- 何か症状を自覚した人は、医療機関に治療を求めます。そしてその症状が起こるには必ず原因があります。このときに患者は症状の軽減を願い、医療機関は原因を探って病気の駆逐を目指すという双方の立場が存在します。
- ところが医療機関がいくら原因を探ろうととしても、今時の病というのはなかなか簡単には原因の限定をさせてくれません。それでも急性的な感染症でしたら原因菌というものがありますが、生活習慣病や自律神経の乱れ、精神科や婦人科的な疾患は原因が多岐にわたるため不明瞭なのです。こういった原因が不明瞭な病は、食生活の乱れやストレスや過労が元になっているといえます。
- しかし菌を駆除して休んでいれば完治する感染症とは違って原因を断定しづらいタイプの病は、症状の微細な軽減に一喜一憂する慢性病という扱いで、長い通院生活を余儀なくされます。なぜなら現代医療の機関で定める病名というのは、症状を中心に診断されたものだからです。たとえば最近疲れやすいといって受診したところ、血圧が高いと診断されだるいのは高血圧だからということになります。高血圧の論理的原因は塩分の過多と運動不足ですが、無理な運動や減塩食がストレスとなって、なかなか状態が改善されません。そのため降圧剤の服用をしつつ長期通院となります。
- そして論理的原因ではなく本来の原因は、体質や生活習慣など多岐に及んでいて個々それぞれが違います。
- そうなると対応方法が無くなるので、医療機関の意義を残すために自覚症状を減らして、苦痛の極力少ない生活を送れるように施すのが、対症療法です。対症治療は症状そのものの軽減を中心に、その症状を起こさせている原因の駆逐が含まれます。代表的には投薬療法で麻酔やステロイドや抗神経薬などですが、依存性が高く体にも耐性がつきやすいという点があります。
- 我々鍼灸師は薬品の取り扱いができませんので、鍼を使った施術で患者の不快症状と向き合わねばなりません。そういったときに社会から鍼治療へと託された疾患のほとんどが「整形外科的疾患」つまり骨格系の症状です。主に関節の痛みや運動の不具合、痺れや重さや違和感です。最近ではアレルギーや更年期障害、高血圧の様な生活習慣病で鍼治療を受ける人も多くなってきました。現代医学の認識ですと投薬しかない様ですが、鍼の場合は病体そのものに向き合うことができます。
- ですが分かり易さのため、対症治療を骨格系に限定して解説します。また、骨格系に限定した理由はもう一つあって「なぜ痛む箇所に直接鍼を刺入する治療をしないのか?」に答えるためです。
- 痛む箇所に鍼を刺しても対症療法にすらならないという現状を理解してもらいます。
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