◆十三難曰.

經言.見其色而不得其脉.反得相勝之脉者.即死.得相生之脉者.病即自已.色之與脉.當參相應.爲之奈何.
経に言う、其の色を見ても其の(色に相当する)脈は得られず、反して(その色に対して)相勝の脈を得るは即ち死。
相生の脈を得るは即ち病は自ら已(や)む。色の脈に与(よ;合わす)するは、当(まさに)相応(お互いに反応し合う)に参(さん;交わる)ずる。為(い;そのあり方、その物の性質)するは何か。
色が青-木、脈は中緩で大-土もしくは浮渋、短-金。相勝の脈は死。
色が青-木、脈は浮大で散-火もしくは沈濡で滑-水。相生の脈の病は自ら已(や)む。
然.五藏有五色.皆見於面.亦當與寸口尺内相應.
然るに、五藏に五色が有り、皆面(顔)に於いて見る。亦(また)(まさに)(よ;合わす)するは寸口と尺内に相応する。
色は顔面に、その相応は橈骨動脈拍動部と前腕前側部
假令色青.其脉當弦而急.色赤.其脉浮大而散.色黄.其脉中緩而大.色白.其脉浮渋而短.色黒.其脉沈濡而滑.
(かり;仮)に令(れい;例)すると
色は青にして、其の脈は当(まさに)弦で急。
色は赤にして、其の脈は浮大で散。
色は黄にして、其の脈は中緩で大。
色は白にして、其の脈は浮渋で短。
色は黒にして、其の脈は沈濡で滑。
弦で急
浮大で散
中緩で大
浮渋で短
沈濡で滑
此所謂五色之與脉.當參相應也.
此の所に謂う五色の脈に与(よ;合わす)するは、当(まさに)相応(お互いに反応し合う)に参(さん;交わる)ずるなり。
この五色に合わせる脈同士が、まさにお互いに交わる
脉數.尺之皮膚亦數.脉急.尺之皮膚亦急.脉緩.尺之皮膚亦緩.脉渋.尺之皮膚亦渋.脉滑.尺之皮膚亦滑.
脈の数、尺の皮膚で数。
脈の急、尺の皮膚で急。
脈の緩、尺の皮膚で緩。
脈の渋、尺の皮膚で渋。
脈の滑、尺の皮膚で滑。
それが脈の尺膚の一致である

五藏各有聲色臭味.當與寸口尺内相應.其不相應者病也.
五藏の各に声色臭味が有り、当(まさに)(よ;合わす)するは寸口と尺内に相応する。其の不相応が病なり。
五臓のそれぞれには声、色、臭、味が有り橈骨動脈拍動部と前腕前側部と一致する
色ー青、脈ー弦で急、尺膚ー急となるが、そうでなければ病。
假令色青.其脉浮渋而短.若大而緩.爲相勝.浮大而散.若小而滑.爲相生也.
(かり;仮)に令(れい;例)すると色は青にして、
其の脈は浮渋で短(色が白の脈=金=肺)。若(わずかに)大で緩(色が黄の脈=土=脾)。相勝を為す。
浮大で散(色が赤の脈=火=心)。若(わずかに)小で滑(色が黒?の脈・水・腎)。相生を為す。
色が青-木として、脈が浮渋、短-金もしくは若干大で緩-土。相勝。
脈が浮大で散-火もしくは若干小で滑-水。相生。
經言.知一爲下工.知二爲中工.知三爲上工.上工者十全九.中工者十全八.下工者十全六.此之謂也.
経に言う、一を知るは下工を為し、二を知るは中工を為し、三を知るは上工を為す。
上工は十のうち九が全(欠けず)して、中工は十のうち八が全(欠けず)して、下工は十のうち六が全(欠けず)する。此れの謂うなり。
色、脈、尺膚のいずれか一つを、もしくは声色臭味と脈と尺膚の組合せを一組だけ診察対象とした場合
より病体把握が表層程度となるためその表層対応ですむ六割程度に対応した作業内容となる。
いずれか二つを、もしくは二組を診察対象とすればより深層に近い八割に対応する。
三つをもしくは三組の診察対象は、さらに五臓の傷害把握に近づくため九割に対応する。
仮に一を知るを色、脈、尺膚のうちの一つだとすると、一蔵のみの把握で五臓関係を診断内容に入れないため、二つを知った時に六割から八割と飛躍的に向上する。
二を知るが脈-尺膚で有れば一を知ると同じ一蔵範囲であるが、色-脈、色-尺膚として相勝、相生の把握に勤めれば二臓の関係が診断内容に入る。それが六割から八割への飛躍と考える事が出来る。さらに色-脈-尺膚とすればその精度は上がり九割になると言う。
しかしこれはやり方の問題であって、
始めから三つの診察法を組み合わせていると言う事が前提ではないのだろうか?
そう考えれば、色-脈-尺膚、声-脈-尺膚、臭-脈-尺膚、味-脈-尺膚という診察システムの組合せを言っている様に思える。
こうなると作業量が膨大になってしまうため、表層把握だけでこの病体は大丈夫だと判断した場合は一組のみの診察システムで治療をスタートする。このことを下工。そしてそれは治療を受ける人の六割程度がこれであると言う事。
やや深層把握が必要と思われたら二組の診察システムを使って、治療をしていく。これが中工。表層に対してプラス二割の治療対応に拡大出来る。
不可逆性の高い五臓の損傷の治療が必要と判断した場合、三組の治療システムを使って五臓の傷害把握とその治療に対処する。これが上工。さらにもう一割の治療対応が拡大する。
上工中工下工とは病体への対応作業の名称であって、施術者の技量のランクであるとは思いがたい。初見で病体把握をして適切な対応処置をして、むやみな作業量の増大を防いで対処の遅れを防ぐ事を戒めているのではないかと思う。

色ー赤
脈ー浮大,散
尺膚ー数?
心-火
色ー青
脈ー弦,急
尺膚ー急
色ー黄
脈ー中緩,大
尺膚ー緩
腎-水   肺-金
色ー黒
脈ー沈濡,滑
尺膚ー滑
色ー白
脈ー浮渋,短
尺膚ー渋