[腰痛症の考え方] 小山 昇 99-2/21

【はじめに】
 腰痛(low back pain)とは人類が二足歩行をはじめてから宿命的愁訴である。原因となる局所病態によっては腰部のみならず下肢痛も同時に訴える。

【腰痛の原因】
腰痛症の原疾患としてはさまざまなものがあるが、臨床症状で分類されたもので、屈曲型腰痛と伸展型腰痛がある。その名の通り屈曲型腰痛とは屈曲させたときに主に痛みを生じるもので、伸展型腰痛は腰椎を伸展(前彎)させたときに痛みを生じるものである。

【腰椎の解剖】
以下の腰椎に付着する筋・靭帯等、アライメント的に問題を生じる関節等は腰痛を考える際に常に念頭にいれておくべきであろう。
1. 骨:5つの椎骨
2. 筋:腹側(腹直筋、腹斜筋、腰筋)、背側(脊柱起立筋・腰方形筋など傍脊柱筋(多裂筋、棘筋、最長筋)、大殿筋)
3. 椎間板
4. 靭帯:前縦靭帯、後縦靭帯、黄色靭帯など

【屈曲型腰痛】
 主たる原因しては腹筋背筋のアンバランスが原因で腰椎が屈曲位をとることで痛みの原因となる。以下に各論としての原因を列挙する。
1. アライメント異常:股関節膝関節
2. 背筋力の低下および前縦靭帯等の緊張
3. 魚椎変形(骨粗鬆症などによる)

以上のような理由で背筋の働きにくい環境、腹背筋のアンバランス、腰椎のマルアライメント等を引き起こし、実際痛みとして生じている。
具体的には背筋強化と、拮抗筋としての腹筋強化、前面の緊張をとることが考えられる。
因みに、理想の筋肉のバランスは腹筋と背筋が1対2程度がよいとされている。

【伸展型腰痛】
 屈曲型腰痛と同様腹背筋のアンバランスではあるが、原因が股関節にあり、立位等をとることで、二次的に生じるものも少なくない。
1. 股関節屈曲拘縮
2. 背筋群、傍脊柱筋、背側の靭帯の過緊張
3. 腹筋の弱化
4.殿筋の弱化
臨床でもよく出てくるのはこの手の腰痛が多いと思われる。
Williamの腰痛体操はこの腰痛に対し考案されたものである。先述したとおり腹背筋の強化と、背筋群のストレッチ、加えて腸腰筋のストレッチ等が有効である。

腰痛症は生活習慣も多くかかわってくるので生活指導よく考えなくてはいけないポイントである。
それに関しては別項を参照いただきたい。