舞台の特殊機構


ガンドウ機構

 

        舞台南側のガンドウ(2枚の壁板)       ガンドウを返しているところ(奥の平らと点前の斜め)

 普段は建物の壁になっている板が、歌舞伎開演時には、左右・奥と三方に開くようになっています。それぞれの壁板の下側が蝶番のようになっていて上側が外側に倒れて広がります。これを「ガンドウ返し」といいます。この仕組みによって舞台面が二倍以上に広がります。

遠見(とおみ)機構

提灯の奥が遠見(千畳敷)

 倒された奥壁は一段高い三重(さんじゅう)と呼ばれる舞台面になります。そしてその奥に奥行きを深く見せる遠見という背景をつけます。これは場面によって千畳敷とか御殿の間など違う背景にします。

 そして、三重の前に跳障子(はねしょうじ)という長さ5間(約9m)の襖をつけ、必要に応じてこれを跳ね上げて三重を開きます。

柱立廻(はしらたてまわし)式廻転機構

    上三原田の柱立廻式          独楽廻式             皿廻式

 平(ひら)舞台いっぱいの廻転部(ナベブタ、径20尺)は、6本の柱によって支えられています。そしてこれを押すことによって廻転させます。

その他の舞台は、独楽廻(こままわし)式や皿廻(さらまわし)式ですが、この上三原田歌舞伎舞台は唯一独特の方式です。

廻っている舞台

 

    奈落で舞台を廻す人たち            舞台裏で廻す様子

 舞台面は二重(にじゅう・後述)に取り付けた長さ5間の塀(へい)と呼ぶ襖11を入れた障壁(しょうへき)を平舞台(横5間奥行4間)の中で廻すので、これを柱や奥壁にあたらないように移動する塀廻し(へいまわし)という技術を要する操作を行います。

....例えば、「先代萩竹の間の場」では、表は竹の絵、裏は塀の襖をいれ、反廻し(180度)すると直ちに野舞台が演出できます。

セリヒキ機構(二重セリ)

下がる二重

  

写真のシャチ(左が天井、右が奈落のもの)を廻すと二重がセリ上がったり下がったりする

 セリというのは、普通奈落(ならく)から役者がせり上がる機構(これをスッポンという)をいいますが、この上三原田歌舞伎舞台は、二重(にじゅう)という横15尺(454.5cm)、奥行5尺(151.5cm)の小舞台を重ねた形で、天井と奈落の双方からせり上げ、下ろすという通常とは異なった二重セリという機構です。

 これを用いる場面は、廻転部(ナベブタ)を廻しながら上下することが多いものとなります。

 このような機構は、日本国内はもとより世界にも例をみない特殊な珍しいものです。
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