天地人と病因(外因と内因編)


天地人の思想について

物事は天・地・人という三つの構成要素からなる、という中華思想です。今でこそ単なる上中下のことだったり、霊魂、現実、精神として占いに使われたりしますが、東洋医学としては宇宙観を示します。この場合の割り振りは以下のようになります。

・天は天体。あるいは天体が作り出す周期。変わらないもの。

・地は地上。天の下にあってその作用を受ける環境。大地。

・人は生命体。地という土台に乗っていて、天と地の影響を受けて活動する。

三つの関係は、例えば天がその運行によって四季を作り、地は人に実りを与える。

というように天から地、地から人へと影響を受ける形で成り立っています。


天と地と人の関係

天と地とはありのままの関係で、太陽が出ると地面は暖まり、沈むと冷えます。

天と地でも、勿論この状態は当てはまります。地が暖まって気温が上がると、人は温かさを感じます。その熱が適温なら人はぬくぬくと生活できることになります。

ところが、さらに気温が上がると人の身体は汗をかいて体温を下げます。人には恒常性があるので、地が暖まると人は冷えてくるという現象が起きるのです。

このように、地と人の関係では、同じ作用で逆の状態が起こることもあります。


自然に則った治療

この逆の現象は、四季だと夏にあたります。人の身体は、夏には暑さに負けないよう汗腺を開き、代謝を上げていつでも発汗できるようになります。

これを文鍼研では「季節に合った身体をしている」と言い、もっとも自分を治すのに適した状態だと考えます。つまり、文鍼研における全体治療は「鍼灸で身体を季節に合わせ、自分で治すようにもっていく」のが目標になります。その季節に合っているかどうかの目安が尺膚診と脈診になります。


目指すべき尺膚は以下のとおりです。

春:全体は温かい。外がふわふわ、中がやわらかくなりつつある硬さ。

夏:全体は冷える。外は汗腺が開いて中は大きくやわらかい。

秋:全体は冷える。外は水分が減ってさらさら、中はしっかり充実。

冬:全体は温かい。外は硬くてつるつる、中は小さく動かない。



後ほど脈診も行いますので、四季の脈も載せておきます。

春:弦脈。大きく響く。

夏:洪脈。たくさんゆったり流れる。

秋:毛脈。浮いていて軽い。

冬:石脈。小さく沈む。


この特徴の表現は人によって違います。同じ春の尺膚を表現するのにマシュマロや羽毛布団を例えた表現をする人もいます。他の人の表現を参考にして、自分なりの判断基準を作ってみてください。


病因について(外因と内因編)

目指すべき尺膚は決まったので、次は病気の原因がどこから来ているのか考えていきます。例えば、この時期に薄着で外に出ると意外に寒く身体が冷えることがあります。その結果、腰痛が出たり、カゼをひいて発熱したりします。腰痛を引き起こした冷えやカゼのもとになった冷えなどは、人を取り巻く環境からきています。この場合の原因は外界から来ているので外因と言います。

それに対し水分を取りすぎてお腹を壊すとか、気疲れして身体の機能が落ちるという冷えがあります。これは原因が人の内部なので内因と言います。

外因の尺膚は身体全体が外から冷えたり、あるいは熱せられたりして変化するため、尺膚全体が「寒」か「熱」になりやすく、さらにお腹と尺膚も一致しやすくなります。


内因は、脈を押してみると外が硬くて中が柔らかい、チクワの様な状態になることが多いです。