平成12年1月16日 [臓腑学説] 相原 黄蟹

総論

留意点
漢方医学における臓腑学説とは、西洋医学における臓器の整理機能とは似て非なるものであると考える事が望ましい。
臓腑学説を秩序立ててその構造を理解するためには、五行と陰陽を持って整理しておく事が必要である。
 
階層
人は、天と地の恵みによってその生命を育まれており、それぞれ共通の属性を持った因子によって構成されている。
その因子とは、五行であり、天においては「風熱湿燥寒」であり、地は「酸苦甘辛鹹」であり、それらを受け入れるのが人の「肝心脾肺腎」である。

構造

五臓は、すべての生命現象の根幹を成しており、それぞれの属性に厳ずいたユニットやネットワークを構成している。
古代中国における世界観として、独立した固体は社会構造も人体も同じシステムワークとして機能していると捉えており、臓器をその機能から中国における政府器官の名称を当てることで、象徴的に理解することが出来るようになっている。
それぞれの臓の中心に位し、最も基本となる性質能力を再現すのが、「七神」と呼ばれる「魂神意知魄精志」であり、天と地の恵みを得て種々の生理機能を営むことができるのである。
人は、移り変わる季節に順応すべく、その整理機能を調整変化する目的から各季節に適応した臓が主体となって活動する。
五臓は、それぞれに陰陽関係にある消化管を、主とした六腑と表裏という形で結ばれている。
臓とは、文字どうり収めしまいこむ意味であり、形態は変化せず中身の詰まった実質臓器としての意味も備えている。
それに対して腑は、者が出入りを繰り返す入れ物であり、中空の消化管と胆嚢と膀胱がこれにあたる。
機能的見地から、臓腑の総合機能を意味する三焦をもう一つの腑として、また心臓の防衛と機能代行する心包の臓を加え論じられるテーマによって、その数は変化する。
各臓腑間や全身の組織器官の隅々まで,経絡という血気の流れるネットワークによって,有機的に結ばれている。
臓は勿論の事、その支配化における機能:組織:器官のすべての領域を、人体の構成要素である“血”と“気”によって類別し、その階層構造によって生理現象が営まれているのである。
例えば、食べ物は「気」体内に取り入れると「血」:腎は「少血多気」:肝は「多血少気」:神を生むのは「血」:働きの元となるのが「気」と位置や役割:他社との関係などによって様様にそのなを変えるので何に着眼しているかを常に注意することが大切となってくる。
この階層構造は、五行の式帯表を目的別に整理する事によって容易に理解することが出来る。

臓腑の支配領域

ここでは、五臓についてのみ論述する事にする。

1 七神{五精}‐臓の中心に位し、すべての生命現象の性質や特徴{注1}の根幹を成す。

{注1} 木火土金水の順に記す。
正気{本能}‐正直:升発:温厚:英明:内明
性質{性状}‐柔和:急速:和順:豪勁:流下
作用{機能}‐曲直:燔灼:高下:散落:流溢
化成{変化}‐生栄:蕃茂:豊満:収斂:堅凝

2 五官{将軍:君主:倉禀:相傅:作強}‐五臓が果たす役割や目的を官職名で表したもの。
対外‐防衛:外交:貿易:行政:教育
対内‐治安:統治:流通:法務:伝承
 
3 機能
血‐六基{精気血脈津液」に直接関る仕事:防衛‐血流‐栄養‐換気‐精殖
気‐精神活動に関る仕事‐怒:喜:憂思:悲:恐驚
 
4 目的別
@受納‐五幹
気‐情報‐目‐光{五色}‐肝、耳‐音{五音五律}‐腎
血‐栄養‐鼻‐五香‐肺、舌{口}‐五味‐心{脾}
A能力{栄養状態}
気‐五主{筋脈肉皮骨}‐対外的作業材料としての栄養‐常に変化する財布の中身のようなもの
血‐五華{爪面唇息髪}‐内部的作業環境保全のための栄養{正気}‐比較的安定した預貯金のようなもの
B機器
外‐運動:言語:消化:呼吸:排泄
内‐防衛{血流料調整:体温調整:免疫}:神明{循環器を通じて四臓を支配する}:栄養{生成:保管:配布:決の成分調整}:気化{全身各所の働きとなる気を配布する}生殖{先天の精と後天の精貯蔵}
C発揚‐五役{色臭味声液}‐五臓の活動状況が現れる。
○五色{青赤黄白黒}‐体表面に現れる。
○五臭{燥焦香腥腐}‐体臭:口臭
○五味{酸苦甘辛鹹}‐欲する食味
○声‐五声{呼笑歌哭呻}‐しゃべり方:五律{牙舌喉歯唇}‐どこを主に用いて発音をしているか。
○五液{涙汗涎涕唾}‐作用を補完する体液