初学者用基礎講座

経絡治療の進め方

経絡治療の特徴
1.天人合一
自然界の動きと生体は不可分な関係に有る。
2.心身一如
心と体も不可分な関係に有る。
3.未病治療
予防医学の側面を持つ。
4.証
個々の病症にとらわれず病体を治療する。
5.鍼治療は気の調整を行う

用語説明

自然界
 西洋医学は自然科学から発達したものですが,東洋医学は道家思想から発祥した自然哲学が土台になっています。その自然哲学が示したT自然界Uとは,太陽や月や星の正確な動きを持つT天Uと,その作用を受けて季節や気候を表わすT地Uと,その間で天の作用と地の状態の影響を受けるT人Uによって構成されます。動植物は地にあてはまります。
 宗教の世界ではおおいなるものの力によって日が昇り季節が運行するとしていますが,道家思想の自然観では日が昇るのも季節が変わるのも元々有るもので一人でにそうなっているものとしています。ただしその運行に対して法則性を見い出し,医学に応用したのが漢方医学です。

天地人
自然界の構成をT天UT人UT地Uに分け各々の関係性からT人Uの受ける影響内容を分析します。正確無比な運行を持つT天Uの変化がT雛」れ腐敗して地に返ると言う金の作用をする訳です。大腸は糟粕を地に返る様にしている所です。

膀胱,洲都の官・津液の府
 膀胱には小腸から送られた水分のほかに,肺や脾,腎や三焦を巡った津液(水液)が気化(蒸化)されて集まり貯蔵され排泄される所です。そのため「洲都の官」とか「津液の府」と言われます。T洲Uとは川の流れの中に堆積して出来る島のことですが,水の流れで集まるものと言う意味です。T津液Uとは体液全般の総称です。膀胱は臓腑の中で最も下に位置しています。腎気の作用によって津液から小便を作り排泄しています。

奇恒の府

 生体の内臓の主要器官は五臓六腑ですが,五臓は精気を蔵するところであり,六腑は水穀の通過器官です。臓と腑が互いに組み合い分業し有って正常な生理作用を保っています。しかし人体には五臓六腑以外にも器官がありT奇恒の腑Uとして区別しました。
脳,骨,髄,脈,胆,女子包が有り腎気の盛衰と密接な関わりがあります。
は体の最深部にあって骨同士を連係して骨格を形成します。は骨の中にあって腎気を受け骨格を栄養します。
は髄が集まった大きなもので「脳は髄の海」と言います。
女子包は任脈と腹部の腎経を中心にしている衝脈の働きを受け,月経を起し子供を生む能力を備えます。受胎するとこの二経は働きを停止して胎児に栄養を供給して育てます。
は心が主りますが血管そのものの存在としては,五臓六腑以外の器官になります。栄気と血液を中に通して全身に行き渡らせます。に関しては先に述べた通りです。

気血津液の生理と病理

 気血津液は人体を構成する基本物質です。臓腑,器官,組織,経絡等が生理的な活動を行うための基本となって身体の中を流れ作用しています。外界環境の変化や飲食,疲れなどに対して適応し正常な生命活動を維持できるのは,その時折に対応した気血津液の絶え間ない流れと変化が有るためです。

 気とは「形は無く生命活動を推進すると言う機能を持ったエネルギーである」と考えてください。東洋思想独特の概念ですが生命の作用は全て気によって調整され統括しています。逆に気が失わられれば死を迎える訳ですから生命そのものです。気の活動が盛んであれば健康で不足していれば疾病です。診察対象で有り,治療対象でも有ります。

気の生理的機能
体液に機能を持たせ疎通させてます。エネルギー代謝を調整してます。
組織や器官を適度に温め潤いを持たせています。
身体内を外界環境の変化から防衛しています。体液を保持しています。

気の病理
正気が虚すー臓腑経絡の気が不足すると各諸器官の活動力が低下して病を起こすことです。
邪気が実すー健康状態に変調をきたす作用が体内に侵入もしくは発生した状態です。
気が欝滞するー気の行き渡り方にアンバランスが生じた状態。

 血は形も機能も有るもので概念的に物質的要素が強いものです。脾胃で得られた水穀の気や栄気が津液から変化させたものを心臓が肺に送り通過すると血になります。

血の生理的機能
血は脈中を運行しますが脈外を行く気と相共なって全身に行き渡り滋養作用を各諸器官に与えます。

血の病理
血虚ー局所もしくは全身の栄養障害です。感覚や運動障害を起こします。
血疔ー血行が欝滞して臓腑や経絡の局所の流れが疎外されその部分に疼痛が起きたり,腫瘤を形成します。

津液

 体内の水分の総称です。飲食物から作られます。脈内の血と組織の間を仲介して組織を潤しています。

津液の生理的機能
T津Uは澄んで粘り気のない陽性の水分です。体表分を潤し体温の調節に関与しています。汗や尿となって体外に排出されます。
T液Uは粘り気の有る陰性の水分です。体内をゆっくりと流れ目,鼻,口などの粘膜や骨や髄を潤します。

津液の病理
津液の虚は乾燥や乏尿,大量の発汗や嘔吐による脱水状態などです。
津液の実は脾,肺,腎の異常によって起こる水腫や浮腫などです。

邪気(外因と内因)

邪気には大きく分けて外因と内因の2種類があります。外因は外環境から受けた害的刺激の反応で六淫といい、内因は内側の感情による害的作用で七情といいます

五行
五臓
七神

精 志
四季 土用
六淫
五気
湿
七情

恐 脅
五邪 中風 傷暑 飲食労倦 傷寒 中湿

外因(六淫 風、暑、湿、燥、寒、火)

季節に対して人体への影響が正常な場合はT五気Uと呼ばれ各季節の主気となります。
春ー風、夏ー署、土用ー湿、秋ー燥、冬ー寒 を四時の主気といいます。
その季節の主気は心地よく受け止めれば人体に有利な条件をもたらしますが、不快に感じたり違う季節の気を受けたときは、邪気という受け止め方をして人体は病という表現をします。

内因(七情 怒、喜、思、憂、悲、恐、脅)

人の精神活動の反映として感情の変動により疾病をもたらす主要な要素をいいます。
人は生活環境の中で様々な感情への刺激を受けますが、その時に生体の臓腑の活動にも影響が発生して病理的な変化が生まれれば疾病になります。

不内外因

疾病発生の原因が六淫にも七情にも属さないものをいいます。
暴飲暴食、労倦、房労、打撲、創傷、虫獣傷害などをいいます。

暴飲暴食
飲食は生命を維持する上で欠かせません。適当であれば生体に栄養は行き渡りますが,少なかったり過度であったり不良なものを口にすれば,脾胃が損傷し疾病を招きます。特に量が多かったり味が濃いもの,冷たいものや脂っこいものは味覚を鈍らせ,腹部の脹満や下痢便秘吐き気を催し,腹痛や胸やけを起します。痛んだものや毒性の有るものを誤食すると嘔吐や下痢,腹痛を招きこれを「食中毒」「食中」と言い死の危険が有ります。また飲種や喫煙などの害も含まれます。

労倦
 生活の節度を失い怠けることで,体の抵抗力が衰え感冒や消化不良を起すようになります。しかし過度の労働は疲労を起し気血の流れを鈍くさせ,動作緩慢,自汗発熱,心悸抗進,精神不安などの衰弱的症状を起します。

房労
 節度を超えた性行為は精神を損ない腎気を損傷するため,落ち着いた常識的な思考を麻痺させます。また体力を低下させ足腰が衰弱し,女性では月経異常なとも起します。

打撲、創傷、虫獣傷害
不意の事故による物です。「破傷風」は外邪が傷口から侵入すると考えました。

十二正経脈の経絡流注の内容

名称の意味
その経絡が手の指先で始まる。
または終わる。という意味
体表のどの部位を通るかという意味。
しいては陰陽との関連を示している
どの臓腑と関連があるかと言う意味。
しいては五行との関連も示している
手の
太陰
肺経

体表を前・後ろ、横と三つに分け前面は陽明、後面は太陽、側面は少陽として四肢の日に焼けにくい部分を陰側としました。
三陽一陰といいます。
陽の経絡はTバンザイUのポーズをとったとき、上から下へ流れます。
陰の経絡はTバンザイUのポーズをとったとき、下から上へ流れます。

注:経絡という言葉は、実際には存在しません。『黄帝内経』では経脈、絡脈と言う言葉になっています。経絡とは日本独特の言葉です。

経穴
十二正経脈には経穴と言う点(つぼ)があります。部位に応じて五行性質を持っています。
脈気の循行時間:約30分で一循すると言われています。

経脈気血の量
多気少血:少陽、少陰、太陰  少気多血:太陽、厥陰   多気多血:陽明

五兪穴(五行穴、肘から先、もしくは膝から先にある経穴)
それぞれの十二正経脈の中の、その経脈の五行とは別に五行性質を持った経穴です。
陰の経
五兪穴
五行
経絡
肝経 大敦 行間 太衝 中封 曲泉
心経 少衝 少府 神門 霊道 少海
心包経 中衝 労宮 大陵 間使 曲沢
脾経 隠白 太都 太白 商丘 陰陵泉
肺経 少商 魚際 太淵 経渠 尺沢
腎経 湧泉 然谷 太谿 復溜 陰谷
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