証を決めて治療する

平成24715日基礎講座


目 的

本 治:その季節に合わせた体にすること

ホメオスタシスに体力を使わないので、回復に専念しやすい

標 治:症状を取ること


診 察 

今、目の前にある体はどうなっているかを分類する


外 因:環境の変化に体が適応できていない状態

外から冷やされて体表も体内も冷える。外から熱されて体表も体内も熱。

    外からの冷えに対して体表は熱。または外からの熱に対して体表が冷える。

   

内 因:体の3つの働きがうまくいかない状態

  1、呼吸(外界)とのやりとりがうまくいかず寒熱の偏りが起こる。

   ・肺呼吸・・・・・「吸う」「吐く」のバランスがとれないと寒熱が偏る。

          「吸う」は肝腎、「吐く」は肺脾(吸うと暖まり、吐くと冷える)

・皮膚呼吸・・・汗腺の開閉がうまくいかないと、体を冷やすことも温めることもできなくなる。

  2、栄養・水分の偏り

   ・血が多くたまると熱。水が多いと冷え。

   ・血が労働などで消耗されての冷え。熱。


  3、代謝機能の偏り

・体のエネルギーである気血が動いていない。または動き過ぎての寒熱が偏る。


証を決める 

生じている寒熱や虚実を元通りにするために働かせる臓器を肝、脾、肺、腎の四つから一つ選びます。

それぞれ肝の証、脾の証、肺の証、腎の証と言います。

各症状に対応する証の立て方は、それぞれの支部で先生について教わって下さい(まずは暗記が主であることと、量が多いことのため)。

      

使用穴を決める 

文鍼研では季節(節気)によって使用穴が変わります。一年を四分割して四季としていますが、四季をさらに六つに分けたものが二十四節気です。この一つの節季の間(約2週間)は決められた二穴のうち、陽証か陰証かによってどちらかを使い本治とします。

        

現在の節気は小暑(7/7~7/21)です。

今年の夏は立夏(5/5)から始まって小満、芒種、夏至、小暑、大暑と進み、8/7の立秋には秋に入ります。各季節の最後の⒙日間は土用ですので、四季で言うなら7/19から夏の土用になります。

今年の小暑では陽証なら栄火穴、陰証なら兪土穴を使います。

井木穴を除く五行穴から、この節気に最も効果の出る二穴が選ばれます。

患者さんの症状が陽証なのか陰証なのかを判断して本治の一穴を決めます。

急性ではっきり症状が出ているようなら陽証、慢性ではっきりしないなら陰証といった判別になります。

確実なのは、脈か尺膚を診ながら二穴を触り比べて良く変わる方の穴を選ぶことです。


        

左右を決める 

本治の穴を決定したら、左右どちら側に刺すかを決めます。

 ①原則は健側

 ②脈が浮いていたら左、沈んでいたら右

 ③患者さんが男性なら左、女性は右

 ④触り比べて良く変化する方が確実



刺 鍼

リラックスした姿勢で自然に刺します。

ある程度季節にあった身体になれば標治に移ります。

抜鍼のタイミングは、

①何か変化を感じた

②呼吸が深くなった

③色がよくなった

 ④わからない時は少しずつ打っては脈診、尺膚診、触診を繰り返す。(※追いすぎに注意)




標 治

督脈上の経穴を使います。

原則として一穴目は本治に対応した穴を使います。

本治が木なら亜門、金なら大椎、土なら脊中、水なら陽関。

これは亜門そのものではなく、督脈上でその付近の反応点を使います。

本治でもそうですが、教科書的な場所よりも反応点を優先します。

陽証は左から刺し、陰証は右から刺します(右利きの場合)。

きれいな色つやで、均一感のある背中にします。

その上で、コリや痛みなどの症状を取っていきます。

なるべく変化させたい所から離れて打つとか、痛みを取るにはその経絡上の反応を探すとか症状に応じた方法があるので、実技で学んでください。

注意点はドーゼオーバーにならないようにすることです。



本治に戻る

再び尺膚と脈を診て、初めに打った後より悪くなっていれば、再度本治をして季節に合わせた身体にして終了です。



変化を感じ取る

まずは普段通りの尺膚診と脈診を行い、その状態を記憶する。

各班に配置された中級者に証を立ててもらう。

脈診をしつつ、押し手の示指でその証の五行穴上の経絡をたどる。

たどる時も軽く行う。指先で探そうとすると力が入ってしまうので注意する。

その経絡の兪土穴、栄火穴のモデル点付近でツボを探す。

他と寒熱が違っていたり、起伏があったり、硬軟があったりして他と違う所を探す。

示指の指腹をツボに置き、陽証、陰証のどちらが良く変わるかを感じる。

同じ経穴でも左右で変化に差があることを感じる。


患者役に体力があれば、証を立てずに4つの経に8つの経穴、左右で16個を一つひとつ触って調べてもよい。

 

今の目標は、反応点としてのツボを見つけること、ツボに指先が触れても体は変わること、変化を感じ取れるようになることです。