日而脹.二日少腹腰脊痛.脛痺.三日背(肉)筋痛.小便閉.十日不已死.冬人定.夏晏食.
腎病は少腹と腰脊が痛み(脛)が痺れる。三日は背(肉)筋が痛み小便が閉じる。三日は腹が脹る。三日は両脇が支(さしさわる)痛み。三日して不已(已むざれば-治らなければ)死し、冬は大晨(晨=朝、すっかり朝になった頃)、夏は晏(日+薫)(遅い飯の支度=夕飯の準備の頃)。
腎病.少腹腰脊痛.(脛)痺.三日背(肉)筋痛.小便閉.三日腹脹.三日兩脇支痛.三日不已死.冬大晨.夏晏(日+薫).
胃病は脹満。五日に少腹と腰脊が痛み(脛)が痺れる。三日は背(肉)筋が痛み小便が閉じる。五日は身體が重い。六日して不已(已むざれば-治らなければ)死し、冬夜半後.夏日(日+失).
胃病.脹滿.五日少腹腰脊痛.(脛)痺.三日背(肉)筋痛.小便閉.五日身體重.六日不已死.冬夜半後.夏日(日+失).
膀胱病は小便は閉し、五日に少腹が脹り腰脊が痛み(脛)は痺れる。一日は腹が脹り、一日は身體が痛む。二日して不已(已むざれば-治らなければ)死し、冬は鶏が鳴くころ、夏は下(名詞の上に付いて「準備のための」)(日+薫)(名詞の支度の事前準備)。
膀胱病.小便閉.五日少腹脹.腰脊痛.(脛)痺.一日腹脹.一日身體痛.二日不已死.冬鶏鳴.夏下(日+薫).
諸病を以って次へと是れ相伝す。如く是れは皆が有が死期。不可なる刺す。間なるは一藏で止まり、及び至るは三か四の藏は乃(=そうして可なる刺す也。
諸病以次是相傳.如是者.皆有死期.不可刺.間一藏止.及至三四藏者.乃可刺也.
◆ 病本第二十五 (霊枢)
先に病みて後に逆するは其の本を治し、先に逆して後に病むは其の本を治し
先病而後逆者, 治其本, 先逆而後病者, 治其本,
先に寒して後に病が生ずるは其の本を治し、先に病みて後に寒が生ずるは其の本を治し、
先寒而後生病者, 治其本. 先病而後生寒者, 治其本.
先に熱して後に病が生ずるは其の本を治し、先に泄して後に他病の生ずるは其の本を治し、必ず之れを調し乃(=そうして)其の他病を治す。
先熱而後生病者, 治其本. 先泄而後生他病者, 治其本. 必且調之, 乃治其他病.
先に病みて後の中満は其の標を治し、先に病みて後に泄するは其の本を治し、
先病而後中滿者, 治其標. 先病後泄者, 治其本.
先に中満して後に煩心するは其の本を治し、客気が有り、同気が有り、大小便が不利するは其の標を治し.大小便が利するは其の本を治す。
先中滿而後煩心者, 治其本. 有客氣有同氣, 大小便不利, 治其標. 大小便利, 治其本.
病発にして有余、本にして之の標。先に其の本を治し後に其の標を治す。病発にして不足、標にして之の本。先に其の標を治し、後に其の本を治す。謹んで詳しく間甚を察すれば、以って之の調を意するは、間は并(へい=二つ)行、甚は独行。先に小大(便)の不利にして後に病を生むは其の本を治すなり。
病發而有餘, 本而標之, 先治其本, 後治其標. 病發而不足, 標而本之, 先治其標, 後治其本. 謹詳察間甚, 以意調之, 間者并行, 甚為獨行. 先小大便不利而後生他病者, 治其本也.
"難経"には"標本"の記載は有りません。似た様なのでは"根本"と言うのが多く有ります。 |