ぽかぽかと暖かい、小春日よりの冬の日。
あたしゃ、窓辺で日向ぼっこと、しゃれ込んでいた。こんな日は、昔のことを思い出すねえ。人生って、いろいろあると、人間は言うけど、猫生(ビョウセイ) だって、いろいろあるんだよ。何たって、あたしゃ、十年も生きているんだからね。こらこら、猫が十年も生きたら『猫又』だなんて、お言いでない。あたしの尻尾はまっすぐだよ。迷信さね。
さて、何から話そうかね。
子猫(コドモ)の事でも、話そうかね。あたしゃ、三毛猫で、しっかり女だから、良く、もてたよ。隣の三毛と良く喧嘩したけど、負けなかった。今でさえ、恋の季節(ジ-スン)になると、男猫が、来るんだよ。どうだい。
そういえば、三毛猫は、女しかいないって、知ってるかい? なんでも、遺伝的にそうなっているらしいがね。確かに、あたしの産んだ子供の中に、三色の毛の混じった子猫が産まれたことが数回あるけど、お乳の吸いが悪くてねえ、おまけに、飲みが悪いから、育っていかなくてねえ。人間が、他の子猫を動かしてやっても、結局、死んじまったよ。突然変異とかいうのは、育たないのかねえ?
産まれてすぐの子猫は、食べてあげたよ。ほかの動物に食べられるくらいなら、あたしの胎内に戻してあげようと思ってね。悲しくて、淋しかったよ。淋しいといえば、子離れも淋しいよ。一人、一人、減っていって、最後の一人が連れていかれた日は、信じられなくて、一日中、家の中を、呼び回ったもんだ。
一番遠くに行った子猫は、九州迄、トラックに乗っていったと、後で、聞いたよ。猫生いろいろあるけど、やっぱり、一番は子供と一緒に捨てられた事かねえ。人間は、『あげた』というけど・・・。まあ、鼠も居たし、子供に猟を教えるには、良かったけど、子供が育つにつれて、あたしも子供が、うっとおしいし、子供もあたしが邪魔らしくて、一人で、帰路についたんだよ。大変だったねえ。何せ、猫は犬みたいに臭いで帰れないし、行きは車だったしねえ。それでも、どうにか帰ってきたら、さすがに智恵ちゃんが泣きながら、迎えてくれたよ。でもそのとき、あたしゃ後から子供が来ているかもと、気が気でなくてね、外にむかって、泣いていたよ。
ああ、智恵ちゃんは、ここの家の子供でね、あたしの飼い主。他に、マスターと呼ばれる、智恵ちゃんの父さんとママさんの三人家族。智恵ちゃんはあたしのママのつもりでね、一緒に寝ようだの言うんだよ。まあ、暖かいから、一緒に寝てるけどね。
寝入った智恵ちゃんは耳元で鳴いても、顔をなめても、ダメというときがある。普通は、ここまですれば布団に入れてくれるんだけれど、たまに、髪の毛を引っ張らないと、入れてくれないんだよねえ、今日は、すぐに入れてくれるかねえ。
布団といえば、一度、智恵ちゃんの布団のなかで、死産をしちゃつた事もあったねえ。子供を産んだことがあるかい? 産む前の痛みは、並みじゃないよ。あたしゃ、智恵ちゃんにさすってもらうけど、止められると辛くてねえ、つい、『もっと』と泣くんだよ。あの日もあたしゃ痛くてね、智恵ちゃんにさすってもらいながら、一緒に布団に入ったんだが、智恵ちゃんが寝入って、明け方さ、産気づいた、智恵ちゃんの布団で、産んじまった、死産だったよ。あたしの体もおかしくてね。確か、二人だった、あたしの子供は。智恵ちゃんも起きたとたん、真っ青に成っていたよ。そりゃそうさ、ネグリジェの半分は血だらけだし、布団のなかには、死んで産まれた子猫が居るし、あたしゃ、下半身に血を付けてさ、よたよたしてるんだからね。
ああ話が飛んじまったね、年をとると、どうもいけないねえ。そうそう、後を追ってきた子猫は居なかったよ。
あたしを捨てることになったのは、智恵ちゃんのぜん息のせいでね。帰ってきた今じゃ、お医者さんには、捨てたことになっているそうだよ。まあ、一緒に寝てりゃ治るわけもないだろうがね。あたしのこの毛皮は生まれ付きだから、どうにもならないしね、風呂も嫌いだしね。
さてあたしゃ疲れたよ。少し休もうか。
ああ 眠い事・・・・・。
作者のコメント
昔我が家にいた猫をモデルにして書いてみました。
ちょっとだけスプラッタしてるところもあります・・・ ごめんなさい。
お便りお待ちしています。
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