陰陽五行と内因


平成24年6月基礎講座


(前回の補足)

文鍼研の経絡治療は、三焦論を基礎にした治療になります。


三焦論的治療は、脈状診や尺膚診で身体の機能がどうなっているかを判断し、その方向性や乱れを整えます。例えば身体が熱い方に向かっているのか、それとも冷やす方に向かっているのか、その状態が季節に合う形でそうなっているのか、そうでないなら合うように機能を持っていく治療です。

これに対し、臓腑経絡学説的治療があります。この治療は六部定位脈診を使います。手首の橈骨動脈の拍動部に臓腑経脈を配当し、その強弱を比較してその臓器の虚実を判断し、その臓腑と経絡の補寫を行う治療です。

文鍼研では三焦論的な治療が主であると覚えていてください。



陰陽五行の思想

陰陽とは物事を2つに、五行とは5つに分ける考え方です。陰陽では極まると逆になったり、五行では相生相剋関係があったりするように、物事の構成要素同士が互いに深く結びついているのが特徴です。

治療の際によく使われる陰陽は、左右、男女、上下、寒熱、営気と衛気です。

営気は血と一緒に脈内にあって全身を栄養する働きをします。衛気は脈の外にあり、特に体表にあるものは外からの刺激を防ぎ、体を温める働きをします。

五行でよく使うのは五臓、五主、五邪、五神(七神)です。


五臓の作用

・肝は血を蔵し、気血津液を隅々までいきわたらせる。

・心は脈を蔵し、生命活動、特に脈動を行う。

・脾は営を蔵し、飲食物から栄養を取りだし全身に輸送する。特に肺に上げる。

・肺は気を蔵し、気血津液を全身に下ろしています。

・腎は精を蔵し、生命維持の源である命門の火で体中を温める。





五臓の位置

上記で栄養の上げ下げと記述しましたが、これは五臓の位置に関係します。

五臓を上中下に分けると上が心肺、中が肝脾、下が腎となります。中央にある脾臓から上部の肺に送るので「上げる」、上部の肺から全身に送るのは「下げる」と表現します。


上記の上中下の3つに分けられた働きは、そのまま三焦の作用に当てはまります。

心肺(上焦)の働きは呼吸、肝脾(中焦)の働きは栄養、腎(下焦)の働きは生命の火の調整になります。

三焦とは形のある臓器でなく、生命活動を3つに分けた考え方だと思います。

この体内の活動状況を伺うのが尺膚診と脈診です。

どの働きに問題が生じ、どの働きを使って治すのかは、三焦が行っている3つの作用をもとに考えます。これが三焦論的治療です。前回講義をした時の「環境に適応できずに冷えた、火照った」といった外因の症状も三焦の作用を使って治療します。温めたり、冷やしたりしてその身体を季節に合わせて行きます。

  


内 因

環境の変化によって身体が一斉に反応している状態を外因とするのに対し、内因は体内で起きた変化に体の一部機能が突出して乱れている状態(チームワークの乱れ)を言います。

内因で起こる乱れとして、循環が悪く冷えのぼせになるとか、飲み過ぎて下痢をするとか、ストレスで空元気になるなどがあります。

いずれも3つの作用に応じて寒熱や機能の偏りを調整していきます。

内因の判断基準として、五主のどこかが目立っておかしい、尺膚診と腹診の温度や感触が違う、脈診で強めに押さえても圧が返ってこないなどが挙げられます。