<インナー・スペース>


白い部屋、ほの明るい、光源は何処か不明だが、ぼんやりとした光が、私の周囲を 照らしている。そこで私は、ベッドに横たわっている。どこ? 病院? なぜ? ど うして?

私は、身体が。私の身体が何かに侵されているような感じを感じた。『トクン、ト クン……』規則正しく動いている心臓の音のほかに、何か聞き慣れない、異質の音が 聞こえる。
『何だ、何なんだ。この不快な音は』
私は、私の体の上に掛けられていた布を、払い除けようとした。
『?!』

何かおかしい、いつもの私の腕ではない。何かが違う。私は、起き上がった。

ベットの上に座る。異質な音は、私の身体の内部から外部へと向かっているような ……あるいは、幻聴なのかもしれない。しかし、何かに蝕まれているような感じ。な んなんだ。私は両腕をベッドの枠に打ちつけた。夢ならば、覚めよ!と願いつつ。

ベツドの枠の打ちつけた瞬間……私の腕は……。
痛みは、私の身体を走らなかった。私の腕は『砂』となって、シーツと枕の上に落ちた
そして……まるで逆転撮影を見るように、私の腕に『砂』は戻っていった。何事もなかったように。

私は、意識が遠のくのを感じた。

ここは、何処だ? ふたたび意識が戻ったとき、私は蛮刀をもって立っていた。
何かが近ずいて来る。『ヤツラ』だ。私は、逃げた。なぜか、『ヤツラ』は、確実に私を追って来る。着実にその距離は、縮まっていった。捕まつた!と思った瞬間、私の手に握られていた蛮刀が、閃いた。

それが、戦いの始まり。「「『ヤツラ』不定形生命体。好んで、二本足で歩く鳥人の姿をする「「手ごたえはあった。しかし……『ヤツラ』は、二つに切られた身体を丸くしたと思ったら、すぐに再び、鳥人の姿となった。2個体の……。
私は、逃げた。ただ、ひたすらに……街のなか、道路、etc。……車一台、人独りすら出会わない。何故? 蛮刀を持った手は、しだいに、血に染まって……十体に

一体。いや、一五体ぐらいだろうか、切られどころが悪いのか、死んだ『ヤツラ』が、いる。切り方があるのかもしれない。しかし、考えている暇はない。絶対的に、『ヤツラ』の方が多いいのだ。身体、私の身体が、限界に達している。特に、足が……。

フッと私の頭に、一つのことが浮かんだ。『ヤツラ』は、音と気配で追っている。私は、遠くに見えるガラクタの山に向かって走った。ある考えをもって……。
ガラクタの山に逃げ込んだ私は、丁度逃げ込むむのに適した車を見つけた。そして、力を振り絞って、追って来る『ヤツラ』に向かってガラクタの山の一つを崩した。
大きな音とともに、ガラクタは崩れた。私は、その音とともに車の中に逃げ込んだ。

『ヤツラ』が出て来るまでに呼吸を整えて、気配を殺さなければならない。車の中で私は息を殺し、心音すら止めてしまいたい思いのまま待った。『ヤツラ』が行き過ぎてしまうのを……。
『ヤツラ』は私を探している。もう少し、もう少しで、『ヤツラ』は行き過ぎる。
その時、蛮刀が乾いた音を立てた。振り返る。『ヤツラ』に気づかれた! 動けない。早く『ヤツラ』に居所を教えるだけ。『ヤツラ』はどんどん近づいてくる。

No1176
 問題ナシ。攻撃指数増加。
 ランク『矯正』。攻撃指数増加……。

私は、見知らぬ公園に立っていた。小さな公園。ブランコに滑り台と砂場しかない。家々の間に、申し訳なさそうにある公園。子供が砂場で遊んでいる。私はブランコのほうに歩みよった。ブランコは空いていた。ブランコは『キーキー』と音をたてて渋々動いた。平和な風景……安心感。

突然、排気音が聞こえた。多分バイクだろう。せっかくの平和を……。私は、そのまま ブランコを漕ぎ続けていた。近づいてくる排気音、私は目を開いた。そこには、黒の上下に身を包んだ人間が、公園の中にバイクを乗り入れよう……いや、乗り込んできた。

『何! 一体何をするつもりだ』
子供たちは気づかずに砂場にいる。無邪気に。
バイクに乗った人間は、ハンドルを砂場に向けた、子供たちの居る砂場に……。
『何をするんだ! 止めろ! よせ!』
私が声を出す暇もなく、バイクは砂場に突っ込んで行った。子供たちの遊ぶ砂場に。

全ては、一瞬にして終った。
「何をするんだ!」
私はバイクの人間を睨みつけた。
バイクの人間は、気づいたように私を見、ヘルメットを脱いだ。
そこには、私の顔があった。喜びを顔に表わした私の顔が……。
子供たちの血を吸って、変色した砂場を見て笑うと、再びバイクに乗って去って行った。
私は、そこに立ち尽くしていた。

No1176
 異常反応、攻撃指数、許容限界超過
 ランク『KILL』異常反応 異常反応

私は座っている。黒いスプリングの長椅子の上に。部屋には、香油の香りと汗の臭いが混じっている。私は何を、これから何が起きるのか知っていた。私は鎖帷子を着た私の姿を姿見に写して納得すると、再び座った。
そして、私は待ち続けた。
「時間だ!」
私は呼ばれ、地下道を通って行った「「ここは闘技場「「一条の光が見えてきた。歩き続ける、人々の歓声が私の周囲を覆う。ゆっくりと、兜を被る。向かいの門を見た。『ヤツ』が来た。歓声が再び大きくなる。薄い鎧を着た『ヤツ』が。『ヤツ』の手に武器が渡された。私にも、古典的な剣。それが今回の私の武器。
闘技場の主人が、開始の合図をしようとする。湧き上る歓声。

No1176
 任務終了

明るい部屋、まぶしい光、軽い疲労感。
「おい、良く帰って来たな」
久し振りに聞く肉声、懐かしい。懐かしい? 帰って来る? 途切れた記憶。声をかけた白衣の男は、私のほうにタバコを差し出した。自分でも一本くわえ、火を着けた。

「どうでしたか、結果は?」
私は男の差し出した火にくわえたタバコを近付けた。一息吸うと、タバコの先が明々と光を放つ。ゆっくりと煙を吐き出すと、記憶が繋がってくる。
「KILLERを送った。しかし、モニターを見ていて、君が狂ってしまうかと心配したよ。まあ、無事で良かった」
狂うか。確かにこの仕事は狂人が出てもおかしくない。

タバコを吸う。ニコチンが、体にしみ渡っていく。
「自分でもそう思いますよ。ただ、悪運が強いだけだってね」
「しかし、さすがだな。No1は、悪運だけじゃないだろう。でも、君を送ってもらって良かった。並みの連中では、狂っちまうだろうからな。まあ、ゆっくり休んでくれ」
「そうせてもらいます」

白衣の男は、出て行った。出かけに、
「睡眠薬か精神安定剤を、持ってこようか?」
「いえ、大丈夫です」
「そうか」
そう言って、部屋を出て行った。

私は、精神感応者。
所属、人民監視局。
仕事、人の夢の分析の仲立ち。

私は、短くなったタバコを揉み消した。


  作者のコメント

サイコダイビングという言葉と自分の見た夢を元にしています。
こんな夢を見ているからって検査官を送ってこないで下さいね。


お便りお待ちしています。
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