補助資料

介護保険と鍼灸マッサージ

 平成12年4月より施行となりました介護保険では、要介護者・要支援者と認定された人たちに対し、次のようなサービス提供がなされます。

 1.訪問介護
 2.訪問入浴
 3.訪問看護
 4.通所介護(デイサービス)
 5.通所リハビリテーション(デイケア)
 6.短期入所(ショートステイ)
 7.訪問リハビリテーション
 8.訪問診療
 9.訪問歯科診療
10.訪問薬剤管理指導
11.住宅改修
12.福祉用具貸与
      
 介護保険は、要介護者・要支援者の自立を支援するためのものです。
要介護者等を支援していくためには、社会資源が不可欠であり、それらはフォーマル分野とインフォーマル分野に分類されます。
    フォーマル分野
        介護保険・医療保険の給付、行政サービス
        認可を受けた民間機関・団体のサービスによる支援
    インフォーマル分野
        家族、親戚、同僚、近隣、ボランティア
        明確に制度化していない地域の団体・組織による支援

私たち鍼灸マッサージ師は、介護保険・医療保険のサービスを提供する立場から、フォーマル分野に位置づけられます。

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要介護者・要支援者の自立のお手伝い

 昭和57年に老人保健法が施行されて以降、より一層鍼灸マッサージ治療(心のケア、手当て)が国民の健康に関与してきました。この度実施される介護保険においても、要介護者等の多くは、寝たきりや歩行困難の状にあり、その方々に対しても、鍼灸マッサージ師は、医療の立場からの参与ができるようになりました。

介護保険と鍼灸マッサージ師

 介護保険制度下での鍼灸マッサージ師の位置づけとしては、一つには介護支援専門員(ケアマネージャー)があり、各都道府県師会で居宅介護支援事業所の事業展開を行っています。
 またもう一つには機能訓練指導員があり、通所介護や介護老人保健施設において機能訓練に従事しています。
 老人福祉法(昭和38年施行)では、その第19条において、機能回復指導員としてマッサージ師が日常生活上の機能訓練を行う能力を有する者と定義され、その配置を義務づけており、現在でも特別養護老人ホームや養護老人ホームにおいては、多くのマッサージ師が入所者の日常生活上の機能訓練を行っています。
 介護保険においても施設等での機能訓練指導員としてマッサージ師の配置が認められています。

総合的な居宅サービス計画の作成

居宅サービス計画は利用者の日常生活全般を支援する観点に立って作成されることが重要である。
このため、居宅サービス計画の作成または変更に当たっては、利用者およびその家族の希望や課題分析の結果に基づき、介護給付等対象サービス以外の、例えば、市町村保健婦が居宅を訪問して行う指導・教育保健保健サービス、老人介護支援センターにおけるソーシャルワークおよび市町村が一般施策として行う配食サービス・寝具乾燥サービスや当該地域の住民による見守り・配食・会食などの自発的な活動によるサービス等、更には、こうしたサービスと併せて提供される精神科訪問看護等の医療サービス、はり師・きゅう師による施術、保健婦・看護婦・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師による機能訓練等も含めて居宅サービス計画に位置づけることにより、総合的な計画となるよう努めなければならない。

 要支援・要介護認定を受けた高齢者の持つ様々な症状・・・・・痛み・関節拘縮・筋麻痺・褥そう・浮腫等に、鍼灸マッサージは高い治療効果を発揮します。鍼灸治療は疼痛緩和に、マッサージは関節拘縮や麻痺の改善に有効であり、どちらも高齢者のADL((日常生活動作)の向上に有効です。
 医師の同意書があれば医療保険の適応となり、介護保険と医療保険(健康保険等)の併用が可能となります。また介護保険では、按摩マッサージ指圧師は機能訓練指導員として位置づけられ、通所介護施設(デイサービス)や介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)において必置となっており、マッサージ施術や機能回復訓練を行うことができます。

医療保険と鍼灸マッサージ

 医療保険の中で鍼灸マッサージ施術は、療養費として取扱われており、要介護者等に医療上鍼灸マッサージが必要であると医師が認め、同意書が発行されると医療保険の中で鍼灸マッサージを取扱うことができます。
 維持期に行うリハビリ(鍼灸マッサージ)は、症状の改善は勿論ですが、症状の維持も治療効果と判断され、多くの高齢者を支援しており、高い評価を得ています。

a.医療マッサージ

 医療マッサージは、対象疾患・施術開始の時期および様態・症状に応じて施術されます。
 医療マッサージや機能訓練を行なうことで、関節の拘縮や筋麻痺、運動機能障害の回復を促し、ADL(日常生活動作)の向上を図り、寝たきりや歩行困難等の二次的障害や廃用性症候群の予防と改善を行います。

b.鍼灸

 鍼灸施術の適応症は数多くありますが、寝たきりや歩行困難等、介護保険における要介護者・要支援者の二次的障害や廃用性症候群に基因する疼痛症状の緩和等に優れた効果があります。
 また、患者本人だけでなく、介護者の、日々の介護疲れからくる腰痛や肩凝り等の症状の改善としてもお勧めできます。
医療保険の取扱いについて

 鍼灸・マッサージの保険取扱いは、健康保険法の療養費払いですが、実際には厚生省の保健通達によって運用されています。各都道府県によりその取扱いは幾分違いがありますが、医療の先行、同意書または診断書の添付が必須条件となります。

a.鍼灸に対する保険取扱い

支給対象

 はり師、きゅう師の施術においては、慢性病(主として神経痛、リウマチなどの痛みを主症とするもの)であって、保険医療機関における療養の給付を受けても所期の効果の得られなかったもの、または治療の経過からみて治療効果があらわれていないと判断さ れたもので、はり・きゅうの施術を受けることを医師が認め、これに同意した場合が療養費の支給要件に該当します。
 また、頚腕症候群、五十肩、腰痛症及び頚椎捻挫後遺症等の病名であって、慢性的な疼痛を主症とする疾患は、神経痛及びリウマチと同一範疇と認められ支給の対象となります。

 なお、神経痛及びリウマチを含めこれら慢性病については慢性期に至らないものであっても給付対象となります。
 また、はり・きゅうについては、医師による適当な治療手段のない場合について療養費が支給されることとなっており、現に医師から継続して治療を受けている疾病については療養費の支給対象とはなりません。

同意書

 はり・きゅうの施術を受けるには医師の発行した同意書が必要です。同意書は医師が、はり・きゅう施術の必要性を認めた場合に 発行されます。
 また同意書にかえて、病名・症状・発病年月日が記載されているものであって、療養費払いの可否が判断できる診断書でも構いません。
 はり・きゅうの同意書は、厚生省により示された全国統一の様式となっています。詳しくは各都道府県師会までお問い合せ下さい。

b.マッサージに対する保険取扱い

支給対象

 マッサージの支給対象となるのは、医療上必要があって行われたと認められたものです。マッサージの適応症は一律にその診断名によることなく筋麻痺、関節拘縮等であって、医療上マッサージを必要とすると認められる症状です。
 つまり、傷病名に関わらず、症状に筋麻痺、関節拘縮を呈していれば適応となります。
現在、主に取扱われている疾患は、脳血管障害後遺症等に起因する筋麻痺や、骨折後遺症や廃用性関節拘縮等です。

同意書

 マッサージの施術を受けるには医師の発行した同意書が必要です。同意書は医師が、医療上マッサージが必要性と認めた場合に発行されます。
 マッサージの施術に係わる医師の同意書については、病名・症状(主訴を含む)及び発病年月日が明記されていなければなりません。
 また同意書にかえて、病名・症状・発病年月日が記載されているものであって、療養費払いの可否が判断できる診断書でも構いません。
 マッサージの同意書の様式は、各都道府県により幾分違っておりますので、詳しくは各都道府県担当までお問い合せ下さい。

鍼灸マッサージの施術報酬は?

a.介護保険と鍼灸マッサージ

 要介護認定を経て決定された給付サービスの一環として、機能訓練を受ける、または通所介護(デイサービス)を利用する場合

     ⇒利用者負担額は1割

 介護支援専門員(ケアマネージャー)による介護サービス計画(ケアプラン)の作成は、保険による10割給付です。

b.医療保険と鍼灸マッサージ

健康保険法による療養費払いで、鍼灸マッサージ治療を受ける場合

○患者本人が保険者に施術料(保険給付分)を請求する方法

この場合は、いったん患者本人が診療費用を全額自払いすることになります。保険者へ請求をし、その後給付分が返還されます。

○保険者への請求を施術者に委任する方法

 患者は、施術者に施術料の自己負担分を支払います。保険者への請求と給付は、施術者側が代行して受けます。

上記の二通りの支払い方法があります。

鍼灸、マッサージそれぞれに対象となる症状・疾患が定められています。
また医師による同意書等も必要となりますので、詳細をご確認下さい。


c.自由診療と鍼灸マッサージ

上記a、bに当てはまらない場合でも、鍼灸マッサージ施術は自由に受けていただくことが出来ます。(施術報酬は、患者さんの全額自己負担となります)
1回の治療費としては、3000〜7000円くらいが一般的ですが、治療院や施術者によって、また施術内容や施術時間などによって報酬額は異なりますので、詳細は事前に各治療院・施術者の方へ確認を取られることをお勧めします。