感・傷・中が示す、傷害レベルの原典考察

素問

陰陽應象大論

第二章
第三節
水為陰, 火為陽, 陽為氣, 陰為味. 味歸形, 形歸氣, 氣歸精, 精歸化, 精食氣, 形食味, 化生精, 氣生形. 味傷形, 氣傷精, 精化為氣, 氣傷於味.

水は陰、火は陽、陽は氣を陰は味を為す。味は形に帰し、形は氣に帰し、氣は精に帰し、精は化に帰す。精は氣を食し、形は味を食す。化は精を生み、氣は形を生む。味は形を傷り、氣は精を傷る。精が化して氣を為し、氣は味に於いても傷られる


第四節
陰勝則陽病, 陽勝則陰病. 陽勝則熱, 陰勝則寒. 重寒則熱, 重熱則寒. 寒傷形, 熱傷氣. 氣傷痛, 形傷腫. 故先痛而後腫者, 氣傷形也; 先腫而後痛者, 形傷氣也.

陰が勝るは則ち陽の病。陽が勝るは則ち陰の病。陽が勝るは則ち熱。陰が勝る則は寒。寒が重なれば則ち熱。熱が重なれば則ち寒。寒は形を傷り、熱は氣を傷り、氣は痛を傷り、形は腫を傷る。故に先に痛み後に腫るのは者氣が形を傷る也。先に腫れ後に痛むのは形が氣を傷る也。

第五節
天有四時五行, 以生長收藏, 以生寒暑燥濕風. 人有五藏, 化五氣, 以生喜怒悲憂恐. 故喜怒傷氣, 寒暑傷形. 暴怒傷陰, 暴喜傷陽. 厥氣上行, 滿脈去形. 喜怒不節, 寒暑過度, 生乃不固. 故重陰必陽, 重陽必陰.

天に四時五行が有り、以って生長收藏、以って寒暑燥濕風が生ずる。人に五藏が有り、五氣が化し以って喜怒悲憂恐が生ずる。故に喜怒は氣を傷り、寒暑は形を傷る。暴怒は陰を傷り、暴喜は陽を傷る。厥氣は上行し、脈が満ち形を去る。喜怒の不節、寒暑の過度、生にすなわち不固。故に陰が重なれば必ず陽、陽が重なれば必ず陰


第六節
故曰: 冬傷於寒, 春必温病; 春傷於風, 夏生食泄; 夏傷於暑, 秋必咳瘧; 秋傷於濕, 冬生咳嗽.

故に曰く、冬は寒に於いて傷れ、春に必ず温病。春は風に於いて傷れ、夏に食泄を生ずる。夏は暑に於いて傷れ、秋に必ず咳瘧。秋は濕に於いて傷れ、冬に咳嗽を生ずる。

第四章
第四節
故邪風之至, 疾如風雨, 故善治者治皮毛, 其次治肌膚, 其次治筋脈, 其次治六府, 其次治五藏. 治五藏者, 半死半生也. 故天之邪氣, 感則害人五藏; 水穀之寒熱, 感則害於六府; 地之濕氣, 感則害皮肉筋脈.

故に邪風の至るは、風雨が疾走するが如くで、故に善き治者は皮毛を治し、其の次に肌膚を治し、其の次に筋脈を治し、其の次に六府を治し、其の次に五藏を治す。五藏を治すは、半死半生也。故に天の邪氣が感するは則ち人の五藏を害し、水穀の寒熱が感するは則ち六府を於いて害し、地の湿氣が感するは則ち皮肉や筋脈を害す。

診要經終論篇第十六

第四章
凡刺胸腹者, 必避五藏. 中心者, 環死; 中脾者, 五日死; 中腎者, 七日死; 中肺者, 五日死; 中鬲者, 皆為傷中, 其病雖愈, 不過一歳必死.

一般的に胸や腹に刺す場合は、必ず五藏を避ける。心には環(一循環)で死す。脾には五日で死し、腎には七日で死し、肺には五日で死し、鬲には皆、傷中に為して其の病が愈したと雖(いえど)も、一年経たずして必ず死す。

素問の陰陽應象大論の中から拾ってみますと、傾向的には「傷」には相当の症状が書かれていますが、「感」に対しては漠然と「害す」という記載に留まっています。
診要經終論の中の「中」の記載では、直接「死」という文字があてがわれています。
感・傷・中の傷害レベルに関しては、古典の段階ですでに常識化してしまい、直接意味を説明している記載はありません。

感ー害{生活動作に支障のない症状、もしくは微細な他覚症状に留まるもの}
傷ー身体機能や日常生活を侵害する程の症状、もしくは明確な他覚症状
中ー瞬間的に死に向かう障害を受けた事

などの様にどこかに書いてあると明確なのですが、すでに黄帝内経の時代でも常識化が進んで意義が展用化しているのが現状のようです。
霊枢の邪気臓腑病形篇を読み込むと、感・傷・中の傷害レベルについての祖形が解釈できるかもしれません。

霊枢

邪氣藏府病形第四

第一章
第一節
黄帝問於 岐伯曰: 邪氣之中人也, 奈何.
岐伯答曰: 邪氣之中人高也.
黄帝曰: 高下有度乎.
岐伯曰: 身半已上者, 邪中之也. 身半已下者, 濕中之也. 故曰, 邪之中人也, 無有常, 中於陰則溜於府, 中於陽則溜於經.

黄帝が問いて岐伯に曰う、邪氣が人にるとは何か。
岐伯が答えて曰く、邪氣の人に
るは高く也。
黄帝曰く高や下に度
(法則性)は有るのか。
岐伯曰く身の上半分までは邪が
る也。身の下半分までは、湿のる也。故に曰く邪の人にる也は無有がで、陰に於いては則ち府に於いて留まり、陽に於いては則ち經に於いて留まる。