由香のOL日記1 for VOICE
「もっと上、もっと上……。あ、そこ」
あたし、大崎由香、二十歳。この春短大を卒業して、この会社に入ったの。今日は、経理課に配属されてから何度目かの月末。
今は夜の七時過ぎ。会社に残っているのは、あたしと課長だけ。
課長は三二歳で一児のパパ。でも、すっごくいい男で、女の子達の人気の的なの。だから、そんな課長と二人っきりの時を過ごせるなんて、あたし、すっごく幸せ。
「もっと右、もっと右……。そう、そこを押して」
あたし、課長と二人っきりだと言うこともあって、思いっきり甘えた声で言う。だから、あたしが声を上げる度に、課長の視線が突き刺さる。でも、それがまたあたしには快感なの。
八時過ぎ。あたしは身づくろいをすると、課長に挨拶をした。
「お先に失礼します」
「今日はご苦労だったね。気をつけて帰るんだよ」
「はい」
課長は、遅れた分の仕事をやらなくちゃいけないから、まだ残業をして行くんだと思う。
翌朝、あたしはいつものように出勤した。
会社が小さいせいか、あたしの居る経理課には、女の子はあたし一人だけ。だからって訳じゃないけど、みんなが出社する前に、あたしはいつもみんなの机を拭いておくの。特に課長の机は、ホコリひとつ残らないようにね。
みんなの机を拭いていると、いつものように課長が出勤して来た。
昨夜は遅くまで残業した筈なのに、いつもあたしの次に出勤して来る。
「おはようございます」
「おはよう」
いつものように、課長と挨拶を交わす。
これがあたしにとっての一日のはじまり。『おはようございます』って言うと、『さあ、これから仕事をするぞ』って思えるの。
「由香君。昨夜はご苦労だったね。今夜もまた、頼むよ」
課長の優しい言葉に、あたしははにかむように、ちょっと頬を赤くして答えた。
「はい」
いつものように、定時になるとみんなはサッサと帰ってしまった。
みんな、それぞれの生活があるし、給料が安いから、自分の時間を削ってまで会社に尽くそうとは思わないみたい。
あたしもみんなと同じ考えだけど、課長に頼まれたら、『いや』とは言えない。それに、課長と二人っきりになれるチャンスなんだもん。
でも、あたしがここに配属されてから、月末になるとあたしと課長だけが残業するから、課内では変な噂が立ってる。あたしは彼氏が居る訳じゃないから別にいいけど、課長の奥さんに知られたらまずいから、ちょっと心配。
「もっと下、もっと下……。もうちょっと左……」
いつものように課長と二人っきりになると、あたしは甘えた声を上げた。
こんなことが出来るのも、課長と二人っきりだから。もし、他に誰か居たら、絶対に出来ない。
「そこを引っ張って。そう、もっと引っ張って……」
課長の視線が、あたしの全身を舐め回すのが判る。だから、声をもっと抑えなくちゃいけないのに、つい大きくなっちゃう。
「もっと広げて……」
あたし、動きが少し鈍くなったことに、ちょっと苛立つ。でも、それは絶対に口にはしない。だって、一生懸命あたしのために尽くしてくれてるんだもん。そんなこと、言えないわよ。
「そう、そこに入れて!」
中で、激しく動く。
「由香君……」
「ふ「「う」
課長の声に、あたしは大きく息を吐き出すと、終ったことを知った。
翌朝。今日もいつものように出勤して、課長と挨拶を交わす。
ここのところ、毎日残業が続いているのに、ちっとも仕事が捗らない。もう、やんなっちゃう。だから、あたしは乗り気じゃなかったけど、昼間もやることになっちゃった。
「もっと下、もっと下……。あ、行き過ぎ。ちょっと上。そこっ、そこを広げて」
今回は昼間と言うこともあって、ギャラリーが集まって来る。男の人の、やらしい視線があたしに集中する。
あたしは恥ずかしかったけど、やめる訳にもいかなくて、恥ずかしいのを堪えて続けた。
「そこを押して押して……。そうしたら、それをそこに入れて」
課内の男の人で、声が聞こえても聞こえない振りをしてくれたり、あたしを見ても見ない振りをしてくれる人も居るけど、それでも何人かは好奇の視線をあたしに向けてる。
「お願い、もう閉じて」
あたしが声を上げる度に、男の人の視線が突き刺さる。
バンッ!
あたし、思いっきり両手で机を叩くと、立ち上がった。
「もう、いい加減にしてください! いつもいつも、あたしをやらしい目で見て、そんなに楽しいですか?」
「いや、そのぉ……」
一番近くに居た、同期で入った上野君が口篭る。
「そうだぞ。今は仕事中なんだ。人のことはいいから、まずは自分のやるべき仕事をやるんだ」
課長が、あたしの味方になってくれる。でも、それって当然よね。あたしにこんなことさせてるの、課長なんだもん。
だけど、ホントにもういや。あたし、会社でパソコンなんか、使いたくない!
この春から、会社に最新のウインドウズが入ったんだけど、あたしが学校で習ってたやつとはちょっと違うの。
ウインドウズの名前が『Windows Ver.XX』って言うのから、『Windows for VOICE』って変わったの。で、今までマウスを使って操作していたのが、全部音声入力になったの。そして、あたしはこの時に使う命令が大っ嫌い!
マウスカーソルって言う矢印を上に持って行くには『上』、下に持って行くには『下』って言うの。アイコンを押す時は『押して』、二度続けて押す時は『押して押して』って言うの。そしてウインドウを開く時は『開いて』、閉じる時は『閉じて』って言わなきゃいけないの。
年頃の女の子が、こんなことばっかり言ってたら、エッチしてるみたいで恥ずかしいじゃない? だから課長が気を使って、あたしがパソコンでワープロや表計算ソフトを使う時は、残業時間に誰も居なくなってからやるようにしてくれたの。だけど、仕事が間に合わない時は、昼間もパソコンを使わなくちゃいけないから、男の人のやらしい視線があたしに集まる訳。
ホント、コンピューターのソフトを作る人は、女の子も使うんだってことを、もっと考えて作って欲しいのよね。 fin
作者のコメント:柳あきら
コメント:ちょっとエッチっぽい小説はいかがでしたか? これからも、由香 ちゃんはお仕事に励みますから、応援して上げてくださいね。
お便りお待ちしています。
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