今回の発表では、以下の点を述べていきます。


1・難経五三難に記載の七伝(次伝)と間臓の伝変の違いを理解する ーー 相剋伝変と相生伝変の違い。


2・素問や霊枢と難経では、病伝に違いがある ーー

邪の伝変については、素問の玉機眞藏論篇第十九や

標本病傳論篇第六十五および霊枢の病傳第四十二にも記載があるが、難経のそれとは内容を異にする。

素問や霊枢では相剋伝変が基本で脾胃や腎や膀胱、心に伝わり死ぬとする。臓腑病における臓腑間の伝変を説く。

難経では、相剋伝変は予後不良、相生伝変は良しとしている。間臓伝変は難経が初出。

五四難が臓腑段階の病症、五三難はそれ以前の気血段階の病症における予後の良不良である。


3・三焦論を基礎とした難経の外因・内因それぞれの病症展開を理解する ―― 

三難から一六難に外因とその病症展開が書かれ、四八難から六〇難に内因とその病症展開が述べられている。


外因由来の病症は、気(是動)から血(所生病)へと進むと二二難に記載があります。そののちは、臓腑へと邪気は進みます。

四なんは気、五難・六難は血の病症です。九難は臓腑(肉体と精神)の病症、ここまでが邪気と正気が抗争して進みます。

血の病症における脈診と尺膚や五役の変化と、予後判定が一〇難と一三難に記載されています。


臓腑の段階で正気が虚して、病症が進むと死の段階として一四難・一五難一六難の五臓六腑の病症へと進みます。


また、四九難では、正経自病の精気虚により邪気が生まれます。これが五邪です。病因の成り立ちから内因由来の邪気です。

5邪は、正気の虚に乗じて肝・心・脾・肺・腎のいずれかに宿り、病症を起こすとしています。ここでいう肝から腎は臓腑ではなく、肺(気)・心(栄衛)・脾(栄)・肝(血)・腎(精)です。


また、五〇難では、正気虚が続くと、他の五邪それぞれから邪気を受け、病症が五主・五役を超えて広がることを述べています


五一難・五二難では臓腑(肉体と精神)の病症があり、五五難から六〇難には、五臓六歩の病症が述べられています。



外因由来の病症は気から血(表から裏)そして臓腑へと進む。

内因由来の病症は、気または血から臓腑へと病症が進む。

。それらの進行には邪気と生気の抗争が関わる。

あ①邪気実と生気実 ―― 外因由来の病症展開は、邪気と生気が気の段階で抗争し、さらに血の段階でも邪正の抗争へと進む。生気が勝れば邪気は衰え治癒する。=予後良

内因由来の病症では、傷寒は気、傷暑は栄衛、の流れ(いずれも気に分類される)、飲食労倦は栄、中風邪は血、中湿は精(これらは血に分類される)の状態に病症が起こる(五難、一四難を参考に)。病症が他に移動せず、当該病症内で邪正抗争である寒熱の病症が推移すれば予後は良。


②生気虚し邪気実 ―― 正気虚では、病症の起こる部位を、気(肺)・栄衛(心)・栄(脾)・血(肝)・精(腎)と分類する。

内因の病症展開では、生気虚により病症が気・栄衛・栄・血・精に脈絡なく起こり、激しい抗争はないものの、邪気ははびこり、すべてに広がり、やがて重篤化する。=予後不良

外因の病症展開では、臓腑から五臓六腑病へと進む最終段階が正気虚である。



4・七伝(次伝)は相剋伝変し、一臓は再びは破れずとする病症と、間臓は相生伝変して終わりてまた始まり環の端なきがごとしの病症展開は異なる ――


五三難と五四難は、前後の難の関係から見て、内因の邪気による、病症の展開を論じたものと考える。


間臓伝変は邪正抗争の結果としての回復、治癒としての終わりてまた始まるである。例えば、陽の病が陰に進み、陽に戻って治癒する。あるいは春に得た病が、秋冬には悪化するが、春になって治癒する。正気実により、病症が進まなければ、昼夜や四季の巡りによる旺気の助力を得て、病は回復に向かう。


七伝は正気虚による病症の悪化であり、相剋相生の伝変の仕方に関わらず重症化する病症展開である。正気虚が続くまたは他の正気虚が加わることにより、病症は五主全体に広がり、すべてが病むことが、一臓は再びは破れずである。七伝は正気虚を伴う点において、予後不良である。

五行の伝変は例示の一つとして考える。