「陰陽」加藤弘之

生理

 陽の性質は動に属し、陰の性質は静に属し、陽は体表を守る能力を有し、陰は内部の精気を守る作用を有している。
 故に生理においては、陽は体表・皮毛・肌肉・筋骨などを代表し、陰は体内の臓腑を代表し、その中でも五臓が精気を蔵することを司るのを陰となし、六腑が消化伝動を司るのを陽となす。
 位置の上から分けると、上焦は陽、下焦は陰、外側は陽、内側は陰とする。
 物質と機能の上から分けると、血は陰、気は陽、体は陰、作用は陽とする。

病理

発病の部位と性質に基づき、
表症は陽に属し、裏症は陰に属し、
熱症は陽に属し、寒症は陰に属する
と区別する。
 全て機能の衰弱は陽の不足となし、物質の損失は陰の不足である。
 それで、一般症状は、四つの類型すなわち陽虚・陰虚・陽盛・陰盛に分けられる。
陽虚の外面には寒の現象があり、
陰虚の裏面には熱の現象があり、
反対に
陽盛の外面には熱があり、
陰盛の裏面には寒がある。
 概括的にいうと、全て高進的な亢奮的熱性的傾向を持ったものは陽症であり、衰弱的潜伏的寒性的な傾向をもつものは陰症である。

診断

脈診 : 浮沈・遅数・滑渋
浮数滑は陽に属し、
沈遅渋は陰に属する。

治療

表証は汗法を
裏証は下法を
寒証は温法を
熱証は涼法を
用いる。
 これは陰陽の意義をふまえての方法である。
陽が勝てばすなわち陰病であり、
陰が勝てばすなわち陽病となる。
陽が勝てばすなわち熱、
陰が勝てばすなわち寒、
 寒が重なれば熱症を表し、熱が重なれば寒症を表すのである。

中医学的アプローチ

 陰陽(体温)調節
 心(火)と腎(水)の作用により体温を維持
腎水(腎陽・腎陰)
心火(心陽・心陰)

まとめとして

 体温調節をはじめとして生態の生理反応は、二つの内臓の相互作用によることが考えられ、また、その本来の性質に対して促進的抑制的調節作用が各々にあることを認識できる。(五臓の中に陰陽)
 五臓を五行に囚われず、二つの臓の間の陰陽関係で見る。(陰中の陰・陰中の陽など)
 陰陽という言葉を重ねて使うとどうしても混乱しやすいものである。陰陽の整理のためにその中で五行を陰陽の表現として用いることを推奨したい。