「インフォームドコンセント」といいますが

 インフォームドコンセントが言われて久しいですが、情報を正確に伝えるというのはなかなか難しいことです。

 まずは言葉の問題です。
 専門用語が難しいので代わりにさまざまな比喩を使うということはよくありますが、当然正確さは犠牲になります。例えば「炎症」のかわりに、ばい菌が悪さをしている、表面がただれている、内蔵が腫れている・・・とやるわけですが、これで医学的な実際がどのくらい伝わっているのかいささか心許ないです。

 数字もなかなか正確には伝わりません。
 検診の結果を一覧表で渡せばきちんと情報が伝わるかというと、そう簡単にはいきません。検査結果の数字は、全部が同じ比重で評価されるわけではなく、また変化の幅も検査の種類でいろいろですが、そういうことはあまりよく知られていない(あるいは説明されていない)。それで非常に苦にするか全然問題視しないかといった、両極端の解釈になります。

 そうでなくても、大きい数字は小さめに、小さい数字は大きめにとられる傾向があります。統計学で確率5%以下とは「ほとんどゼロである」という意味ですが、むしろ「確率はゼロではない(からまだ見込みがある)」と考える方が多いのでは?

 難しい難しい、くわばらくわばら。


「くらしと医療」1994年10月号


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