20176月古典研究

難経七十六難、七十七難


病は、陰虚から始まり、陽実が起こり、陽虚そして陰実へと進む。

陰虚とは、病因の発生であり、「本治法」の対象となるものである。

陽実・陽虚・陰実が、病因によって引き起こされた病機すなわち病症と症状であり、これが「標治法」の対象となるものである。


七十六難の「衛」とは、外円の対外栄衛であり、そこで起こった病因の発生に対しては、補うという解決法(本治法)で不和を改善する。

「栄」とは、内円の体内栄衛であり、そこに起きた病症に対しては、瀉という解決法(標治法)で乱れを調える。


内円で起こる病機の最初は、陽実であり、その病態には、上下・内外・左右がある。

・気・血・津液による体温維持 = 上下病証 =

・三焦の原気(五主の栄養) = 内外病証 = 形

・代謝量の増減(日内リズム) = 左右病証 = 質

この段階は、浅層の「気」の乱れである。これに対しては、陰陽のバランスを調える。


病機は生気が虚して三焦(臓腑)の機能が低下する陽虚となり、さらにメンタルが病む陰実へと進む。これらはともに、深層の「気」の乱れである。これに対しては、三焦の栄衛と、七情を調える。


病機全体としては、初期の「陽実」として上下・内外・左右の各病証があり、そこから正気が虚して臓腑の機能が低下する「陽虚」の段階である三焦病証となり、さらにメンタルに病機が表れる「陰実」の段階である七情病証へと進む。

そのことを理解して、正気の虚が起こらないように、ドーゼや選穴において考慮し、早めに手を打っておくことが未病治であり、七十七難の述べるところである。









栄衛三焦論の特徴


①二重の円の構造


②対外栄衛と体内栄衛


③気・形・質概念に基づく生理学


④栄衛の働きと三焦の作用の関わり

自然界の一部である人の生命活動は、「栄」と「衛」の働きとして表現されるが、それを行う主体が「上・中・下三焦」である。「栄」「衛」それぞれの働きには、「三焦」の各作用が関わる。

「対外栄衛」を行う主体は「宗・栄・衛」の作用であり、「体内栄衛」を行うものは「宗気・栄気・衛気」の作用である。また、「宗気・栄気・衛気」は臓腑としての三焦を維持する。

「上焦」は「宗」と「宗気」を主り、「中焦」は「栄」と「栄気」を主り、「下焦」は「衛」と「衛気」を主る。


⑤作用と五臓の関係