七十五難の各分野の解釈傾向

七十五難曰.經言.東方實.西方虚.瀉南方.補北方.何謂也.
七十五の難に曰く
経にいう東方実し西方虚せば南方を瀉し北方を補うとは何のいいぞや。
経絡治療要綱(福島弘道)

「七五難は、変症であり急性実症である。」
田中禎一先生、渡辺賢一先生の教育現場での六十九難七十五難(05-04/17)
「教育現場では七十五難については、ノータッチである」
岡山ライトハウスから
「これは肺虚肝実(金虚木実)型のように、六十九難の治療原則が適用されない一種の変証型に対する治療原則を述べたものである。
五行の関係から見ると、金剋木であり肺実肝虚が普通であるが、これが肺虚肝実と逆転しているところに変証といわれるゆえんがある。」

1:

然.金木水火土.當更相平.
しかるなり金木水火土まさにこもごも相平らぐべし。
東方木也.西方金也.木欲實.金當平之.
東方は木なり。西方は金なり。木実せんと欲せば金まさにこれを平らぐべし。
火欲實.水當平之.
火実せんと欲せば水まさにこれを平らぐべし。
土欲實.木當平之.
土実せんと欲せば木まさにこれを平らぐべし。
金欲實.火當平之.
金実せんと欲せば火まさにこれを平らぐべし。
水欲實.土當平之.
水実せんと欲せば土まさにこれを平らぐべし。

難経解説(南京中医学編)〜解釈は経絡治療要綱と同じ〜
「五行の相剋関係の意義を説明している。五臓の間には、必ず相生・相剋関係が働いて平衡を維持している。その平衡が失われると病態となる。」

意釈八十一難経(小曽戸 丈夫, 浜田 善利-築地書館)
「五行の木火土金水というものは、互いに張り合いながら平行を保っているのです。
 東方は木で西方は金です。
 木が実して横暴になろうとすると、金が頭を抑えて平行を保とうとします。
 火が実して横暴になろうとすると、水が頭を抑えて平行を保とうとします。
 土が実して横暴になろうとすると、木が頭を抑えて平行を保とうとします。
 金が実して横暴になろうとすると、火が頭を抑えて平行を保とうとします。
 水が実して横暴になろうとすると、土が頭を抑えて平行を保とうとします」

難経の研究(本間祥白著〜「経絡治療講話」「難経本義」含む〜)
「五行の金水木火土はお互い相剋関係があって、亢ぶり実せんとするものはそれを剋するものが立ってそれを平らげんとする作用がある。」


傾向


問文「東方実、西方虚」の部分への返答ですが、本当にそのまんまの五行の相剋論という解釈です。
この医学のごく当然の、当たり前すぎるくらいの答えですが、原典で言うとおそらく下記の箇所なんかが、次の文節も含めて元になるのではないかと思います。

「素問」陰陽應象大論篇第五の第三章
黄帝曰: 余聞上古聖人, 論理人形, 列別藏府, 端絡經脈, 會通六合, 各從其經, 氣穴所發各有處名, 谿谷屬骨皆有所起, 分部逆從,各有條理, 四時陰陽, 盡有經紀, 外内之應, 皆有表裏, 其信然乎.
黄帝曰く余は上古の聖人に聞く、人の形を論じて理するに藏府の別を列 べ、絡や經脈の端が六合(四方天地)と通じて合し、其の經は各に從いて氣穴の発する所には各に處名を有し、谿谷(関節陥凹部)に屬(属;つく、よせ集める)す骨は皆起こす所と有し、分部の逆從は各に條理(物事の道理のすじみち)を有する。四時の陰陽は盡(ことごとく尽くす)と經に紀し、外内の應(反応)、皆表裏を有すると有る。其れを信ずるは然乎(なぜか)。

岐伯對曰:
東方生風, 風生木, 木生酸, 酸生肝, 肝生筋, 筋生心, 肝主目.
其在天為玄, 在人為道, 在地為化. 化生五味, 道生智, 玄生神, 神在天為風,
在地為木, 在體為筋, 在藏為肝, 在色為蒼, 在音為角, 在聲為呼, 在變動為握, 在竅為目, 在味為酸, 在志為怒.
怒傷肝, 悲勝怒; 風傷筋, 燥勝風; 酸傷筋, 辛勝酸.

南方生熱, 熱生火, 火生苦, 苦生心, 心生血, 血生脾, 心主舌.
其在天為熱, 在地為火, 在體為脈, 在藏為心, 在色為赤, 在音為徴(チ), 在聲為笑, 在變動為憂, 在竅為舌, 在味為苦, 在志為喜.
喜傷心, 恐勝喜; 熱傷氣, 寒勝熱, 苦傷氣, 鹹勝苦.

中央生濕, 濕生土, 土生甘, 甘生脾, 脾生肉, 肉生肺, 脾主口.
其在天為濕, 在地為土, 在體為肉, 在藏為脾, 在色為黄, 在音為宮, 在聲為歌, 在變動為
(えずく;えつ), 在竅為口, 在味為甘, 在志為思.
思傷脾, 怒勝思; 濕傷肉, 風勝濕; 甘傷肉, 酸勝甘.

西方生燥, 燥生金, 金生辛, 辛生肺, 肺生皮毛, 皮毛生腎, 肺主鼻.
其在天為燥, 在地為金, 在體為皮毛, 在藏為肺, 在色為白, 在音為商, 在聲為哭, 在變動為咳, 在竅為鼻, 在味為辛, 在志為憂.
憂傷肺, 喜勝憂; 熱傷皮毛, 寒勝熱; 辛傷皮毛, 苦勝辛.

北方生寒, 寒生水, 水生鹹, 鹹生腎, 腎生骨髓, 髓生肝, 腎主耳.
其在天為寒, 在地為水, 在體為骨, 在藏為腎, 在色為黒, 在音為羽, 在聲為呻, 在變動為慄, 在竅為耳, 在味為鹹, 在志為恐.
恐傷腎, 思勝恐; 寒傷血, 燥勝寒; 鹹傷血, 甘勝鹹.

生子
木 火 土 金 水
東方生風 南方生熱 中央生濕 西方生燥 北方生寒
風生木
熱生火
濕生土
燥生金
寒生水
木生酸
火生苦
土生甘
金生辛
水生鹹
酸生肝
苦生心
甘生脾
辛生肺
鹹生腎
肝生筋

○

心生血

○

脾生肉

○

肺生皮毛

○

腎生骨髓
筋生心
血生脾
肉生肺
皮毛生腎
髓生肝
肝主目
心主舌 脾主口 肺主鼻 腎主耳
其の天に在るは玄(天の色〜空の色は奥深くくらいことから〜地の色は黄とする。「天地玄黄」、奥深くてよくわからない微妙な道理)を為し、人に在るは道と為し、地に在れば化と為す。
化は五味を生じ、道は智を生じ、玄は神を生ずる。
その神が在し 
  �ヨ

/五行�モ

木 火 土 金 水
天に為すは、 風 熱 濕 燥 寒
地に為すは、 木 火 土 金 水
體(身体)に為すは、
筋 脈 肉 皮毛 骨
藏に為すは、 肝 心 脾 肺 腎
色に為すは、
蒼
(草木の青々と
おい茂る様)
赤 黄 白 黒
音に為すは、 角 徴(チ) 宮 商 羽
聲(声)に為すは、
呼 笑 歌 哭 呻
變動(変動)に為すは,
握 憂
(えずく;えつ)
咳 慄
竅(穴)に為すは、
目 舌 口 鼻 耳
味に為すは、 酸 苦 甘 辛 鹹
志に為すは、 怒 喜 思 憂 恐
祖剋
木 火 土 金 水
自傷 怒傷肝 喜傷心 思傷脾 憂傷肺 恐傷腎
相克 悲勝怒 恐勝喜 怒勝思 喜勝憂 思勝恐
自傷 風傷筋 熱傷氣 濕傷肉 熱傷皮毛 寒傷血
相克 燥勝風 寒勝熱 風勝濕 寒勝熱 燥勝寒
自傷 酸傷筋 苦傷氣 甘傷肉 辛傷皮毛 鹹傷血
相克 辛勝酸 鹹勝苦 酸勝甘 苦勝辛 甘勝鹹

○○

2:
東方肝也.則知肝實.
東方は肝なり。すなわち肝実するを知る。
西方肺也.則知肺虚.
西方は肺なり。すなわち肺虚するを知る。

経絡治療要綱(福島弘道著)
肺虚肝実証では、六部定位脈診において
左寸口(心)・関上(肝)は実、
左尺中(腎)・右寸口(肺)は虚を表す。

難経解説(南京中医学院)
「五行の相生・相剋法則によって、肝実肺虚の病証と寫火補水の治法を説明し、その機序の分析を行っている。」
(心肝の火の裕余と肺腎の陰の不足という二つの病証が存在する・補母瀉子や相剋理論を機械的にあてはめず、疾病の所在や伝変の情況を診て治法を決める。)

意釈八十一難経(小曽戸 丈夫, 浜田 善利-築地書館)
「東実というのは肝実のことです。西虚は肺虚のことです。つまり東実西虚は微邪による病です。これでこの微邪による病の治法は南方を瀉し北方を補すという特種な刺法を用いるのです。」

難経の研究(本間祥白著〜「経絡治療講話」「難経本義」含む〜)
「問文に東方実し、西方虚せばとあるがこの東方は木の肝を意味し、西方は金の肺を意味し、肝実肺虚を意味している。」

佐野先生;臨床現場からの解釈(難経研究A班) (2001年3月18日と2005年5月15日の講義から) 
「肝実肺虚の例。肝の病実・肺の病的虚をいう。」


傾向


問文を、病もしくは医学へと転用している箇所。そう解釈していることは共通です。
「意釈八十一難経」の‘微邪’といのは五十難の、
病有虚邪.有實邪.有賊邪.有微邪.有正邪.何以別之.
病に虚邪が有り、実邪が有り、賊邪が有り、微邪が有り、正邪が有る。何を以って別するのか。
然.從後來者爲虚邪.從前來者爲實邪.從所不勝來者爲賊邪.從所勝來者爲微邪.自病者爲正邪.

然り、従いて後より来るのは虚邪、従いて前より来るのは実邪、従いて勝たざる所より来るのは賊邪、
従いて勝つ所より来るのは微邪。自ら病むは正邪。
何以言之.

何を以って言うか。
假令心病.中風得之爲虚邪.傷暑得之爲正邪.飮食勞倦得之爲實邪.傷寒得之爲微邪.中濕得之爲賊邪.
たとえば心病は中風を得るは虚邪。傷暑を得る正邪。飮食勞倦を得るは実邪。傷寒を得る微邪。中濕を得る賊邪。

3:
瀉南方火.補北方水.南方火.火者木之子也.
南方の火を瀉し北方の水を補う。南方は火。火は木の子なり。
北方水.水者木之母也.
北方は水。水は木の母なり。
水勝火.子能令母實.母能令子虚.
水は火に剋。子よく母をして実せしめ母よく子をして虚せしむ。
故瀉火補水.欲令金不得平木也.
故に火を瀉し水を補い金をして木を平らぐることを得ざらしめんと欲す。

経絡治療要綱(福島弘道著)
○火実ー金虚ー木実証となる
(子よく、母をして実せしむ)
○水を補い火を瀉し木実を抑える
(母よく、子をして虚せしむ)

難経解説(南京中医学編)
(上記‘2’に含む)

意釈八十一難経(小曽戸 丈夫, 浜田 善利-築地書館)
「南方は火で、火は木の子に当たります。
 北方は水で、水は木の母に当たります。
 その火を瀉しますと火の勢いが弱まります。火の勢いが弱まると金の勢いが強くなります。金の勢いが強くなると当然木の勢いが弱まってきます。今まで子である火の勢いの強いのが母である木の勢いの強さを支えていたのですから、子よく母を実しむというのです。また水を補しますと水の勢いが強くなります。水の勢いが強くなると火の勢いが弱くなってきます。火の勢いが弱まると金の勢いが強くなってきます。金の勢いが強くなると木の勢いが弱まってきます。そこで母である水を補して強くしてやると子に当たる木の勢いは弱まってくるという理になります。だから、母よく子を虚せしむというのです。」

難経の研究(本間祥白著〜「経絡治療講話」「難経本義」含む〜)
「問文に南方の火を瀉し、北方の水を補うとあるが、五行関係から言って南方は火であって、火は木の子であると言う相生関係にある。また北方は水であって、水は木にとって母に当たる関係である。
そして水剋火の関係にあって、火実せんと欲せば水当に之を平ぐべしと言う前文の如き関係にある。
{子を能く}の子は木の子を指し、火である。母は火の母である木である。木の子である火が実すると其の母である木を実せしめる病を起こす。即ち火実�モ金虚�モ木実と言う順序で火実は金を虚せしめ、更に木実を呼び起こす結果となる、此は病の伝変を意味している。
{母よく子を}の母は木の母で水を指し、子は木の子である母を指している。この文は前文の{子よく母をして実せしめ}の病の伝変と異なり、病をして治療した結果を意味する。即ち木の母たる水を補って実せしめると木の子たる火実が剋されて虚してくる。水虚の補�モ火実�モ火虚と言う結果になる。古い言葉で言えば前文は致病であり後文は治法である。
以上のように火実�モ金虚�モ木実と言う病の伝変の順序があり更に、水補�モ火虚と言う治法の理論が存在するので、金虚木実の病には火実を取り去ることは金虚を救うと同時に更に進んで木実をも治することになるのである。其のために七十五難の治療方法は火を直接瀉するとと共に更に水を補って火実の治療が一方は金虚を救い、一方は木実を治するという方法を説いているのである。」

田中禎一先生、渡辺賢一先生の教育現場での六十九難七十五難(05-04/17)
岡山ライトハウスから
「五方と五臓の関係から東方すなわち肝木が実し、西方すなわち肺金が虚せば南方すなわち心火を瀉し、北方すなわち腎水を補う。
まず、肺虚肝実という状態がどのようにして起こってきたかを考える。今、実を起こしている肝木を中心とする。肝木の子である心火が実証の病を起こすと火剋金により肺金が虚し、肺金の虚は木に対する抑制力が衰えることになり、心火の母である肝木の実を起こすのである。これが病の伝変といった「子よく母をして実せしめ」の意味である。これに対し肝木の母である腎水を補うと水剋火により心火の実が抑えられ、肺金への抑制力が除かれ、肺金が実してくると金剋木により肝木を抑え、肝木の実が解消されるのである。これが治療原則をいった「母よく子をして虚せしむ」の意味である。」

この原則が適用される典型的な脈証は次の通りである→

七十五難の治療原則が適用される脈証
自経が虚なら子経も虚、
自経が実なら子経も実
脈位 肝 心 脾 肺 腎
肺虚肝実 実 実 平 虚 虚
腎虚心実 虚 実 実 平 虚
肝虚脾実 虚 虚 実 実 平
心虚肺実 平 虚 虚 実 実
脾虚腎実 実 平 虚 虚 実

佐野先生;臨床現場からの解釈(難経研究A班) (2001年3月18日と2005年5月15日の講義から)
「南方の火を瀉し北方の水を補う。 」
方位や季節の流れに準えていっているのではないか。心の病実があって肺が虚されたために肝の実が起きた訳。肝と心の実をとり肺の虚を救うのがこの法則の目的である。どのつぼを使ってどうやれとは書いてない。
南方の火を瀉すは火経の子穴か隙穴を使っても良い。北方の水を補うは水の母穴か原穴を使うも良い。 
「子よく母をして実せしめ母よく子をして虚せしむ 」
心の病実を瀉して肺の虚を救う。水を補うことによって火を抑える。火は瀉された上に水から抑えられ重ねて瀉される。その結果火が肺を抑える力を弱められ肺が甦生し肝実を抑えととのう。
ここは陰陽のバランスが崩れた状態を論じているのだろう。したがって難症悪症を扱う変法と言われるのだろう。

<取穴例>

田中禎一先生、渡辺賢一先生の教育現場での六十九難七十五難(05-04/17;岡山ライトハウスの教科書より)
治療穴をどのように選ぶかについては諸説がある。その一例を以下の表に記す。
  証    補穴      瀉穴
肺虚肝実、復溜(金)、行間(火)
腎虚心実、曲泉(水)、神門(土)
肝虚脾実、少衝(木)、商丘(金)
心虚肺実、大都(火)、尺沢(水)
脾虚腎実、太淵(土)、湧泉(木)


傾向


問文「南方を瀉し北方を補う」の部分への返答として「南方の火を瀉し北方の水を補う。南方は火。火は木の子なり。北方は水。水は木の母なり」があります。
「東方実、西方虚。南方瀉、北方補」を母子関係で明確化した文節で、六十九難の法則の流れを継いでいるというのは、共通した解釈のようです。ただ「火は木の子なり」に対して「水は木の母なり」としていて“水は金の子なり”としていない所に解釈のふくらみがあって、そこに相剋関係の展開を入れています。
その相剋関係を使った展開法が次の文節の「水は火に剋。子は能く母を実し、母は能く子を虚す。故に火を瀉し水を補う。金は木に平を得ないと欲す」です。
そこが火実�モ金虚�モ木実となった病状を言い、その病状の原因である火実に、水補�モ火虚が共通項としてあるようです。
ただ「子は能く母を実」と「母は能く子を虚」の使い方や、母や子に対する‘自’の置き方がそれぞれに違い、その部分の整理のために図説を入れてあります。


○


○
○
○

4:
經曰.不能治其虚.何問其餘.此之謂也.
経にいうその虚を治することあたわざれ(不能)ば何ぞその余を問わん。此れこの謂うなり。

意釈八十一難経(小曽戸 丈夫, 浜田 善利-築地書館)
「このようにして瀉火補水の刺法を用いて金を充実させて木との平行を保たせようというのがこの治法の眼目なのです。
 これでまず虚を実してやることのできない内はその他のことなど考えている余地はない。と昔の医書にあるのもここでいう金の虚を補すべき方法をまず考えるということでしょう。」

難経の研究(本間祥白著〜「経絡治療講話」「難経本義」含む〜)
「{経に曰く}と言っても今の内経にはない。此の文章は文字が不足しているために稍々理解しにくい所がある。虚は金虚を指し、其の金虚を治して木実という症を取る、此を出来ないような者は皆粗工即ち下手な医者である。
七十五難の主旨は此処にある。六十九難では実はその子を瀉する事を説いた。七十五難では実は更に虚する所を補って此を平げしめる方法を説いているのである。
〈其の余り〉とは、
以上は岡本一抱の{和語鈔}に従う。
{難経本義大鈔}によると{難経俗解}は木実を{難経評林}は余臓の疾病を{医経}は無能の人という。
では、この本の結論として、金虚木実の六十九難と七十五難を比較した場合
六十九難ー母の土を補い、子の火を瀉す
七十五難ー子の水を補い、子の火を瀉す
となり〈其の余り〉とは、子まで補うほどの変証と捕らえる。」

杉山勲先生の難経
「 「不能治其虚.何問其餘」を〈其の虚は治すること不能にて.其の余を何と問うか〉と読み、急性の実証であって難病ではない。」

佐野先生;臨床現場からの解釈(難経研究A班) (2001年3月18日と2005年5月15日の講義から)
井上先生は‘応気の実’と解釈された。


傾向


この文節の解釈は大きく二つに分かれます。そして細かくはそれぞれの文献で、解釈が違います。
大きく二つのうちの一つは「難病である」もう一つは「大変な実証である」です。

○

○

○

鍼灸師のための漢方概論(佐野昭典、時任基清編著ー日本ライトハウス)

「変証と言われるもので、2経が同時に病んで、更に甚だしく3経4経にも波及して、六十九難の法を用いても治せない場合に用いる。」
「この方法は、病んでいる2経を取穴せず、他の2経の母子経を取穴するのでもなく、別の2経を取穴し、一挙両得の効を収める」
肝実肺虚ー 腎を補し、心を瀉す
心実腎虚ー 肝を補し、脾を瀉す
肺実心虚ー 脾を補し、腎を瀉す
腎実脾虚ー 肺を補し、肝を瀉す
脾実肝虚ー心包を補し、肺を瀉す

○

○


備考


●「金木水火土、相平らぐべし」は、
この難は相剋関係で考えてくださいと、宣言しているのではないかと思います。

●「東方は木なり。西方は金なり」
これも当たり前のことなのですが、六十九難の素っ気なさから比べると大変丁寧な文章の進めたかをしています。
実はこれは全然当たり前のことではなくって、ものすごく当時というか五行論的には画期的、あるいはあり得ないことなのでわざわざこう書いたのだと思います。なぜなら方角の五行に相剋関係で考えろと言っているわけです。どう考えても、東が西を剋するようなそんな力関係が働いているとは思えません。
だから「木実せんと欲せば金まさにこれを平らぐべし」とした上で更に「〜まさにこれを平らぐべし。」という丁寧さを必要としたのだと思います。

●「東方は肝なり、西方は肺なり」と言うのも、
いまでは五行の表から見ればごく当然のことですが、当時としてはこの連結は、やはり画期的なことだったのかと思えます。

●「南方の火を瀉し北方の水を補う、南方は火、火は木の子なり。
                 北方は水、水は木の母なり」は、
ところが方法論は違う!というのです。その違うというのはどういう事かと言いますと「東方」は「木」でしかも「肝」だと言っているのに対して「南方」は「火」だとしか言っていません。そこを瀉せと言っています。なぜなら火は木の子だからだというわけです。「火」の何かを瀉するわけです。「心」だとは言っていません。次に「北方」の「水」を補せと言っています。それは木の母だからですが「腎」だとは言っていません。「肝」だから「心」を瀉したり「腎」を補したりする方法ではないというのです。そういう方法が治療として成立するのであれば、問文は「肝実し肺虚せば心を瀉し腎を補うとは何か」でも良いのでしょうが、そうではないのです。しかしこの文節の範囲では「木」に対して六十九難の方法を提言しているにすぎません。
ただ直接「西方が虚す」に対応する記載がないのです。

●そこをどう解釈するかが「水は火に剋」という、
突然の展開なんですね。虚実は金木なので金剋木という流れではないのです。なぜこの展開をしたかという理由を歴代の研究者は「子は能く母を実し、母は能く子を虚す」に求めたのです。それが図説のような違いになったわけです。そしてこの文節で「西方が虚す」への対応を、相剋論から導き出さなければならないのは「火を瀉し水を補い、金は木に平を得ないと欲す」という一文が文末に来ているからです。

●最後の「虚を治することあたわざれ(不能)ば何ぞその余を問わん」は、
わたしは読み方としては、井上先生や杉山先生の〈其の虚は治すること不能にて.其の余を何と問うか〉だと思っています。
だからといって七十五難は実証のみの治療だとは思っていません。本来、虚の治療は不可能なのだ、だがどんな病体にも‘余’と捕らえられる部分があって、それがどんなものなのか考えよ、と言っているんだろうと、思っています。
その‘余’は必ず「東方」と示したように空間的な形で現れ五行で分けられる。その発生は五臓に帰依することが出来る。発生原因も対応も相剋論で出来る。その‘余’の因果を突き止めて対応すれば自然に生体は、虚した所を解消するように働くであろう。そんな意味かと思います。

○

○

○

○

○

○

実用出来るかどうかは解らないのですが、難経の本文と「経絡治療講話(本間祥白)」から次のようなことを考えてみました。
このような物をどんな形でもいいのですが一度作ってみると、この七十五難がいくらかかはっきりと把握できるかと思います。
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全て土-脾に配当されていて、原因も味や飲食によるようです。この場合は土-体重節痛が成り立ちます。しかし、経絡ではなく経穴-輸に取り入れた理由になりません。


金-經-喘咳寒熱


似たような言葉の記載が、上記の十六難と四十九難と五十六難にあります。
素問にある‘喘’についての記載では、「經脈別論篇第二十一 」
黄帝問いて曰く、人の居処や動静や勇怯、脈の変をまた為すのか?
岐伯對いて曰く、凡(おおよそ)の人は驚恐怒や労や動静、 皆変を為すなり。是れ以て夜行の喘は腎に於いて出るに則す。淫気が肺を病しは、所に有りて墮恐せしは、喘肝に於いて出る。淫気が脾を害しは、所に有りて驚恐せしは、喘肺に於いて出る。淫気が心を傷しは、水を度(わたる)して跌(足をすべらせる)して仆(たおれる)せば、喘は腎与えた骨に於いて出る。是れの時に当り、勇なる者は気が行きて已むに則す。怯なる者は病為してまた著(着)すに則すなり。故に曰く、診病の道、観に人りしは勇怯、骨肉と皮膚、能知と其の情、以て診法の為すなり。
喘:あえぐ。はあはあと短い息づかいをする。
咳:せき。せきをする。わらう。幼児がのどを詰まらせてわらう。
素問にある‘咳’についての記載では、「宣明五氣篇第二十三」では、
五気が病む所
心
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