- 甲骨文では
と言う形ですが、これは (かん) と隹(ふるとり) から成る文字です。
は火矢を意味し隹は小鳥を示す。儀式の呪的な行為として鳥を火矢で撃ったことを意味しています。
- その行為が難しかったのか、はばかる、なやむ、などに意味が入り、難し(がたし)となったようです。
- 隹の字があることから、扁鵲となんらかのつながる意味があるのかもしれません。
- 霊枢・九鍼十二原第一の第二章に「小鍼の要は陳べるに易く入るに難し(小鍼之要, 易陳而難入)」とあります。
- この「難」とは単に難しいという意味でもありますが「難入」とあることから、いまでいう「奥義」というような意味もあります。
- この「小鍼」を取り扱うことについての「難」奥義について「経」書きましたよと言う意味の書物かと思います。
- ところでこの「易陳而難入」についての解説が、同じ霊枢の第三篇・小鍼解の最初に
- 「この所に謂う陳べる(並べるの意)に易くとは、言う(たんにやり方だけの手順を述べる)は易く也。難入とは、人に於いて著す難し(実際に体得して出来るようになるのは難しい)也。(所謂易陳者, 易言也.
難入者, 難著於人也.)」とあります。
- また九鍼十二原第一のはじめの部分に
- 「余は(黄帝の自指)毒や藥や皮膚を被る方法を使勿(なかれ)わぬことを欲っする。石を用いること無く、微鍼を以って其の經脈を通じさせることを欲し、其の血氣を調(ととの)え, 其の逆順出入を會す(合わす)。(余欲勿使被毒藥, 無用石, 欲以微鍼通其經脈, 調其血氣, 其逆順出入之會)」とあります。
- 微鍼=小鍼ですが、霊枢の導入部に、生体に負担をかけない小さな鍼で最大限の効果を出したいと言うことを宣言しています。例えば我々が使うような八分一番という鍼が、この時代に作れたかどうかは解りません。しかし紗というレースのような薄い絹織物を縫うための針を作る技術と、祭事に使った玉を磨く方法で可能だったかと思われます。
- 余談ですが、中国古典には「易経」という短絡的な発言をすれば占いの原典があります。それに対する「難経」というだじゃれ的な要素があったかどうか?それはわかりません。
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