インサイド介護保険 その8

某県でなんと全盲で独居の方が「自立」と認定されました。もちろんこの方は「ヘルパーさんなしでは生活できない」と不服申し立てをしました。それが某地方紙に掲載され、その記事を心ある方がWEBサイトで紹介したので、私の知るところとなったのです。

公開されている情報はこんな感じです。この方は55歳、糖尿病性網膜症で失明し、現在は盲導犬とともにひとり暮らし。入浴(シャワー浴)、部屋の掃除、洗濯は自分で行うほか、つめは毎日ヤスリがけして手入れしている。ここら辺の事情が調査に反映されて自立となったのであろう。この方には絶対出来ない調理や買い物は、調査項目にはない......

うーん、この方少なくとも「要支援」には認定されるはずですがねぇ。

まず、浴槽の出入り。普段の入浴がシャワー浴の場合、それは浴槽に入る習慣がないと判断されます。その場合は、実際にやるとしたらどうなるかで判断されます。だから「一部介助」あたりが選択されるはずです。

次、つめ切り。調査要綱にはつめが「切れるか」とあります。この方は「切れない」からヤスリがけしているわけで、「一部介助」か「全介助」が妥当でしょう。

そして、視力。全盲は「ほとんどみえない」にチェックすることになっています。

この時点ではまだ該当項目が3つですから「自立」です。しかしこの方は「買い物」はヘルパーさん頼み。とすれば「金銭管理」を全部自分でやっているわけではない!少なくとも買い物の時の金銭の出納はヘルパーさんがやっているわけで、金銭管理は「一部介助」!バンザーイ、これで一次判定は「要支援」。あとは主治医が頑張って意見書書けば「要介護1」も夢ではない。

「こんなの屁理屈だ」って笑いますか?でも、屁理屈だろうがこじつけだろうが、ともかくまずは吠えなくちゃね。それが現代の猟犬です。


「くらしと医療」1999年12月号


次のを読む
前のを読む


Indexにもどる
トップページにもどる