津液

体液の総称で飲食物から作られると考えます。平では脈内の血と組織の間を仲介し組織を潤しています。津と液に分類します。

生理的機能

T津Uは が祖形,(しん)が正字です。は辛器(針)で皮膚を刺し津液のにじみ出る形です。この場合の津液とは,体液以外に入墨のさいの墨も示します。皮膚からにじみ出た体液は,今でいうリンパ液や組織液なため,澄んで粘り気のないこと,体表に侵出しやすいことから陽性の水分と考えます。その機能は体表分を潤し体温の調節に関与しています。陽性なので汗や尿となって体外に排出されます。

T液Uは が祖形,正字は(えき),その祖形はで風雨に曝されて分解した獣屍の形です。
 は穀類が発酵して酒になっていく状態で,濁って粘り気が有るため,陰性の水分を仮称します。
おそらくは消化官内容物から拡大解釈したものと思われます。
人体においては体内をゆっくりと流れ目,鼻,口などの粘膜や骨や髄を潤します。
陰性ですので,平では体外侵出されません。

実際には体液全体の総称として,ひと括りに津液といいます。気血の作用によって形成されると考えます。その働きも気血との対応で,気血が邪を受ければ,相応の病理反応を示します。つまり気血の生理と病理が解っていれば,津液を知らなくても治療は可能ですが,病体そのものを捉えきる事に片寄が生じます。汗や鼻汁や尿など事象として体液があるためそれが如何なるものなのか知っておくことが,より踏み込んだ医療を展開できます。

三焦と津液の関係

津液は飲食物から作られるとされ三焦と関係が存ると思われます。三焦は生理機能はあっても,その実体は存りません。難経三十一難では三焦の働きを水穀の流れに絞り以下のように書かれています。

◆三十一難曰.

三焦者.何稟何生.何始何終.其治常在何許.可暁以不.

三焦とは何を受け何を生じ,何処で始まり何処で終わり,常に治めているのは何処かということを明らかにできるのか?

然.三焦者.水穀之道路.氣之所終始也.

三焦は水穀の道路で気の終始するところ。

上焦者.在心下下膈.在胃上口.主内而不出.其治在  中.玉堂下一寸六分.直兩乳間陷者是.

上焦は心の存る下の横隔膜の下,胃の上口に存る。主に内に納め出さない様にしている。
治は  中に存る。玉堂の下一寸六分,両乳間の陥没したところ。

中焦者.在胃中  .不上不下.主腐熟水穀.其治在齊傍.

中焦は胃の中  にあり,上にも下にも送らず,主に水穀の腐熟をし,治は齊傍に存る。

下焦者.當膀胱上口.主分別清濁.主出而不内.以傳導也.其治在齊下一寸.

下焦は膀胱の上口にあたり,主に清濁の分別をし出す事をして内に入れない。よって伝道なり。
治は臍下一寸にある。

故名曰三焦.其府在氣街.

ゆえに名を三焦といいその腑は気街(実体の無い世界)に存る。

京都大学人文科の山田慶兒教授によると上中焦は胃の働きそのもので,下焦の<主分別清濁.主出而不内.以傳導也>は,大腸の排泄機能以外に経脈への伝道として,小腸の栄養吸収も含むと解釈されています。

しかし『三焦』という言葉が最初に出てきたのは「史記」の“扁鵲伝”で『三焦膀胱』とひとつづきに用いられていました。そしてその痕跡は「黄帝内経」にも見られます。特に“霊枢”の伯高が答えている項目は,伯高学派が唱えたものの編纂で人体解剖の成果の上で呼吸・消化・循環の生理学の構築へと向かったことがうかがえます。