別ページにあげた4点が舞台の大きな特徴ですが、これに伴って建物の構造も民家などと異なった木組みがみられるのです。

 まず天井の構造ですが、二重がすっぽり入る空間を設けるために、梁(はり)がありません。建物を構成する四隅の柱を通す4本の梁・桁(けた)に数本の柱を立てて屋根を支えて、中央に二重の入る空間をつくり、その柱に二重を操作する器具等が取り付けられています。

 梁のない屋根裏

 この大変複雑な木組みのために、明治15年の移築の時に棟梁の永井長治朗の甥の又八でさえ屋根の解体ができずに、そのまま運んだと伝えられているほどです。

 奈落の構造も、二重(にじゅう)が中央に入る空間を設けるために、地表から約9尺(約273cm)堀くぼめ、周囲を石垣で整えて、中央に中心礎石(そせき)を据え、それに直径・深さとも約4寸(約12cm)ほどの孔(おな)を掘り、これに茶玉(ちゃだま)と呼ぶ凸レンズ状の石をベアリングとして入れ、その上に大心(おおしん)と呼ぶ四角形状の独楽様(こまよう)の構造物をはめこみ廻転軸とします。そして、その上部突起に大軸(おおじく)と呼ぶ約1尺角の欅材の梁木を取り付け、その中心に補助軸を十文字に組み、廻転主体とし、これに渡した梁木上とに各1本、計6本の柱を立て、これによってナベブタが支えられるという構造になっています。

礎石と茶玉/大軸と補助軸

 この他、唐破風(からはふ)の下座(げざ)(義太夫語り、三味線引きなどの席)、スッポンの付いた花道(この地域では花橋)、中幕(なかまく)の切落しによる三重(さんじゅう)の演出などの工夫が凝らされており、歌舞伎系固定式民家型農村廻り舞台としては全国唯一で、最古の物の一つと推察されています。

 舞台左が花橋、右隅か下座

 さらに、開演にあたっては、山から根付の杉を切り出し、ハネギと呼ぶアーチ形の屋根をかけ、同じく杉の木を組んでワタリギと呼ぶ通路で区切る平土間席、同じく杉、柴を用いて両側に設ける桟敷(さじき)などの客席構造もとても珍しいものです。

 ワタリギと平土間席   

ハネギ  

ハネギの根桟敷席

 

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