天外魔境 第四の黙示録

             (セガ・サターン)

 大河長編ロール・プレイングゲームの力作。  アメリカを舞台に、洗練されたデザインと圧倒的なボリュームのシナリオ、派手な演出と豪華な声優、おまけに文明論と宗教観を背景に、超弩級エンターテイメントを繰り広げています。

 敵の首領の声を、森本レオがあてていますが、ここらへんにも作り手のセンスが感じられます。淡々とした口調が、かえって底知れぬ不気味さをだしていますね。

 感心したのは、ソルトレーク・シティでの童話のエピソード。絵本から抜け出した悪魔プップクプーによって、町中の人が青い顔になる伝染病がはやりました。主人公の一行も、伝染して顔が青くなってしまいます。その原因を取り除くために、主人公たちは町の画家に2次元の体にしてもらい、絵本の世界に入ってゆきます。(もともと2次元ですが、キャラクターが横を向くと、線になる!)青い悪魔プップクプーを退治すると、町の人の顔は青くなくなり、絵本の話も元にもどりました。その話とは……女の子が、肌色のクレヨンで顔を塗ろうとしたとき、プップクプーはいいました。人の顔は、肌色だけではなくて、いろんな色があるんだよと。女の子は、白、黒、黄色、いろいろな色で顔をぬりましたとさ。

 英語のからんだシャレが多いのも特徴。"Los Angels" は、天使のいなくなった町だとか、"Actress"は、アクト・レス、自分で行動せずに人からの指示で行動するだけの女性だなどなど。

 インディアンの伝説も随所に現れ、ゲームに深みを加えています。昔、橋は清らかな涙が虹になって作られたが、今は清らかな涙がどこにもなくなったので、橋は機械の力でつくっているなど、心の奥にひびく話が多くて、いいですね。
 アイドルに心を奪われ、親を省みない子供たち。ただ食うことに専念する人々の町。TVの放送が絶対の権力をもった町。これほど多彩な文明批判を盛り込んだゲームは初めてです。

 その他にもゲームの要素を、これでもかこれでもかと詰め込んでいます。メインのシナリオだけでもすごいボリュームですが、そこはアニメを数多く手がけている広井王子さんが監修しているだけあって、最後まで飽きさせません。

 基調はホラー仕立てですが、スタッフの皆さんも、さぞ疲労してゾンビのようになって作っていらしたのではと感じるほど、執念の気がただよう作品です。グラフィックスも、音楽も、シナリオも、プログラムも、ホント、よくぞここまで。。。
 エンディングを見た後、スタッフの皆様にお疲れさまでしたと心のなかでつぶやきました。

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