素問の脈診

王冰によって再編集された素問は、24巻に分纂されています。単に81篇を24分化したのではなく、結果的に24巻にした編纂意図が伺えると思えます。その意図は、巻同士の関係性や各巻の内容などから知ることが出来るかと思われます。
王冰が編纂した素問の前は全元起の手による編纂形体で、これは主に各編を年代で区分してありました。しかし王冰編纂素問は、その年代分けという法則ではありません。
例えば巻第一は最も新しいものの一つと言われている「上古天真論篇 」や「四気調神大論篇」が初めに来て、最も古いものの一つと言われている「生気通天論篇」や「金匱真言論篇」がその後に続き一巻を成しています。
巻第二も同様に新しい「陰陽応象大論篇」やや古い「陰陽離合論篇 」最も古い一つの「陰陽別論篇」と続きます。
脈診法についての記載はこの巻第二の「陰陽応象大論篇」から出てきて、その手法は「寸口脈診」と蛇足ながら「尺膚診」です。
第四章第四節
善診者, 察色按脈, 先別陰陽; 審清濁, 而知部分; 視喘息, 聽音聲, 而知所苦; 觀權衡規矩, 而知病所主. 按尺寸, 觀浮沈滑澀, 而知病所生; 以治無過, 以診則不失矣.
善く診る者は色を察し脈を按じ、陰陽を先に別け清濁を審し(細かく見きわめる)部分を知る。喘息を視て音聲を聽き苦所を知り權衡(はかり)(コンパス)(さしがね)で觀るように病の主所を知る。尺(上腕前面?)(橈骨動脈拍動部)を按じて浮沈滑澀を觀て、病の所生を知る。以って治の無過や以て診の不則を失する矣(べし)
その後に「陰陽別論篇」の王冰が残した註に人迎ー気口が記載されていますが、
第一章
三陽在頭.三陰在手.所謂一也.(頭謂人迎、手謂気口)
脈状の名前も出てきます。
第三章
鼓一陽曰鉤, 鼓一陰曰毛, 鼓陽勝急曰弦, 鼓陽至而絶曰石, 陰陽相過曰溜.
一陽が鼓(ふくれているさま)して曰く鉤、一陰が鼓して曰く毛、陽が鼓して急が勝ると曰く弦、陽が鼓して絶に至ると曰く石、陰陽の相過は曰く溜。
巻第三では「霊蘭秘典論篇 」に続く「六節臓象論篇」に人迎ー寸口の記載があります。
第六章
人迎與寸口盛四倍

この二編は比較的古い記載のもののようですが、その後に新しい「五臓生成篇」が続きます。

巻第一ではまず新しい内容の篇を二つ続けて置き、その裏付けとして古い篇を二つ置いたのではないかと思いました。
巻第二も同様に新しい篇を始めに置き、やや古い篇と古い篇を裏付けに置いたのではないかと思っています。
巻第三では通説的なやや古い篇を二つ置いてから新しい篇を置き、裏付けに古い篇を置いているようです。
巻第三は第一と第二を医学として明瞭化している様に思われます。そのため「五臓生成篇」を少し丁寧にあつかうために、このような形にしたんだと思います。
このは第一と第二、第三を合わせて「基礎編」と区分してみました。
 
王冰編纂素問は、基本的に始めの部分をあとの部分が裏付けていると考えています。
1〜3巻を基礎編としていますがあとの臨床総論編が裏付けていて、その臨床総論篇をそのあとの各論編が裏付けていると考えて読んでいます。

篇名
古新
全元起
本巻番
脈診法名
経絡
補瀉
1.上古天真論篇
じょうこてんしんろん

 
 
2.四気調神大論篇
しきちょうしんたいろん

 
 
3.生気通天論篇
せいきつうてんろん

最古

 
 
4.金匱真言論篇
きんきしんげんろん

最古

 
 
5.陰陽応象大論篇
いんようおうしょうたいろん

寸口
 
6.陰陽離合論篇
いんようりごうろん

次古?

   
7.陰陽別論篇
いんようペつろん

最古

人迎ー脈口(?)
(気口、寸口)
寸口(?)
 
8.霊蘭秘典論篇
 (十二臓相使篇)
れいらんひてんろん

次古?

   
9.六節臓象論篇
ろくせつぞうしょうろん
次古?

人迎ー脈口
(気口、寸口)
 
10.五臓生成篇
こぞうせいせい

 
第三章
人には大谷が十二分有り、小谿の三百五十四と少十二兪が名される。
此れは皆、衛氣の留まる所、邪氣の客す所なりて鍼石にて去す。
11.五臓別論篇
こぞうべつろん

最古

   
12.異法万宜論篇
いほうほうぎろん

   
13.移精変気論篇
いせいへんきろん

次古

   
14.湯液醪醴論篇
とうえきろうれいろん

最古

 
 
15.玉版論要篇
ぎょくはんろんよう

次古

   
16.診要経終論篇
しんようけいしゅうろん

次古

 
 
17.脈妻精微論篇
みゃくようせいびろん

新次

寸口
 
18.平人気象論篇
へいじんきしょうろん

次古

寸口
 
19.玉気真臓論篇
ぎょくきしんぞうろん

新次

寸口
 
20.三部九侯論篇
さんぶきゅうこうろん

次古

三部九候
 
21.経脈別論篇
けいみゃくべつろん

最古

寸口
 
22.臓気法時論篇
ぞうきほうじろん

次古

   
23.宣明五気篇
せんめいごき

次古

   
24.血気形志篇
けつきけいし
   
 
 
25.宝命全形論篇
ほうめいぜんけいろん

新次

三部九候
 
26.八正神明論篇
はっせいしんめいろん

次古

三部九候
 
27.離合真都論篇
りごうしんじゃろん

次古

1(2)

三部九候
第二章
黄帝曰く、補寫とは何か。
岐伯曰く、此れ邪への攻なりて血の盛を去り以て疾を出し其の真氣を復す。
此のとき邪が新たに客し未だ處を定めること溶溶とし則ちその前にて推し、則ち止めること引きし、刺が逆すれば温血なり。其の血を刺して出し其の病は立す。
28.通評虚実論篇
つうひょうきょじつろん

最古

寸口
 
29.太陰陽明論篇
たいいんようめいろん

最古

   
30.陽明脈解篇
ようめいみゃくかい

次古?

   
31.熱論篇
ねつろん

最古

   

32.刺熱篇
しねつ

最古

   
33.評熱病論篇
ひょうねつびょうろん

最古

   
34.逆調論篇
ぎゃくちょうろん

最古

   
35.瘧論篇
ぎゃくろん

最古

 
 
36.刺瘧篇
しぎゃく

新次

   
37.気厥論篇
きけつろん
   
 
 
38.論篇
がいろん

   
39.挙痛論篇
きょつうろん

次古?

   
40.腹中論篇
ふくちゅうろん

最古

人迎ー脈口
(気口、寸口)
 
41.刺腰痛篇
しようつう

新次

   
42.風論篇
ふうろん

 
 
43.痺論篇
ひろん

亜流

 
 
44.痿論篇
いろん

最古

 
 
45.厥論篇
けつろん

最古

   
46.病態論篇
びょうたいろん

最古

人迎ー脈口
(気口、寸口)
 
47.奇病論篇
きびょうろん

最古

人迎ー脈口
(気口、寸口)
 
48.大奇論篇
たいきろん

寸口
 
49.脈解篇
みゃくかい

   
50.刺要論篇
しようろん
       
51.刺斉論篇
しせいろん

新次

   
52.刺禁論篇
しきんろん

新次

 
 
53.刺志論篇
ししろん

新次

   
54.針解篇
しんかい

新次

三部九候
 
55.長刺節論篇
ちょうしせつろん

次古?

   
56.皮部論篇
ひぶろん

次古

   
57.経絡論篇
けいらくろん

次古

   
58.気穴論篇
きけつろん

最古

   
59.気府論篇
きふろん

次古

   
60.骨腔論篇
こっくうろん

次古

   
61.水熱穴論篇
すいねつけつろん

亜流

   
62.調経論篇
ちょうけいろん

次古

三部九候
第二章 第一節
黄帝曰く、補寫とは何か。
岐伯曰く、神の有餘、則ち其の小絡の血を寫しても深く切り開き出血をさせず、其の大經には中てぬよう神氣を平する。神の不足は其の虚絡を視、按じて致らせ刺すを利するは無出其の血を出さず其の氣を泄らさず、以て其の經を通し神氣を平す。
第七章
黄帝曰く夫子は虚実に十有ると言うが五藏から生ずるに於いて五藏は五脈のみ。
これら十二經脈は皆、病を生じ、しかし今、夫子は五藏に獨りと言う。
十二經脈なるは皆、絡が三百六十五節あって節に病が有り、經脈は必ず經脈の病にこうむられる。
そして皆、虚実が有が何を以て合すか。
岐伯曰く五藏は故に六府を得て表裏をくみて為す。經絡の支節は各に虚実を生じ其の病の所居は隨にて調す。
63.繆刺論篇
びゅうしろん

次古

三部九候(?)
 
64.四時刺逆従論篇
しじしぎゃくじゅうろん

次古

1(6)

三部九候
 
65.標本病伝論篇
ひょうほんびょうでんろん

次古

   
66〜74は運気篇
巻第十九;五運行大論篇第六十七は寸口
脉法曰.天地之變.無以脉診.此之謂也.
帝曰.間氣何如.
岐伯曰.隨氣所在.期於左右.
帝曰.期之奈何.
岐伯曰.從其氣則和.違其氣則病.不當其位者病.迭移其位者病.失守其位者危.尺寸反者死.陰陽交者死
巻第二十二;至眞要大論篇第七十四は人迎-寸口
帝曰.夫子言.察陰陽所在而調之.論言.人迎與寸口相應.若引繩.小大齊等.命曰平.陰之所在.寸口何如.
岐伯曰.視歳南北.可知之矣
75.著至教論篇
ちょしきょうろん

亜流

   

76.示従容論篇
ししょうようろん

亜流

   
77.疏五過論篇
そごかろん

亜流

三部九候(?)
 
78.徴四失論篇
ちょうししつろん

亜流

 
經脈の十二、絡脈の三百六十五。此れは皆、人の明知する所にて工の用いて循う所なり。
79.陰陽類論篇
いんようるいろん

亜流

   
80.方盛衰論篇
ほうせいすいろん

亜流

   
81.解精微論篇
かいせいびろん

亜流

   
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