古典研究2017年2月
正治法と反治法

正治とは疾病に対して、相対する性質の治療を行なうことである。病因や病状と相反する働きを行う治療法であり、その治療の方法と症状とが対照的であるので「逆治」とも言う。
反治とは、病因や症状と同じ性質の治療を行う方法であり、「重治」ともいう。

正治と反治については、古医書の中でも、随所に記載されている。
病因の面に関していえば、「寒なるは之を熱し、熱なるはこれを寒し、客なるはこれを除き、労なるはこれを温め、その実なるは散じてこれを瀉す」などは、正治法であり、また、「寒して熱きものは陰を取り、熱して寒きものは陽を取る」は反治法である。
症状の面に関しては、「堅ければこれを削り、結べばこれを散じ、留まればこれを攻め、散ずればこれを収斂し、驚けばこれを静め、荒れればこれを按じ収める」などはみな正治法である。また、補塞に働く薬物を用いて、便秘・無月経など閉塞の症状を治療する塞因塞用や、通利薬を用いて通利の病証を治療する通因通用などはみな反治法である。

『難経』では、病因とは、栄衛の失調であり、「衛」の防衛の働きの異常を外因とし、「栄」の内部環境維持の働きの乱れを内因としている。外因は、邪気実であり、太過の状態である。内因は、正気虚であり、不及の状態である。
外因と内因では、その成り立ちから進行段階までが異なっている。このため、その病体を改善、解消する本治法においても、基本的な方針は異なる。
すなわち、「衛」の異常である外因の邪気実に対しては、邪気を抑制するために対立の治療である「正治法」を行う。陰の病証に対しては生体の陽の働きを用い、陽の病証に対しては生体の陰の働きを用いて、邪気実を抑制するものである。
「栄」の乱れである内因の正気虚に対しては、正常な状態を回復させるために、同種の治療である「反治法」を用いる。陰の病症に対しては生体の陰の働きを用い、陽の病証に対しては生体の陽の働きを用いて、失調状態である正気虚を、本来の状態に回復させるものである。

病因には内外の別があり、病機には上下・内外・左右の展開がある。