写真

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僕の目の前に一枚の写真がある。

明日叔父が来ると言うので出してきた その写真は僕が昔、叔父の部屋から失敬して来たものだった。
きっと、叔父は気が付いていないだろう。

あの頃の叔父の部屋は、そりゃあもう、足の踏み場がないほど散らかっていることが多かった。
だけど、僕はその部屋が嫌いではなかった。叔父のところに行けると、わくわくしていた程だった。
叔父の部屋には色々な本や、機械の他に色々な物があった。足の踏み場がないと言ったが、叔父は何処に何があるのか判っているらしく、僕が聞くと、すぐに、必要な物を出してきてくれた。

僕は叔父と叔父の部屋が好きだった。

写真を見た、僕の好きなバイクが写っていた。このバイクが写っていたから、失敬してきたのだった。その後も、叔父のところに行ったが叔父は何も聞かなかった。
知っていたのだろうか?
それとも、そんなに大切なものではなかっただけなのかも知れない?

僕はグラスの中のウイスキーを一口飲んだ。
一人暮しを始めた僕の部屋は、叔父の部屋を笑えない程散らかっている。

―整理のへたさは、遺伝かも知れない―

写真を見る。

僕の大好きなBMWのバイクに女性が座っている。跨っているのでも、乗っているのでもない。何故なら、彼女は胸元の大きく開いたロングのパーテイドレスを来ているのだから、そして、手には長い手袋。何処かのパーティに出ている姿だった。
その彼女が片袖だけ、皮ジャンに手を通し、あの大きなバイクをまるで自分の物だとでも言いたそうな顔でロングドレスにハイヒールのまま腰掛け、ポーズをとるわけでなく、そのバイクに座るのが当然という顔で座っているのだった。それがアンバランスなはずの、バイクとロングドレス姿を妙に馴染ませていた。

一体、叔父とどういう関係だったのだろう?
それも気になるが、それよりもあの彼女の姿を撮ったのがもし叔父だったのなら、どんな姿をしていたのだろう?
僕はその時の叔父の姿を見てみたかった。

一枚の写真は、僕が年を取った分だけ見るところが変ったみたいだ。

僕は氷の解けてきたウイスキーをまた飲んだ。
彼女のミラーを触っていない方の手に、カクテルか、シャンパンでも持たせてもいいねなんて考えながら・・・

明日、叔父が来たら、謝りながら、これを見せてみよう。
どんな顔をするだろうか?
「こいつ、探してたんだぞ」
「懐かしいなぁ・・・」
「こんなのあったっけな・・・」
「やばいなぁ、何処にあったんだ?」
それとも、苦笑して、ポケットに仕舞うか?

僕はその時の叔父の顔を想像して、楽しんでいた。
すべては、明日叔父が遊びにくればわかる。
僕も少しは飲めるようになったから、一緒に飲めるだろうか?

今夜の僕は、叔父の部屋に遊びにいけるとわくわくしていた頃に戻ったようだ。
たった一枚の写真で。
 


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