外因内因とは邪気の種類を言います。邪気とは健康状態に変調をきたすよこしまな気で,外因の六淫と内因の七情に分けられます。そのよこしまな気が外環境から体内に侵入すれば外因もしくは六淫の邪気,体内で発生すれば内因もしくは七情の邪気として病症を起こします。
六淫は風、暑、湿、燥、寒、火
七情は怒、喜、思、憂、悲、恐、脅が有ります。
     
素問編
陰陽応象大論篇第五
陰が勝れば陽病で陽が勝れば陰病。陽が勝れば熱で陰が勝れば寒。
陰勝則陽病.陽勝則陰病.陽勝則熱.陰勝則寒.
寒が重なれば熱で熱が重なれば寒。寒は外形を傷り,熱は内の気を傷る。
内の気が傷られると痛み,外形が傷られると腫れる。
重寒則熱.重熱則寒.寒傷形.熱傷気.気傷痛.形傷腫.
つまり痛みが有ってから腫れるのは内の気から形質を腫らし,
腫れてから痛むのは外形から気を傷ったもの。
故先痛而後腫者気腫形也.先腫而後痛者形傷気也.
風が勝れば動作に熱が勝れば腫れが燥が勝れば乾きに寒が勝ればむくみが湿が勝ればべた付きが出る。
風勝則動.熱勝則腫.燥勝則乾.寒勝則浮.湿勝則濡瀉.
天に四季の五行が有り生長収蔵となって寒暑燥湿風を生じる。
天有四時五行以生長収蔵.以生寒暑燥湿風.
人には五臓の五気により喜怒悲憂恐が生じる。
喜と怒は気を内の寒と暑は外形を暴怒は陰を暴喜は陽を傷る。
人有五蔵化五気.以生喜怒悲憂恐.故喜怒傷気.寒暑傷形.暴怒傷陰.暴喜傷陽.
厥気が上行すると脈が満ちて外形が保持できない。
つまり怒や喜をコントロールせず寒さや暑さに当り過ぎると‘木の生’の作用が不安定になる。
厥気上行.満脈去形.怒喜不節.寒暑過度.生乃不固.
だから必ず陰が重なれば陽に,陽が重なれば陰になる。
故重陰必陽.重陽必陰.
つまり言ってみれば冬の寒が傷り春に必ず温病になり,春の風が傷り夏に下痢嘔吐を生じ
夏の暑が傷り秋に必ずおこり(マラリア)で倒れ,
故曰冬傷於寒.春必温病.春傷於風夏生食泄.夏傷於暑.秋必駭瘧.
秋の湿が傷り冬に咳が出る。
秋傷於湿冬生咳嗽.
厥気:心気が逆上する
温病:夏至以前の悪寒を伴わない熱病

経脈別論篇第二十一

黄帝問て曰く,人の環境や動作や気持で脈に変化は与えられるのか。
黄帝問曰.人乃居處動静勇怯脈亦与乃變(変)乎(疑問を表わす言葉。〜か).
岐伯向かって曰く,一般的に人の心身の動きによるものは皆,変化を与える。
岐伯對曰.凡人驚恐恚(心をかどだてる)勞動静.皆与變也.
夜動けば腎から息の荒れが発生し,外邪で肺を病む。
肉体的苦痛からの恐れは肝から息の荒れが発生し,外邪で脾が害を受ける。
是以夜行則喘出於腎.淫気病肺.有所堕恐.喘出於肝.淫気害脾.
精神的な動揺からの恐れは肺から息の荒れが発生し,外邪が心を傷る。
渡っている水の中でつまづいて倒れると,息の荒れが骨から興り腎から発生します。
有所驚恐.喘出於肺.淫気傷心.度水跌仆.喘出於腎興骨.
是等に当った場合,気丈な者は反応が治まるが,気弱なものは邪気が居座って病になる。
當是乃時.勇者気行則已(〜をやめる,ずばりの意).怯者則着而与病也.
したがって,診察は精神面の強さを見比べて形質組織各器官や心情の状態まで診る。
故曰.診病乃道.觀人勇怯.骨肉皮膚.能知其情.以与診法也.
また暴飲暴食は胃から,動揺して精気を失うと心から,重い物を持って距離を歩くと腎から
故飲食飽甚.汗出於胃.驚而奪精.汗出於心.持重遠行.汗出於腎.
走ったり恐れおののくと肝から,体がふらつくほど辛い労働は脾から汗が出ます。
疾走恐懼.汗出於肝.搖體勞苦汗出於脾.
四季の陰陽の作用があっても常に心身を過度に使えば病が生じる。
故春秋冬夏四時陰陽生病已於過用此与常也.

挙痛論篇第三十九

黄帝曰く,私は全ての病が気によって発生することを知っている。
帝曰.善.余.知百病生於気也.
怒は気が上り,喜は気が緩み,悲は気が消え,恐は気が下がり,寒は気が収縮し,暑は気を漏らし,
怒則気上.喜則気緩.悲則気消.恐則気下.寒則気収.暑則気泄.
驚は気が乱れ,労は気が消耗し,思は気が固まる。この9つは同じでは無いが,どんな症状か?
驚則気亂.勞則気耗.思則気結.九気不同.何病之生.
岐伯曰く,怒は気が逆行する。ひどい場合は吐血や下痢をする。これを気が上ると言う。
岐伯曰.怒則気逆.甚則嘔血.及餮泄.故気上矣(言い切りの言葉。〜だ).
喜は気を和ませ志気をすんなりと広げ栄衛の気を疎通させる。これを気が緩むと言う。
喜則気和志達.榮衛通利.故気緩矣.
悲は心の系をひきつらせ肺葉が挙がり上焦が詰まり栄衛の気が滞って体内に熱気となって留まる。
これを気が消えると言う。
悲則心系急.肺布葉挙.而上焦不通.榮衛不散.熱気在中.故気消矣.
恐は精気をこもらせ上焦を閉じて気が廻らず下焦が張ります。これを気が動かないと言う。
恐則精却.却則上焦閉.閉則気還.還則下焦脹.故気不行矣.
寒は奏理を閉じて気を動かなくさせる。これを気が収縮すると言う。
寒則奏理閉.気不行.故気収矣.
暑は奏理を開いて栄衛の気を通わせ汗をたくさんかかせる。これを気を漏らすと言う。
暑則奏理開.榮衛通.汗大泄.故気泄.
驚では心が五蔵の寄所ではなくなり神気もそこに無いため思慮が定まらない。これを気が乱れると言う。
驚則心無所倚(よりかかる。).神無所歸(回ってもどる。).慮無所定.故気亂矣.
労は息を乱し汗を出す。外のものも内のものも皆飛び超えて出てしまう。気の消耗と言う。
勞則喘息汗出.外内皆越.故気耗矣.
思は心に留まり神気も留まるので正気も留まって動かない。これを気が固まると言う。
思則心有所在.神有所歸.正気留而不行.故気結矣.
霊枢編
邪気臓腑病形篇第四 法時
黄帝岐伯に問て曰く,邪気が人に中るとはどう言う事か? 
黄帝問於岐伯曰.邪気之中人也.奈何.
岐伯答えて曰く,邪気は人の高い所に中る。
岐伯答曰.邪気之中人高也.
黄帝曰く,高い所と下の方の区別は何か?
黄帝曰.高下有度乎.
岐伯曰く,上半身のそのものには邪気が中り,それ以外の下半身には湿が中ります。
岐伯曰.身半已上者.邪中之也.身半以下者.濕中之也.
邪気が人に中るのは,平常の有無問わず陰に中ると腑に溜まり,陽に中ると経に溜まります。
故曰.邪之中人也.無有常.中於陰則溜於腑.中於陽則溜於経.
黄帝曰く,陽から興きて陰に至る。名前は違っても同じ種類。上下に経絡を貫き循環して端が無い。
黄帝曰.陰之興陽也.異名同類.上下相會.経絡之相貫.如環無端.
しかし邪気が人に中るのに例えば陰だけに中ったり上下左右一定で無いのはなぜか?
邪之中人.或中於陰.上下左右.無有恆常.其故何也.
岐伯曰く,各々のの陽は顔に合流します。その時の相乗の作用が虚している時に飲食によって汗をかき
岐伯曰.諸陽乃會.皆在於面.中人也.方乗虚時及新用力.若飲食汗出.
湊理が開いて邪気を受けそれが顔に中ると陽明を下り,項に中ると太陽を下り,頬に中ると小陽を下り
湊理開而中於邪.中於面.則下陽明.中於項.則下太陽.中於頬.則下少陽.
胸に中ると背中の各両経や脇に中ります。
其中於膺(胸).背兩脅亦中.其経.
黄帝曰く,では陰に中る場合はどうか?
黄帝曰.其中於陰.奈何.
岐伯答えて曰く,陰に中る場合は腕や脛の陰則の,皮膚薄く肉の柔らかな滑らかなところが最初に受け
岐伯答曰.中於陰者.常従臂脛始.夫臂興脛.其陰皮薄.其肉卓澤.
それで,陰が邪気を受ける場合は,風を全身いっぺんに受けても陰だけが傷られます。
故倶(いっしょにそろっての意)受於風.獨(独)傷其陰.
黄帝曰く,それに対応する臓は傷られるのか?
黄帝曰.此故傷其臓乎.
身体に風を受けても必ずしも臓に影響が有る訳ではない。
なぜかと言うと陰経に邪が入っても臓にはその臓の気が満ちていて入り込む隙間が無い。
岐伯答曰.身之中於風也.不必動臓.故邪入於陰経.則臓気実.邪気入而不能客.
つまり腑の方へ巡って行ってしまう。だから陽の場合はその経に陰の場合はその腑に中る。
故還之於腑.故中陽則溜於経.中陰則溜於腑.
黄帝曰く,では邪が人の臓に中のはなぜか?
黄帝曰.邪之中人臓.奈何.
岐伯曰く,愁憂恐懼などは心を傷る。
岐伯曰.愁憂恐懼則傷心.
外気や飲み物の寒は肺を傷る。この両方の寒に感応すると中も外も傷れ気が逆に上行する。
形寒寒飲則傷肺.以其兩寒相感.中外皆傷.故気逆而上行.
墜落して悪血が体内に溜まったり,激怒で気が上がって下がらないと脇腹の下に溜まって肝を傷る。
有所堕墜.悪血留内.有所大怒.気上而不下.積於脅下.則傷肝.
殴られて倒れたり,酔っての性交の様な時に汗をかき風に当たると脾を傷る。
有所撃仆若酔入房.汗出當風.則傷脾.
重い物を持って力を使ったり,過度な性交の様な時に汗をかき水に浸かると腎を傷る。
有所用力掌重.若入房過度.汗出浴水.則傷腎.
黄帝曰く,五臓が風に中るとは何か?
黄帝曰.五臓之中風.奈何.
岐伯曰く,元々邪に中っていた臓にさらに受けた風が巡ってきた場合に中る。
岐伯曰.陰陽倶感.邪之得往
 
若:{接続}もし。仮定をあらわすことば
  {動}ごとし。判断をあらわすことば
臂:腕全体の意。
脛:すねの意。
夫:それ,そのの意。新しい話題を出すことを知らせるため、文頭につけることば。
懼:びくびくするの意。
脅:脇腹の意。
往:〜へ。向かう方向をあらわすことばの意。
黄帝岐伯に曰く,顔や首も体と同じ様に骨や筋が連なり血も同じで気の合わさったもの。しかし,
黄帝曰.善哉.黄帝於岐伯曰.首面興身形也.麓骨連筋.同血合於気耳(〜のみの意).
凍って地が裂けるほど寒くて,手足が震えているのに顔が平気なのはなぜか?
天寒則裂地凌冰.其卒寒.或手足懈惰.然而其面不以.何也.
岐伯に曰く,十二経脈も三百六十五絡も,その血気は皆上って顔に集まり,目耳鼻口に機能させる。
岐伯答曰.十二経脈.三百六十五絡.其血気皆上於面.而走空窮.
その機能をさせる精は陽気として目にいき晴を与える。別の気は耳にいき聴を与える。
其精陽気上走於目而与晴.其別気走於耳而与聴.
宗気は鼻にいき臭を与える。濁気は胃を出て唇や舌にいき,味を与える。
其宗気上出於鼻而与臭.其濁気出於胃.走唇舌而与味.
津液.の気は皆顔に上って煖める。そして皮膚を厚くして肉を堅くする。
其気之津液.皆上煖於面.而皮又厚.其肉堅.
だからどんなに激しい寒さも顔の熱には勝てない。
故天熱甚寒.不能勝之也.
黄帝曰く,邪気が人に中った時のその病形は何か?
黄帝曰.邪之中人.其病形何如.
岐伯曰く,虚邪は首から下に中って水をかけられた様に外形を動きます。
正邪は人に中るが反応は微かで,まず色を見るが,体の反応は解りにくく,症状が有ったり無かったり
岐伯曰.虚邪之中身也.洒淅動形.正邪之中人也微.先見於色.不知於身.若有若無
予後が良かったり悪かったり,類型の定まりが有ったり無かったり,その本来は形は解りにくい。
若亡若存.有形無形.莫知其情.
黄帝岐伯に曰く,色を見て病を知ることを明と名づけ,
黄帝曰.善哉.黄帝於岐伯曰.余聞之.見其色.知其病.命曰明.
脈を触って病を知ることを神と名づけ,病を問診で知ることを工と名づけると聞いた。
按其脈.知其病.命曰神.問其病.知其處.命曰工.
見て知る方法,触って得られるもの,問診について教えて欲しい。それは何か?
余願聞見而知之.案而得之.問而極之.与之奈何.
岐伯答えて曰く,その色,脈は尺の反応と相応する。バチが太鼓に影響するようだ。
岐伯答曰.夫色脈興尺之相應也.如桴鼓影響之相應也.
それは根本であり末葉の関係である。だから根が死ねば葉も枯れる。
色や脈の状態が外形や身体に一致しない事はない。
此亦本末根葉之出候也.故根死則葉枯矣.色脈形肉.不得相失也.
よって1つ解るのが工,2つ解るのが神,3つ解るのが明。
故知一則与工.知二則与神.知三則神且明矣.

黄帝曰く,つまりどう言う事か聞かせて欲しい。
黄帝曰.願卒聞之.
岐伯答て曰く,色が青であれば脈は弦。赤であれば脈は鉤。黄であれば脈は代。白であれば脈は毛。
岐伯答曰.色青者.其脈弦也.赤者.其脈鉤也.黄者.其脈代也.白者.其脈毛.
黒であれば脈は石。その色を見てその脈が一致せず相剋関係であれば死。
黒者.其脈石.見其色而不得其脈.反得其相勝之脈.則死矣.
相生関係であれば病はおさまる。
得其相生之脈.則病已也.
黄帝岐伯に問いて曰く,五臓から発生した場合,その病形はどうか?
黄帝問於岐伯曰.五臓之所生.變化之病形.何如.
岐伯答て曰く,先の定義の様に五色と五脈の応じ方で,その病気を区別します。
岐伯答曰.先定其五色五脈之應.其病之可別也.
黄帝曰く,色と脈を見てからの区別はどのようにするのか?
黄帝曰.色脈已定.別之奈何.
岐伯曰く,脈の緩急小大滑渋を調べ病変を定めます。
岐伯曰.調其脈之緩急小大滑渋.而病變定矣.
黄帝曰く,調べるとはどう言う事か?
黄帝曰.調之奈何.
岐伯答て曰く,脈が急のもの尺膚も急。脈が緩のもの尺膚も緩。
岐伯答曰.脈急者.尺之皮膚亦急.脈緩者.尺之皮膚亦緩.
脈が小のもの尺膚は滅で小気。脈が大のもの尺膚は奮起している。
脈小者.尺之皮膚亦減而小気.脈大者.尺之皮膚亦賁而起.
脈が滑のもの尺膚も滑。脈が渋のもの尺膚も渋。しかしこの反応は微かであったり甚だしかったり,
脈滑者.尺之皮膚亦滑.脈渋者.尺之皮膚亦渋.凡此變者.有微有甚.
つまりきちんと尺膚を診る人は寸口を診なくても解り,きちんと脈を診る人は色を診なくても解る。
故善調尺者.不待於寸.善調脈者.不待於色.
この3つの能力を合わせている者を上工という。上工は10有るうち9の確率でその能力を活かせます。
能参合而行之者.可以与上工.上工十全九.
2つ行える者を中工という。中工は10有るうち7の確率でその能力を活かせます。
行二者与中工.中工十全七.
1つ行える者を下工という。下工は10有るうち6の確率でその能力を活かせます。
行一者.与下工.下工十全六.

寿夭剛柔篇第六 法律
黄帝伯高に向かって曰く,外形や内の気について聞いたが,病の後先が内や外に応じるのはなぜか?
黄帝問於伯高曰.余聞形気.病之先後.外内之應.奈何.
伯高曰く,風や寒は外形を傷り,憂恐忿怒は内の気を傷ります。内の気が傷られると臓を病にして,
寒は外形を傷りその反応を見せる。
伯高答曰.風寒傷形.憂恐忿怒傷気.気傷臓.乃病臓.寒傷形.乃應形.
風は筋脈を傷りその反応を見る。この様に外形,内の気は相応じる。
風傷筋脈.筋脈乃應.此形気外内之相應也.
黄帝曰く,治療は?
黄帝曰.刺之奈何.
伯高答えて曰く,病んで九日の者の治療は三回で,一月の者は十回で
伯高答曰.病九日者.三刺而已.病一月者.十刺而已.
痺病などのいつまでも抜けない慢性病の場合は血絡を調べ瀉血する。
多少遠近.以此衰之.久痺不去身者.視其血絡.盡出其血.
黄帝曰く,病の内外,治療の難易はなぜか?
黄帝曰.外内之病.難易之治.奈何.
伯高答えて曰く,外形が先に病みまだ臓に行かないものは,費やす治療期間の半分で済む。
伯高答曰.形先病而未入臓者.刺之半其日.
臓が先に病んだ事で,外形が反応した場合は,治療期間が倍かかる。これが外内難易の応じ方。
臓先病而形乃應者.刺之倍其日.此外内難易之應也.

口問第二十八
黄帝曰く,口伝として伝わるものを聞かせて欲しい。
黄帝曰.願聞口傅.
岐伯答えて曰く,様々な病の始まりは皆,風雨寒暑.陰陽喜怒.飲食居處.大驚卒恐から生まれる。
岐伯答曰.夫百病之始生也.皆生於風雨寒暑.陰陽喜怒.飲食居處.大驚卒恐.
それは気血が分離し,陰陽が離れるので経絡が跡絶えて,脈道が通らない。
則血気分離.陰陽破散.経絡厥絶.脈道不通.
陰陽がお互いに逆らって衛気が滞り,経が虚し,気血の流れが続かず,正常な状態をを失う。
陰陽相逆.衛気稽留.経脈虚空.血気不次.乃失其常.

 盡:残りなく出すの意
居處:生活環境の意
 卒:急なさまの意
 稽:とどこおるの意

難経編

人に三虚三実があると言うが,どういうことか?
四十八難曰.人有三虚三實.何謂也.
脈の虚実,病の虚実,診断の虚実です。
然.有脉之虚實.有病之虚實.有診之虚實也.
脈の虚実で,濡れている様な柔らかいのは虚。固くてきつい様なものは実。
脉之虚實者.濡者爲虚.緊牢者爲實.
病の虚実で,内から外へ向かうのは虚,外から内へ向かうのは実。語っていると虚し,
病之虚實者.出者爲虚.入者爲實.言者爲虚.
黙っていると実。緩やかな症状は虚し,急性は実。
不言者爲實.緩者爲虚.急者爲實.
診断の虚実で,濡れている様な柔らかいのは虚。固くて動きがとれない様なものは実。
診之虚實者.濡者爲虚.牢者爲實.
痒いのは虚,痛いのは実。
癢者爲虚.痛者爲實.
痛い感じがしてもギュっと押すと心地よいのは,
触診した部分の“外”に関する部分が実,“内”に関する部分が虚。
外痛内快.爲外實内虚.
軽く撫でると心地よいがギュっと押すと痛いのは,
触診した部分の“内”に関する部分が実,“外”に関する部分が虚。このような虚実がある。
内痛外快.爲内實外虚.故曰.虚實也.

 正経が自ら病むことがあり,または五邪で病むことがある。どう区別するのか?
四十九難曰.有正經自病.有五邪所傷.何以別之.
経で言えば,憂愁思慮では心を,寒邪や冷たい飲み物では肺を,
然.經言.憂愁思慮則傷心.形寒飮冷則傷肺.
怒りが激しく気が逆上し下がらなければ肝を,飲食や過労では脾を,
恚怒氣逆.上而不下則傷肝.飮食勞倦則傷脾.
湿っぽい所に長い間いたり,無理な力を使い水に入ると腎を傷る。これを正経が自ら病むと言う。
久坐(何もしないでいての意)濕地.強力入水則傷腎.是正經之自病也.
五邪ではどうか?
何謂五邪.
風に中るもの,暑に傷られるもの,飲食過労のもの,肝に傷られるもの,湿に中るもの,五邪と言う。
然.有中風.有傷暑.有飮食勞倦.有傷寒.有中濕.此之謂五邪.もし仮に心が病んだとして,そしてそれが風に中っていたとして,どうやってそれを知るのか?
假(かりに…だとするとの意)令心病.何以知中風得之.
それは赤い色で解る。なぜなら肝は色を主りその色は青。心なら赤,
然.其色當赤.何以言之.肝主色.自入爲青.入心爲赤.
脾なら黄,肺なら白,腎なら黒。
入脾爲黄.入肺爲白.入腎爲黒.
色を主る肝が心に邪を与えたので,色の赤で知ることが出来る。その病は身熱,脇下が張って痛く
その脈は浮大で弦である。
肝爲心邪.故知當赤色也.其病身熱.脇下滿痛.其脉浮大而弦.
傷ったのが暑で有った場合はどうやって解るのか?
何以知傷暑得之.
臭を嫌がる事で解る,何故なら,心は色を主りその臭は焦。脾なら香,肝なら羶,
然.當惡臭.何以言之.心主臭.自入爲焦臭.入脾爲香臭.入肝爲羶臭.
腎なら腐,肺なら腥。暑で傷られた心の病はその臭を嫌がることで解る。
入腎爲腐臭.入肺爲腥臭.故知心病傷暑得之也當惡臭.
その病は身熱で頭が熱くイライラするノイローゼ,心の部分が痛み,その脈は浮大で散である。
其病身熱而煩.心痛.其脉浮大而散.
飲食や過労ではどうか?
何以知飮食勞倦得之.
苦味を喜ぶ事で解る。虚は食欲をなくし,実は食べたがる。どうして解るかといえば,脾は味を主る。
然.當喜苦味也.虚爲不欲食.實爲欲食.何以言之.脾主味.
肝は酸を,心は苦を,肺は辛いを,腎は鹹を,脾自身は甘を。それで脾の邪が心に入ったことが解る。
入肝爲酸.入心爲苦.入肺爲辛.入腎爲鹹.自入爲甘.故知脾邪入心.
苦味を喜ぶからで,その病は身熱で体が重く横になりたがり手足の収まりが悪い。その脈は浮大で緩。
爲喜苦味也.其病身熱而體重嗜臥.四肢不收.其脉浮大而緩.
傷ったのが寒で有った場合はどうやって解るのか?
何以知傷寒得之.
うわごとや訳の解らない事を言うからで,それは肺は声を主るため。肝は呼,心は言,脾は歌,
然.當譫言妄語.何以言之.肺主聲.入肝爲呼.入心爲言.入脾爲歌.
腎は呻,肺自身は哭。肺の邪が心に入ったことが解るのは,うわごとや訳の解らない事を言うため。
入腎爲呻.自入爲哭.故知肺邪入心.爲譫言妄語也.
その病は身熱で水を被ったようにゾクゾクして,ひどいときは喘息が伴う。その脈は浮大で渋。
其病身熱.洒洒惡寒.甚則喘咳.其脉浮大而渋.傷ったのが湿で有った場合はどうやって解るのか?
何以知中濕得之.
それは汗が出て止まらなくなるので解る。それは腎は液を主るため。肝は泣,心は汗,
然.當喜汗出不可止.何以言之.腎主液.入肝爲泣.入心爲汗.
脾は涎,肺は涕,肺自身は唾。腎の邪が心に入ったことが解るのは,汗が出て止まらなくなるため。
入脾爲涎.入肺爲涕.自入爲唾.故知腎邪入心.爲汗出不可止也.
その病は身熱で,小腹が痛み,足の脛から寒が上がる。その脈は沈濡で大。
其病身熱.而小腹痛.足脛寒而逆.其脉沈濡而大.
これが五邪によって傷られた場合の各々の邪気を判別する法である。
此五邪之法也.